押出成形とは
押出成形の種類・用途・基礎原理・工程・メリット・デメリットを徹底解説

2022年8月18日

押出成形とは

押出成形ではさまざまな材料を加工でき、多種多様な製品を生み出せます。
この記事では、押出成形による新製品の開発を企画している人に向けて、押出成形の概要や押出成形の仕組みを解説します。
押出成形でどのような製品を製作できるかについても解説するため、押出成形について理解を深めるためにぜひ参考にしてください。


1.押出成形とは

押出成形とは、加熱融解した材料を金型から押し出して冷却し、製品を作り出す加工方法です。
押し出したまま長い形状にするだけでなく、押し出したものを適宜カットすることも可能です。
押出成形の特徴や使用される主な材料について、以下で解説します。

押出成形の特徴

押出成形では、製品のどこを切っても断面が同じ形になります。そのため、金太郎飴やところてんに例えられる場合も多いです。
押出成形で作る製品の形は、金型の形によって決まります。
たとえば、金型が丸ければ丸い棒状の製品ができ、艦形がドーナツ状であればパイプ状の製品ができます。
金型の形を工夫すれば、幅広い製品を生み出すことが可能です。

押出成形に使われる主な材料

押出成形では、さまざまな材料を扱えます。
押出成形はプラスチックの代表的な成型方法であり、プラスチックの原料となる樹脂が使われているケースも多いです。
また、アルミニウム、マグネシウム、スチール、チタンなどの金属も、押出成形の材料としてよく使用されています。
ほかにも、コンクリート、ゴム、食品などを押出成形で加工できます。

2.押出し成形の種類と用途

押出成形の成形法は複数あり、多種多様な製品を製造できます。
ここでは、押出成形の種類と用途について、具体的に解説します。

丸棒成形法

丸棒成形法は、棒状の製品を作り出すための成形法です。円筒状の金型を使用し、材料を押し出して棒状に加工します。
金型のサイズを変えれば、イメージにあう太さの製品を生み出すことができます。

異形押出し成形法

異形押出し成形法は、特徴的な形状の製品を作り出すための成形法です。中に空洞がある製品やコの字型の製品を作るために利用されます。
窓枠や複雑な形状のパイプなどの成形が可能です。

共押出成形法

共押出成形法は、複数の材料を使用して多層化させる成形法です。特徴が異なる材料を使用し、製品の機能性を高めたい場合に利用できます。
表面被服(ワイヤー被覆)により軟質材で硬質材を覆い、製品の強度を高める方法もあります。

発泡押出成形法

発泡押出成形法は、材料に化学発泡剤を混入させて発泡性のある製品を作る成形法です。耐食性が高く、軽量な製品を生み出せます。
主に、土木建築分野で使われる製品を作るために用いられています。

Tダイ法

Tダイ法は、特殊な型を使用してシート状の製品を作る成形法です。押し出された材料が扇形に広がり、シート状になる仕組みです。
層を重ねた多層フィルムの製造やラミネート加工などにも対応しています。

インフレーション法

インフレーション法は、薄いシートを袋状に加工するための成形法です。
インフレーション成形機を用い、材料に空気を吹き込みながら冷却して袋状にします。

3.押出成形のメリット・デメリット

押出成形には、メリットとデメリットの両方があります。
ここでは、押出成形のメリット・デメリットについて、具体的に解説します。

押出成形のメリット

押出成形は断面がまったく同じ形状の製品を連続的に製造できるため、大量生産に向いています。
一度にたくさん製品を作りたい場合に押出成形を選べば、コストも抑えられるでしょう。
同じ断面であれば、長さが違う製品もまとめて製造できます。押出成形は複雑な形状にも対応できるため、幅広い製品の加工が可能です。

押出成形のデメリット

押出成形は同じ断面の製品をまとめて製造するのに適しているため、少量だけ生産したい場合にはあまり向いていません。
また、寸法の精度を高めるには限界があります。そのため、不良品が発生しやすいというデメリットもあります。
切断部分については、端部処理も施さなければなりません。

4.押出成形の基本原理と工程

ここでは、押出成形の基本原理と工程について解説します。

①材料を投入する

押出し機の材料投入部であるホッパーに、加工したい材料を投入します。
途中で材料が不足しないよう、こまめに確認して補充する必要があります。

②加熱溶解させる

押出し機に材料を投入すると、ヒーターによって加熱溶解されていきます。
シリンダーにスクリュー上のヒーターが巻き付いており、材料を温めて溶かす仕組みです。

③金型から押出す

成形したい形にあわせた金型を材料が通過すると、製品が形作られます。
金型に不備があると製品の不良や欠陥に直結するため、注意が必要です。
金型はこまめにメンテナンスする必要があります。

④冷却する

金型から押し出された製品は冷却されます。製品の形状を保つためのサイジングダイで支えながら冷却水槽で冷やす仕組みです。
使用している材料によっては、急に冷やすとひずみが生じる可能性があります。
そのため、材料にあわせて冷却時間を調整しなければなりません。

