CEOメッセージ
未来へのロードマップを描きながら、改革を完遂。
グリーン・イネーブラーとしてグローバルでの成長機会をとらえ、大きく前進します。
当社のMission、Vision、Valuesに基づき企業文化を醸成
2023年は、プロテリアルが新たな旅に出発した年でした。そして、企業名の変更や新たな株主(オーナー)を迎えるなど、大きな変化を経験した一年でした。
ベイン・コンソーシアムは、2つの価値を提供してくれました。一つは、航空機やエレクトロニクス分野などの注力分野における経営リソースと知見です。もう一つは、将来の事業機会を探索し、事業ポートフォリオの見直しを行うにあたり、彼らの視点を活かし、よりシャープに焦点を絞ることができたことです。また、この大変革を従業員が受け入れ、プロアクティブに参画してくれたことにも、あらためてここで感謝の意を表します。
2023年は、経営チーム、従業員、オーナーがそれぞれ役割を果たし、プロテリアルのアウトラインを明確にすることができた一年とも言えます。さらに数年をかけて変革を加速しながら、経営戦略の実行や新規事業の獲得を推進し、グローバルをリードするプロテリアルをつくり上げます。
また、当社のMission、Vision、Valuesに基づいた、プロテリアルとしての企業文化を築くことにも取り組んでいます。お客さまやサプライヤーは私たちに、プロフェッショナルなパートナーとして、先進的かつ革新的な技術力によって課題を解決することを期待しています。社名に込めた3つのPRO、すなわち、 Professional(期待を超える仕事)、Progressive(挑戦し続ける意志)、Proactive(主体的な姿勢)を行動の軸として、事業を行っていきます。
私は、次の言葉を経営のモットーにしています。“A great culture beats a great strategy, but the two in combination is unbeatable.” これは「優れた文化は優れた戦略に勝る。だが、この2つが組み合わされば無敵である」という意味です。そして、私に課せられた重要な役割は、新たな企業文化を醸成していくことだと理解しています。企業文化を形成する根幹として大切にしていることは、お互いに責任を負っているということです。お客さまに、高品質な製品・サービスを届けることも責任です。また、自らの発言に責任を持つことも、収益として結果を出すことも責任です。私たち経営陣にとっては、従業員に対して適切な労働環境をつくることも責任です。私がめざしているのは、全員が説明責任を果たし、互いに責任を負い、そして、一人ひとりが行動する力を与えられていると感じられる企業文化を醸成することです。そのためには、適切な権限委譲が不可欠です。当社は事業部が多岐にわたり、それぞれにリーダーがいます。彼らがその事業を最も理解しているので、彼らの言葉に耳を傾け、適切に権限委譲し、彼ら自身が問題を解決できるようにすることがCEOである私の任務です。権限委譲と説明責任により、自分たちが携わる事業に対して当事者意識を持てるようになります。従業員一人ひとりが主体性を持って、取り巻く環境を理解し、企業理念を実行していく企業文化を根づかせます。
また、経営チームとして最も重視していることは、従業員の安全を守ることと製品品質を担保することです。従業員に対しても、安全面や品質上で少しでも不備の可能性があると気づいたら、それを取り除くために、躊躇なく製造をストップする判断をするように繰り返し説いています。従業員一人ひとりが、安全と品質を守る行動をする権限と義務があると理解し、行動できることが、安全と品質を第一とする企業文化を醸成します。
グローバルでの成長の道筋を切り拓く戦略の柱
「人」「オペレーショナル・エクセレンス」「成長」を戦略の柱としてグローバルをリードする企業をめざします。
「人」においては、まず「安全と健康はすべてに優先する」行動原則を徹底します。そのうえで、個人の成長や自律性を促す観点からの人材育成にも注力します。より多くのことを達成するためには、最高のチームづくりが大切であり、チームを構成する「人」を強くする必要があります。職場環境の整備とエンパワーメントを推進するとともに、次世代のリーダー層の選抜と育成を推進します。
次に、「オペレーショナル・エクセレンス」です。プロテリアルの競争力の源泉となる、世界トップ水準の組織運営の仕組みを構築します。当社のモノづくりは、各拠点において最適化され、卓越したものがあります。これをグローバルなプロテリアルグループ全体で最適化、標準化すれば、極めて強固で他社の追随を許さないモノづくりの仕組みができます。2023年度は主幹部門としてモノづくり技術本部を新設し、プロテリアル・オペレーショナル・エクセレンスの実現に向けて前進しました。
「人」と「オペレーショナル・エクセレンス」が実現すれば、「成長」の条件はそろったと言えます。現在、モビリティ分野を見渡せば、グローバルでxEV※化やそれに伴うインフラ整備が加速しています。ユニークな高機能材料を数多くラインアップする当社は、お客さまがめざすサステナビリティの実現に寄与することができ、さまざまな成長市場でシェアを拡大するチャンスがあります。グローバルなマインドセットで、「人」と「オペレーショナル・エクセレンス」の力を発揮することで、当社の「成長」はさらに加速していくと考えています。
- ※xEV:電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の総称
2023年度は事業の方向性のアウトラインを明確にした
