放電加工機とは|種類や加工の特徴、メリット・デメリットなどを解説
2023年3月9日

放電加工機は用途によって選び方が異なります。メリット・デメリットの両方を確認したうえで比較して選びましょう。
この記事では、放電加工機の購入を検討している人に向けて、放電加工機の種類や加工の特徴などを解説します。
自社の業務に必要な放電加工機を選ぶために、ぜひ参考にしてください。
1.放電加工機とは
放電加工機とは、火花放電エネルギーにより電極を用いて被加工物の金属表面を溶融して加工する工作機械です。
主に、半導体や自動車などの精密部品や金型を加工する際に用いられる設備です。
加工したい金属と加工機の隙間に放電することで、6000℃以上の熱を起こし、金属を溶かしながら加工を行います。
2.放電加工の仕組み
放電加工は、具体的にどのような仕組みになっているのでしょうか。くわしく解説します。
放電加工機本体
放電加工機は、電極、加工槽、移動テーブルなどのパーツを組み合わせて作られています。加工槽は、加工液で満たされています。
電極にセットされている噴射ノズルから加工液を噴射し、金属に当てて加工する仕組みです。
加工したい金属と電極を近づけてアーク放電を発生させ、イメージどおりの形状に整えていきます。
加工制御装置
加工制御装置は、放電加工機を動かすために必要な部分です。人間の脳にあたり、放電加工機の動作全般を司っています。
ほとんどの放電加工機は、数値制御(NC)装置によって動作が調整されています。
加工プログラムにデータを入力するため、何度も同じ条件で製品を作り出すことが可能です。
これにより、安定的な大量生産を実現しています。
加工液供給装置
加工液供給装置は、絶縁体となる加工液を循環させるための装置です。加工槽を加工液で満たすと、加工する金属と電極の間を埋められます。
それにより、電気を流すための電界を維持できます。加工液供給装置は加工屑を含んでいる加工液を濾過し、
再び加工槽に戻すために必要です。
3.放電加工機のメリット
放電加工にはさまざまなメリットがあります。メリットについて、具体的に解説します。
加工の精度が高い
放電加工は、精度の高い加工を実現可能です。加工プログラムにデータを入力し、加工の仕方を細かく指定します。
放電エネルギーを調整すれば、より細かい加工や複雑な加工もスムーズに再現できます。
特殊な形状でも問題なく加工できるため、幅広い用途に使用する製品の製造に役立てられるでしょう。
硬度の影響が少ない
放電加工は、基本的に加工する材料の硬度に影響を受けずに加工できます。
非常に硬い金属でも簡単に削ったり切ったりできるため、幅広い素材で製品を作れます。
また、大きさや厚みによる制限もありません。
ただし、放電加工機の有効加工範囲によっては、加工できる大きさや厚みに限界が生じる場合もあります。
被加工物に与える負担が少ない
放電加工を行う際は、加工する金属と電極が直接接触しません。
切削加工をはじめとする物理的な接触が伴う加工方法と比較すると、材料に対する負担が少なめです。
また、放電加工は、切断面のバリやダレも発生しにくいというメリットがあります。よって、きれいな製品を作り出せます。
4.放電加工機のデメリット
放電加工機にはデメリットもあります。ここでは、放電加工機の具体的なデメリットを解説します。
電気を通さない材料は加工できない
電気を通さない材料は、放電加工による加工ができません。導電性がないと熱が発生しないからです。
たとえば、セラミックやプラスチックなどは導電性が無いため、放電加工機による加工はできません。
放電加工ができるのは、アルミ、ステンレス、銅などの電気を通す素材です。
どのような素材を加工したいか考慮したうえで放電加工機を選びましょう。
加工に時間がかかる
放電加工では、材料を少しずつ溶かしながら加工していきます。そのため、加工のスピードが比較的遅く、時間がかかります。
切削加工をはじめとする他の加工方法と比較しても、放電加工のスピードは遅いです。
そのため、短時間でたくさんの製品を製造したい場合にはあまり向いていません。
放電加工は、製造にかかるコストが比較的高い製品の加工におすすめです。