⑤引っ張り出す

十分に冷却して製品が固まったら、引っ張り出します。製品を適切な長さにするため、切断機に送る必要があります。
引取り機により、押出し機とは逆の方向へ圧力を加えて移動させる仕組みです。

⑥切断する

製品を切断機に送ったら、連続的に切断して適切な長さにそろえます。
製品によっては、切断と同時に穴をあける加工や端部処理なども行います。
ここまでたどり着けば、押出成形は完了です。

5.加圧方法によって異なる5つの加工方法

ここでは、加圧方法ごとに押出成形の加工方法を解説します。

直接押出

直接押出は、押出成形のなかでも特に一般的な加圧方法です。進行方向の前方に向けて材料を押し出すため、前方押出ともよばれています。
内側に摩擦が発生するため、材料を押し出す際に強力な力をかけなければなりません。
摩擦の軽減のために潤滑剤を使用するケースもあります。

間接押出

間接押出は、押棒の先端についている部品で材料を押し出す加圧方法です。
進行方向とは反対向きに押し出すため、後方押出とよばれる場合もあります。
摩擦が少ないため、押し出す力もそれほど必要ありません。ヒビや割れも発生しにくいです。
最初から最後まで安定的に圧力がかかるため、品質が一定します。

液圧押出

液圧押出は、液体により圧力をかけて材料を押し出す加工方法です。金型と材料が接触する部分以外は、すべて液体で満たします。
液体で材料の全体に圧力をかけるため、摩擦が生じません。
ただし、圧力を保つには液体の状態をしっかり管理する必要があります。液圧押出は、静水圧押出ともよばれています。

中空押出

中空押出は、材料の内部に空間を作って押し出す加工方法です。
オス型とメス型の金型を組みあわせる「ポートホール押出」と、材料に棒状の部品を貫通させる「マンドレル押出」があります。
中空押出ではガラスを潤滑剤として使用し、圧力によって生じる温度の上昇を防ぎます。

コンフォーム押出

コンフォーム押出は、材料を回転ホイールに挿入して固定シューを押し付ける加工方法です。
材料が押し出され、製品として形作られていきます。
主に金属を加工するために用いられる加工方法であり、たとえば、長い線材の製造に利用されています。

6.加工温度によって異なる3つの加工方法

押出加工では、材料の流動性が重要です。流動性は温度によって変化します。
ここでは、加圧温度の違いごとに押出成形の加工方法を解説します。

熱間押出

熱間押出は、高温にした材料を押し出す加工方法です。温度は材料によってそれぞれ異なりますが、
350~2,000度の範囲で加熱する場合が多いです。材料ごとに最適な温度を把握して調整する必要があります。
高温で加熱するため、加工している途中で材料が固まる心配がありません。製品に不良や欠陥が生じるリスクを軽減できます。

冷間押出

冷間押出は、材料を常温で押し出す加工方法です。名称に「冷」という漢字が入っていますが、冷やして加工するわけではありません。
常温であるため、材料の強度を保ったまま加工できます。熱に弱い材料の加工も可能です。
ただし、材料を大きく圧縮したい場合には向いていません。

温間押出

温間押出は、熱間押出しと冷間押出しの中間の温度で材料を押し出す加工方法です。常温よりも少し高めの温度で加工します。
具体的な温度は、600~1,000度程度です。
冷間押出では加工できない材料でも、温間押出なら表面の酸化を抑えながら加工できます。

7.押出成形で押さえておくべき重要ポイント

ここでは、押出成形で製品を作るうえで押さえておきたいポイントを解説します。

温度管理に注意する

押出成形では、材料の流れや冷却温度を調整する必要があります。
材料の流れが滞ると製品そのものの品質が低下する恐れがあるため、注意が必要です。
また、冷却温度の調整がうまくいかないと材料の収縮が不安定になり、製品が変形する可能性があります。
温度を適切に管理し、製品の品質を保てるようにしましょう。

金型のメンテナンスを行う

押出成形で使用する金型に問題があると、製品の表面に傷や亀裂が生じる恐れがあります。
使用するダイの形状をしっかり整え、適宜メンテナンスすることが大切です。
また、押出成形の加工方法によっては、材料に高い圧力がかかります。
加工方法にあわせて潤滑剤を活用し、スムーズに成形できるようにしましょう。

8.まとめ

押出成形では、さまざまな材料を加工できます。金型の形によって製品の形状が決まるため、幅広い加工が可能です。
加工方法も幅広く、材料や作りたい製品にあわせて選択できます。
特に、大量に製品を作りたい場合は、押出成形による加工がおすすめです。

当社には、原料を厳選して清浄度の高い鋼を作り上げる材料開発力や伝統の製鋼技術があります。
押出成形金型用の材料については、お客様のご要望や製品用途に応じた最適な材料を提案しております。
材料選定にお困りでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

当社の製品に関するご相談やご質問は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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