鋼材とは|
種類や加工のポイント、鋼と鉄の違いをわかりやすく解説

2022年5月26日

鋼材とは

鋼材とは機械や設備などへの利用を目的として加工された、金属材料です。
鋼材にはさまざまな種類があり、日常生活の身の回り品やあらゆる場所で使われています。
しかし鋼材のもつ特徴に馴染みのない方は多いのではないでしょうか。
そこで製造事業に携わる方に向け、鋼材の種類や特徴、加工時の扱い方を解説します。本記事の内容を、ぜひ業務の参考にしてください。


1.鋼材とは

鋼材とは鋼板を板や棒、管などに加工した素材です。
例えば自動車や冷蔵庫、スプーン、包丁、金槌など、日常生活のさまざまなものに鋼材は使われています。
また橋や鉄道、ラインパイプ、ビルといった、普段よく目にする場所の基礎材料として、よく用いられる素材です。

鋼材の種類は「炭素鋼」と「合金鋼」の2つに大別できます。これら2種類の鋼材は、さらに種類が細分化される点が特徴的です。
それぞれの鋼材の種類と特徴の詳細は後述します。

2.鋼と鉄の違い

鋼と鉄はどちらも鉄鉱石から作られ、鉄(Fe)と炭素(C)からできています。しかし鋼と鉄は、含まれる炭素含有量に違いがあります。

鋼(はがね)とは

鋼とは鉄に0.02〜2.14%未満の炭素を混ぜた合金でできており、人工的に鉄に加工しやすくした素材です。
炭素の他にもマンガンやリン硫酸などを微量に含んでいます。

原則として炭素の量が多いほど、鋼は硬くなります。
しかし鋼は硬くなるほど靭性(粘り強さ)が低くなり、強度の限界を超えると折れやすくなります。
高い強さとしなやかさを同時に得ることは難しいため、用途に応じて硬さと靭性のバランスを考慮しながら鋼材を選定することが必要です。

鉄とは

鉄の炭素含有量は0.02%未満です。純度100%の鉄は少なく、ほとんどの人は目にしません。
また純度100%の鉄は白色で、酸化しやすいうえに脆いため加工には不向きです。
高純度の鉄はかなり軟らかく、磁性材料や粉末冶金、触媒など、素材としての用途が限定されます。
しかし鉄に炭素や他の元素を含ませて純度を99.9999%に下げると、鉄の性質は変わります。
強度や靭性が増し、純度100%の鉄よりも容易に加工できる点が特徴的です。

3.炭素鋼の種類と特徴

炭素鋼(たんそこう)は鉄をベースにした合金の一種です。
鋼鉄のなかでも、鉄と炭素以外の合金元素を一定量以上含む「合金鋼」や、鉄に特殊な特性を付与した「特殊鋼」ではない合金を指します。

炭素鋼は含有する炭素量によって3つに分類されます。
炭素含有量が0.25%以下は低炭素鋼、0.25~0.6%は中炭素鋼、0.6~2.14%は高炭素鋼です。
一般的に炭素を多く含む鋼の素材は硬くなります。
よって低炭素鋼は低温で変形させる冷間圧延で作られる鋼板に、そして高炭素鋼は硬さが求められる工具などに使用されます。

SS材

SS材とはSteel Structureの略で、一般構造用圧延鋼材を意味します。
SS材の炭素含有量は0.1〜0.3%です。よってSS材は低炭素鋼から中炭素鋼の鋼材に分類されます。

SS材の種類はSS400とSS490の2つです。SSの後につく400や490という数字は、鋼の引っ張り強さの最小保証値(MPa)を指します。

SS400は鉄のなかでも比較的安価で汎用性が高い反面、溶接性が保証されていません。よって柱や梁などの構造部分にSS400は使用します。
SS400と比較するとSS490は強度が高いため、ビルや工場、橋、などの荷重や引張力が大きい接合部分に用いる点が特徴的です。

SK材

SK材とはS(Steel)とK(Kougu)の略で、炭素工具鋼鋼材を意味します。
SK材の炭素含有量は0.6〜1.5%です。鉄鋼素材は鋼の中で炭素量が最も多い素材といわれます。

SKのアルファベットの後には、炭素含有比率を示す2桁の数字が付随します。例えばSK85の炭素含有量は0.85%です。

SK材の特性は硬さや耐摩耗性に優れている点です。
また加工前後に熱処理する際、一定以上の高温になると硬度が低下する特徴があります。刃物をはじめとした工具の材料として使用されます。

