CEOメッセージ

高い質の追求によって、新たな価値を生み出し、持続的成長を図る

代表取締役 会長執行役員 兼 社長執行役員 CEO
Sean M. Stack
(ショーン・スタック)

プロテリアルの強みを最大限発揮し、自らの道筋を自らで切り拓いていく

2023年1月、当社は社名を日立金属からプロテリアルに変更しました。そして新たな資本パートナーの下でプロテリアルとしての第一歩を踏み出しました。これまで、日立グループというグローバル規模の企業グループの中の一企業として事業を展開してきた当社は、資本再編によって自らの運命を自ら決めることができるようになりました。これは大きなチャンスであり、Visionである「持続可能な社会を支える高機能材料会社」をめざして変革と成長を加速する方針です。

プロテリアルの初代CEOに就任した私は、これまで当社を社外から見てきたからこそ、当社にはグローバル市場においてさらに成長できるポテンシャルがあると感じています。なかでも、お客様の持続的成長に欠かせない資産を数多く有していることは非常に大きな強みです。1910年の創業以来、当社はその長い歴史の中で、卓越した技術力をベースに世界トップクラスの製品群を次々と生み出し、モビリティ、産業インフラ、エレクトロニクス等の領域において社会に不可欠な価値を提供してきました。特に、省エネ、CO2排出量の削減、軽量化に貢献する独自性のある製品群を多く有していることにより、世界的な脱炭素化への潮流の中で、我々はグローバル市場で大きく成長できると考えています。2023年4月に、私に直属する9つの事業部が主体となって事業運営するとともに、モノづくり技術本部が当社のモノづくりをグローバルで標準化し、最適化の実現をめざす組織改編を実施しました。またこの改編により、財務資本や人的資本への投資など、経営戦略の遂行に関わる意思決定の迅速化を図ると同時に、各事業部でも、これまで以上に柔軟かつ迅速に市場動向やニーズに対応することで、お客様の課題解決に貢献し、新たな価値を創出してまいります。

ステークホルダーに向けてMission「質の量産」を果たす

当社のすべての事業活動はMission、Vision、Valuesから構成される企業理念に基づいて実行されます。

当社のMissionとして掲げた「質の量産」を、我々の普遍的な役割、使命としてしっかり社会に向けて実行していくことで、私たちのポテンシャルを最大限活用し、持続的な事業活動をしていきます。

「質」と聞くと、製品スペックとしての品質を想起される方もいるかもしれません。しかし当社では、製品に限定せず、独創的な技術と、製品・ビジネスプロセス・人に関する高い質の追求によって、新たな価値を生み出し、お客様をはじめとする世界の人々に広く提供していくことを「質の量産」と定義し、フロントラインからバックオフィスまですべての社員が共有しています。

お客様に価値をお届けするには、お客様に近いところでそのニーズを理解し、お客様の望むさまざまな付加価値を生み出すことが重要です。そのためには、お客様と直に接する営業部門だけでなく、研究開発部門、生産部門が一体となって価値を創造するべきと我々は理解しています。

お客様だけではなく社員にとっても「質の量産」は重要なことです。会社は、一人ひとりの人材が持つ能力を存分に発揮できるよう、人材の能力開発に責任を持ち、そして適材適所に配置していくことが求められます。一人ひとりが、「質の量産」における自身の役割をしっかりと理解し、「質の量産」を自分事として体現できるようにしなければなりません。そのために、すべての社員が持ちうる能力を最大限発揮できるよう、社員にチャンスを与えていくこと、これは経営者としての責務です。

また、我々は地域コミュニティの一員であるという自覚をもち、自社のCO2排出量の削減に努めるといった地球環境のサステナビリティについて責任を果たします。同時に、事業を展開するそれぞれの地域における雇用機会の創出にも注力します。地域コミュニティに貢献する企業として当社を認知いただき、信頼関係を構築することにより地域社会と共に発展していきたいと考えています。私は社長に就任してから、日本国内だけではなく、グローバルな各拠点を訪問し、タウンホールミーティングを実施しています。そこで社員から必ず質問が出たのが、労働力確保に対する会社の方針でした。先進国は、高齢化の進行に伴う労働人口の減少という共通の社会課題を抱えています。優秀な人材を持続的に維持・確保していくためにも、当社として地域コミュニティに積極的に関与していくことは大変重要です。

「グリーン・イネーブラー」として環境価値を創出

私は、当社のことを「Green Enabler(グリーン・イネーブラー)」と呼んでいます。当社は、製品を通じて、お客様による環境課題の解決を実現し、その結果、地球環境や社会をサステナブルに変革していくことめざしています。

