鋼材の熱処理とは?
焼入れや焼戻しなど主な熱処理方法をくわしく解説

2022年8月25日 2025年6月30日更新

鋼材の熱処理とは?

鋼材を熱処理すると粘りや強度が出ます。熱処理は焼なまし、焼入れ、焼戻しの4つの方法があります。
この記事では、金型などの製造に携わる方へ向けて、鋼材の熱処理の種類や方法について解説します。
鋼材を加工する際の参考として、ぜひ役立ててください。


1.熱処理とは

熱処理とは、鋼材を加熱・冷却して加工する技術のことです。熱処理により鋼材の性質を向上させます。
たとえば、鋼材を軟らかくしたり硬くしたりすることが可能です。また、表面の均一化やサビの防止のためにも活用されています。
熱処理にはさまざまな種類がありますが、工具鋼の熱処理では主に焼なまし、焼入れ、焼戻しの3つの方法があります。

2.変態点(へんたいてん)とは

鋼材は、一定の温度に到達すると組織の構造が変化します。
組織の構造の変化を「変態(へんたい)」といい、変態が起こる温度は「変態点(へんたいてん)」とよびます。
鋼材の種類によって、変態点はさまざまです。変態点は温度を表しているため、「変態温度」と表現される場合もあります。

3.焼なましの目的と種類

ここでは、熱処理の焼なましの目的と種類について解説します。

焼なましの目的

焼なましは、鋼を軟らかくするための加工方法です。焼なましをすると鋼の組織を均一化でき、ムラや割れなどを防げます。
焼なましのJISの加工記号は「HA」です。焼なましは、さらに複数の加工方法にわかれています。
具体的には、完全焼なまし、球状化焼なまし、低温焼なましなどです。それぞれについては、以下で解説します。

≪焼なましの種類≫

完全焼なまし

完全焼なましは、鋼をできるだけ軟らかくすることを目的としている加工方法です。
最も一般的な加工方法であり、鉄鋼材料全般に向いています。
完全焼なましを行うと、必要ない残留応力を除去できます。
また、熱間鍛造品や鋳鋼品などで結晶粒が粗大化している場合も、標準組織に戻すことが可能です。

球状化焼なまし

球状化焼なましは、炭化物の球状化により鋼の加工性を高める処理方法です。特に、機械構造用鋼や工具鋼の焼なましに向いています。
球状化焼なましを行うと、完全焼なまし以上に鋼を軟らかくできます。

低温焼なまし

低温焼なましは、完全焼なましや球状化焼なましと比較して簡易的な加工方法です。
鋼の硬度を下げたり、残留応力を除去したりする効果を期待できます。完全焼なましの代わりに行われるケースも多いです。
低温焼なましは、あらゆる鉄鋼材料・非鉄鋼材料の加工に対応できます。

4.焼入れの目的、方法と種類

ここでは、熱処理の焼入れの目的、方法と種類について解説します。

焼入れの目的

焼入れは、鋼を硬くするために行われます。JISの加工記号は「HQ」です。
すでに触れたとおり、鋼の組織の構造が変化する温度は変態点と表現します。
変態点よりも高い温度になるまで鋼を熱し、一定時間を空けて急速に冷却します。
焼入れは、機械構造用鋼や工具鋼の処理に向いている熱処理の方法です。

≪焼入れの方法≫

急速冷却の方法は、材質や処理品の大きさによって、水冷・油冷・ソルト冷却・ガス冷却・衝風冷却などが使い分けられます。
冷却が速いほど高い硬さで健全な品質が得られやすくなりますが、急激な温度変化により形状や寸法が変化するデメリットも生じます。
加熱温度と冷却方法は、処理品に適した最適な条件を設定することが重要です。

≪焼入れの種類≫

金型などの熱処理では、真空焼入れの適用が普及しています。

真空焼入れ

真空焼入れは、真空状態の炉で熱を加えた後に急速に冷却する方法です。冷却には主に高圧窒素ガス、または焼入れ油(熱処理用の鉱物油)を使用します。
真空中で加熱することで、表面の酸化を防ぎ、製品に光沢を出します。
また、脱炭の防止も可能です。硬さにムラが生じにくくなり、鋼の品質が安定します。

5.焼戻しの目的と種類

ここでは、熱処理の焼戻しの目的と種類について解説します。

焼戻しの目的

焼戻しは、鋼の硬度を下げて粘りを出すための熱処理です。
焼入れをしただけの製品は、硬すぎて脆く不安定な状態のため、そのままでは破損したりする可能性があります。
焼戻しで鋼を処理すると靭性が増し、より丈夫な製品になります。焼戻しのJISの加工記号は「HT」です。

≪焼戻しの種類≫

低温焼戻し

低温焼戻しは、低めの温度で焼戻しする方法です。具体的な温度は、150~200度程度です。
加熱保持後の急冷は不要です。低温焼戻しは工具鋼では炭素工具鋼や特殊工具鋼、冷間工具鋼で行われます。これらの鋼種は低温焼戻しの方が高硬度が得られます。また経年変化に強い製品になります。

高温焼戻し

高温焼戻しは、高めの温度で焼戻しする方法です。
機械用構造用鋼は450~600℃程度、高速度工具鋼や冷間工具鋼、熱間工具鋼などは500~600℃程度での熱処理が一般的です。
鋼材の種類や用途に応じて適切な温度で処理する必要があります。
多量の合金成分を含む鋼種では、焼戻しを2~3回繰り返すこともあります。

6.まとめ

鋼材の加工において、熱処理はとても重要です。適切な条件での加熱や冷却により、鋼材の性質を向上させることができます。
工具鋼では、主に焼なまし、焼入れ、焼戻しの3つの方法があり、それぞれにより材料の特性を変えることが可能です。YSSヤスキハガネ®では、球状化焼きなましされて軟らかく加工しやすい状態で提供される場合が多いですが、一部の鋼種は焼入れ焼戻しまで処理済みで、そのまま加工して使用できるものもあります(プリハードン鋼)。熱処理に対する理解を深め、安定的な製品を製造しましょう。

株式会社プロテリアルは高度な冶金技術と材料開発力を有し、原料を厳選し清浄度の高い鋼をつくり上げる冶金技術と、
伝統の鋳造技術で、幅広い産業の発展を支える高機能金属材料を提供しております。
弊社の金型材料(YSSヤスキハガネ)は、用途に応じて原料の組み合わせや比率を変え、
独自の溶解精錬技術と熱間加工技術を駆使して製造しています。

当社の製品に関するご相談やご質問は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

  • YSS、ヤスキハガネ、YSSヤスキハガネは株式会社プロテリアルの登録商標です。

関連記事