電極のコストがかかる
放電加工機に取り付けられている電極は消耗品です。加工する際に発生する火花によって、電極が少しずつ溶けていくからです。
電極の消耗の度合いを確認し、必要に応じて新しいものに交換しなければなりません。
よって、放電加工機を使用し続けていくうえでは、電極にかかるコストも考慮する必要があります。
5.放電加工機の種類
放電加工機にはさまざまな種類があります。
ワイヤー放電加工機
ワイヤー放電加工機は、細いワイヤーを電極として放電加工する機械です。
ワイヤー放電加工機で使用するワイヤーの太さは、直径0.05~0.3mm程度となっています。
「糸のこ」と同じ要領で材料を自由に切り抜き、イメージに合わせて加工していきます。
ワイヤーで微調整しながら切断できるため、材料の無駄も少ないのがメリットです。
形彫り放電加工機
形彫り放電加工機は、あらかじめ電極に型を彫っておき、その型のとおりに材料を加工する機械です。
型を転写するため、反転した形状の製品が仕上がります。金属を貫通させず、自由な形状を表現できます。
形彫り放電加工機による加工が向いているのは、加工しやすい柔らかい金属です。
細穴放電加工機
細穴放電加工機は、銅や真鍮などでできている棒状の電極を使用し、金属に穴をあけて加工する機械です。
切削加工で穴をあけようとするとドリルが折れるものの、細穴放電加工機なら0.1mm以下の細長い穴をあけられます。
ワイヤー放電加工機でワイヤーを通すための穴をあける際にも活用できます。
6.放電加工機の注意点
放電加工機を使用する際は気を付けたいこともあります。ここでは、具体的な注意点を解説します。
ワイヤー放電加工機の注意点
ワイヤー放電加工機で使用するワイヤーは、材料に対して垂直方向に張られています。
そのため、加工の向きは限定的です。また、材料の底の部分は加工できません。
加えて、ワイヤー放電加工機で使用するワイヤーは、とても細いです。
アークで溶融できる範囲が狭いため、毎分数mm程度しか加工できません。
形彫り放電加工機の注意点
形彫り放電加工機で材料を加工するには、事前に電極を加工しておかなければなりません。
銅、タングステン、グラファイトなどの素材があるため、加工したい材料にあわせて電極を選びましょう。
なお、市販の電極をそのまま使用できる場合は、改めて電極の形状を変える必要はありません。
細穴放電加工機の注意点
細穴放電加工機では、加工の内容にあわせて真鍮や銅などの電極の材質を決める必要があります。
精度や速度を重視するなら真鍮が適しています。ただし、電極の消耗という観点から考えると、銅のほうが優れているでしょう。
細穴放電加工機はワイヤー放電加工で必要な穴をあける際に活用される場合も多いため、素材にあわせて選んでください。
7.放電加工機の将来性
SDKI
Inc.が発表した放電加工機(EDM)市場の新レポートによると、
世界の放電加工機市場は2020~2026年において7.8%のCAGRが期待されています。
また、北米が大きなシェアを占める可能性が高くなっています。
その背景には、自動車をはじめとする製造業界全体の自動化があります。
医薬品製造部門からの需要も急増しており、放電加工機市場はどんどん成長すると考えられています。
8.まとめ
放電加工機には、さまざまなメリットがあります。
ただし、デメリットもあるため、特徴をよく理解したうえで自社にとって最適なものを選びましょう。
放電加工機の種類ごとの違いも正確に把握しておくべきです。
弊社は厳選した原料による清浄度の高い鋼材料の開発力や、伝統的な製鉄技術を用いた製品やサービスを提供しています。
弊社の金型材料(YSSヤスキハガネ)は、用途に応じて原料の組み合わせや比率を変え、
独自の溶解精錬技術と熱間加工技術を駆使して製造しております。
また、お客様のご要望や製品用途に合わせた最適な材料を提案しております。金属やその加工について、ぜひご相談ください。
当社の製品に関するご相談やご質問は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
※YSS、ヤスキハガネは株式会社プロテリアルの登録商標です。