脱炭素化へ向けたグローバルでの潮流は、軽量化、CO2排出量の削減、安全性の向上などに寄与する世界トップクラスの事業-これを私は“資産”と呼びます-を持つ当社にとって、大きな事業機会です。多くの人にとって、当社ブランドの製品を直接、目にする機会はあまりないと思いますが、当社の製品は自動車や鉄道車両、飛行機、スマートフォンなど、実に多くの最終製品、またそれらを製造するための機械やインフラに不可欠です。例えば、非常に小さなサイズながら、スマートフォンやPCの放熱を抑え、エネルギー効率の向上に寄与するクラッド材や軟磁性材料があります。また電気自動車(EV)の駆動モーターに使用される希土類磁石や電源回路で使用されるパワーエレクトロニクス製品は、効率性向上に大きく寄与しており、多くのxEVで私たちの製品が使用されていると自負しております。

多様な事業機会の中でも、今後は特に、航空機向けにも注力していきます。世界的な規模の真空溶解炉がある安来工場や大型リングミルがある桶川工場等、世界に誇る資産を最大限活用することで、新たな事業成長の柱に育成できると確信しています。

このほか、資本パートナーの経営リソースや知見をフル活用し、事業戦略の実行を加速しています。例えば、航空機向けの事業育成に向けて、グローバルな情報ネットワークや知見、人材の提供を受け、航空機市場での競合他社比較や注力すべき製品のロードマップの策定と実行を推進しています。

経営の3本柱は「人」「オペレーショナル・エクセレンス」「成長」

当社が真にグローバルな企業として発展し、Visionである「持続可能な社会を支える高機能材料会社」を実現するために、私は「人」「オペレーショナル・エクセレンス」「成長」を経営の3本柱に据えて注力していきます。

まず「人」に関しては、社員の安全確保を第一とし「安全と健康は全てに優先する」行動原則を徹底します。そのうえで、説明責任を果たす企業文化を醸成します。社員が自分たちの事業の運命は自ら決めるという気概を持ち、戦略を定め、実行し、その結果に責任をとること。そのための権限委譲も進めながら、社員のエンパワーメントを促進していきます。

また「オペレーショナル・エクセレンス」は、製造業の当社にとってはとても重要な要素で、生産現場での日々の仕事が最終的にはお客様での価値につながります。もちろん、各工場は卓越したものを持っていますが、それがグローバルで最適化、標準化されているとはいえません。プロテリアルにとって最適な手段や製造プロセスの標準化を進めることで、当社が持つグローバルの経営資産を最適化します。

「人」と「オペレーショナル・エクセレンス」がしっかり整えば、「成長」に必要な条件は揃ったといえます。ここで重要なことは、日本中心の視点から、より大きなグローバル市場視点へとマインドセットを転換することです。特に、グローバルでのモビリティ業界を見渡せば、各国でEVへのシフトが進み、EVに合わせた社会インフラの構築も始まっています。航空機やエレクトロニクスといった産業も、ビジネスの機会はグローバルです。多様性と独自性にあふれた世界トップクラスの当社製品を待っているお客様が、欧米を中心にまだたくさんいらっしゃると信じています。これまで以上にグローバル市場に照準をあてた経営リソースの配分をし、当社がグローバル企業として成長するための基盤を強固にしていきます。

プログレッシブな経営で持続的な成長を遂げる

PROTERIALという社名の「PRO」には、Professional、Progressive、Proactiveという意味が込められていますが、その中でも特に私は、Progressiveに挑戦し続ける意志を持って職務を遂行したいと思います。将来の事業機会がどこにあるのか。そこでの可能性や障壁は何か。常に前を向き、そこでの打ち手を考えながら、事業戦略をスピーディに遂行し、お客様をはじめとするステークホルダーに向けて「質の量産」を実践します。

社会全体がサステナビリティを志向する今、プロテリアルはグローバルでの成長機会にあふれています。自らの成長の道筋を、自ら切り拓き、「持続可能な社会を支える高機能材料会社」としてグローバルで企業価値を増大していきます。これからの当社にぜひご期待ください。

  • 資本再編:ベインキャピタルが軸となる企業コンソーシアムによる当社普通株式の公開買付およびその後の一連の取引により、当社株式は2022年12月29日付で上場廃止となり、2023年1月5日付で日立グループから離脱しました。また、2023年1月4日付で当社の商号を株式会社プロテリアルに変更いたしました。