2023年度は、経営リソースの配分を見直し、事業の方向性のアウトラインを明確にしました。
2023年12月には、北米において自動車向け鉄鋳物を製造・販売する子会社であったWaupaca Foundry社の売却を発表し、2024年初頭に完了しました。また、2024年2月には、北米で配管機器の製造・販売をする子会社であったWard社を売却しました。また、2024年8月には当社において最も歴史ある事業の一つである配管機器事業を売却しました。3つの会社、事業とも、これまで当社事業に貢献をしてきましたが、それぞれの新しいオーナーのもとで事業を行うことでさらに発展・成長できると判断し、売却を決定しました。
一方で、注力分野には積極的な投資を実行しました。航空機関連では、当社は、1万トン級自由鍛造プレスや真空溶解炉がある安来工場や大型リングミルがある桶川工場など、世界に誇る資産を有しています。航空機産業に向けて、ジェットエンジン部材として耐熱・耐食合金を提供していますが、世界のもっと多くのお客さまへの納入を実現していきたいと考えています。現在、経済産業省が中心となって、航空機関連で戦略的なサプライチェーンを日本に築こうとしています。当社は、航空機用大型鍛造品(ニッケル合金)の溶解・鍛造工程に関する投資について経済産業省より供給確保計画の認定を受け、最大75億円の助成を受ける予定です。生産基盤の整備、技術開発を推進し、航空機関連分野でのプレゼンスを上げていきたいと考えています。
また、パワーエレクトロニクス分野では、窒化ケイ素基板や炭化ケイ素基板が非常に有望です。xEVに搭載されるキーデバイスの重要部材であり、 xEVの性能向上の鍵を握っています。今後も大きな成長が見込めるため、お客さまの動向をしっかり捉えながら、継続的に設備投資を実行し、技術開発を進め、プレーヤーとしての地位をさらに固めていく方針です。
また、経営効率の改善や、中長期的な企業価値向上を目的に、全社でさまざまな施策・プロジェクトを推進してきました。
価格戦略プロジェクトでは、プライシングに関してより厳格で規律のある社内統制プロセスを導入しています。また、製品の背後にある技術や付加価値がお客さまにどのようなプロフィットをもたらしているかを認識し、価値に見合った価格設定を行うマインドセットを促進してきました。
GTM(Go-to-Market)プロジェクトでは、自社の能力を棚卸しするとともに、グローバルでのベンチマークと比較し、当社の事業の有効性の評価とギャップの把握を行いました。当社の技術と優位性に合致する戦略的な市場機会を特定・評価し、リソースと資金を優先的に投入すべきポイントを割り出しました。機会を明確化し、営業活動を強化することにより、成長を一層加速します。
調達コスト低減プロジェクトにも注力しています。社内外のベストプラクティスを活用し、原材料費をはじめ、アウトソーシングや修繕費、物流費を含めた調達コスト、およびプロセス全般の最適化を図っています。まずは一部の拠点で先行して実施しているところであり、今後はこのプロジェクトを横展開する計画です。
100年以上の長い歴史と積み上げてきた財産はシャープな企業成長に不可欠
当社は1910年の創業以来、100年超にわたる歴史の中で積み上げてきた大きな財産があります。それは、さまざまな知見や技能を持った従業員、グローバルに広がる工場の設備、そして、卓越した金属を中心とする組織・組成制御技術です。そして、これら人的資本、製造資本、知的資本を通じて、広範なお客さまとの強固な関係性を築いてきました。この卓越した財産、強みをさらに強化するのが、戦略の柱として取り組む「人」「オペレーショナル・エクセレンス」であり、「成長」の実現です。お客さまに優れた価値を提供することにより、グローバルでの成長を実現します。
私は、当社のことを「Green Enabler(グリーン・イネーブラー)」と呼んでいます。なぜなら、当社が提供している高機能材料は、CO2排出量削減をはじめ、お客さまにおけるサステナビリティ経営の目標を達成するために欠かすことができないからです。例えば、世界中のEVにおいて、駆動モーターに使用される希土類磁石や、電源回路で使用されるパワーエレクトロニクスの重要部材として、当社製品が使われています。当社の高機能材料は、お客さまのイノベーションと社会課題の解決に貢献しています。ステークホルダーの皆さまに、当社事業のこのような社会的価値をきちんと説明し、知っていただくことも重要だと認識しています。
中期経営計画を着実に実行し、グローバルで企業価値を増大していく
2024年度以降の展望を述べます。現在、今秋を目標に新たな中期経営計画を策定しています。中期経営計画は、未来への明確なロードマップとなります。当然ながら、主要な製品や技術のロードマップや生産性を向上させるさまざまな活動も組み込まれますし、どんなイノベーションを当社がお客さまにお届けできるか、それはどのようなスケジュールなのか、詳細な点までアカウンタビリティを示しながら計画します。この計画と照らし合わせながら、四半期ごと、年度ごとに達成状況を確認し、必要な打ち手を実行していきます。従業員一人ひとりが責任を持って計画を遂行する企業文化が浸透することで、中期経営計画の最終年度の2028年度を迎えた時に、すべて達成できたとお互いにたたえ合えるはずです。
私たちは今、大変革を遂行しているところです。この変革に対するすべてのステークホルダーの皆さまの参画やコミットメントに対して、感謝申し上げます。
「持続可能な社会を支える高機能材料会社」としてグローバルで企業価値を増大していきますので、ステークホルダーの皆さまにおかれましては、今後の当社にぜひご期待くださいますよう、お願い申し上げます。