S-C材

S-C材とはS(Steel)とC(Carbon)の略で、機械構造用炭素鋼鋼材を意味します。S-C材はSS材についでよく使われる鋼材です。
しかしSS材と比較すると、強度や熱処理による特性変化に優れています。精密機械や強度が必要な部品に多く利用されます。

SとCのアルファベットの間には炭素含有比率を示す2桁の数字が入ります。例えばS45Cの炭素含有量は0.45%です。

SPC材

SPC材とはSteel Plate Coldの略で、冷間圧延鋼板を意味します。
丸棒や角棒の形状はなく、冷蔵庫のボディのような板版のみに利用されます。

SPCの材質は0.4~3.2mmの薄板で、プレス加工しやすい点が特徴的です。
材質は一般用のSPCC、絞り用のSPCD、深絞り用のSPCEの3種類があります。
炭素含有量は0.1%未満の低炭素鋼です。

SPC材は柔らかいうえに伸びやすく、加工性や成形性に優れています。
一方、強度面では他の鋼材には劣るため、強度が必要な部分への使用はできません。
また非常に酸化しやすいため、加工後は塗装やメッキが必要です。

4.合金鋼の種類と特徴

合金鋼(ごうきんこう)とは鉄と炭素以外の合金元素を一定量以上含む鋼です。
鉄鋼の5大元素である炭素(C)やシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)に他の金属元素を添加したものを指します。
例えばクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などが、合金鋼で使われる元素です。

合金鋼は炭素鋼と比べると含まれる元素数が多いため、鉄鋼よりも高価になります。
形状の種類も少なく、炭素鋼が使えない要件でのみ用いられます。

ステンレス鋼(SUS材)

SUSはSteel Use Stainlessの略です。
ステンレス鋼(SUS材)は先述した鉄鋼の5大元素に加えて、ニッケル(Ni)とクロム(Cr)の元素で構成されています。
クロム含有量は10.5%以上、炭素含有量が1.2%以下の合金鋼です。

ステンレス鋼(SUS材)は腐食しにくく、汚れにくい特徴があります。
メッキとは違い、表面にキズがついた場合は酸化皮膜が作り直されるため、長いスパンで金属内部を腐食から守ることが可能です。
この鋼材はキッチンのシンクや水道、船舶、プラント・設備などで利用されています。

超硬合金

超硬合金はダイヤモンドに次ぐ非常に強度な硬さをもつ、合金鋼です。
クロム(Cr)やタングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)といった素材に、
鉄(Fe)やコバルト(Co)、ニッケル(Ni)で結合した金属炭化物の粉末を型に入れ、焼結して作ります。

重さは金(Au)の2倍あり、強度や弾性に優れ、高温時の硬度低下が少ない点が特徴的です。
耐摩耗性の高さを活かし、ドリルやフライスなどの金属加工用の切削工具によく利用されます。

機械構造用合金鋼

機械構造用合金鋼とは0.12~0.5%の炭素(C)の他に、ニッケル(Ni)やクロム(Cr)、モリブデン(Mo)などを添加し、
焼き入れ性を良くした合金鋼です。

焼戻しに対する特性が良いため、調質(焼き入れ戻し)をし、高い強度を出すことも可能です。
優れた強度と靱性の特性を活かし、一般機械や産業用機械、輸送用機器などの構造用材料として利用されています。

ハイテン鋼(高張力鋼)

ハイテン鋼(高張力鋼)とは、引張力が非常に強い合金鋼です。
炭素鋼の代表格であるSS400の引張力と比較すると、倍以上の強度があります。

炭素量が0.2%以下の高炭素鋼にシリコン(Si)やマンガン(Mn)、チタン(Ti)などを添加しています。
薄くて丈夫な特性を活かし、車両のボディやガスタンク、側溝の排水蓋などに使われています。

合金工具鋼

合金工具鋼は大きく分けて、SKS材とSKD材があります。それぞれの特徴を詳しく解説します。

SKS材(ハイス鋼)とはSteel Kogu Specialの略で、高速度工具鋼鋼材を意味します。
SK材にCr(クロム)やW(タングステン)、V(バナジウム)を添加し、SK材のデメリットであった耐摩耗性や耐衝撃性を補完できる材質です。
切削工具や耐衝撃工具、冷間金型など幅広い用途で用いられます。

SKD材(ダイス鋼)とはSteel Kogu Diceの略です。
SK材にCr(クロム)やMo(モリブデン)、V(バナジウム)が添加された材料を指します。

SKDの使用用途はプレス機械などの中量から多量生産用の金型やダイス、ゲージ、金属刃物などです。

5.鋼材の加工方法

鋼材は材料だけでなく、加工方法の選定も重要です。代表的な鋼材の加工方法を4つ解説します。

成形(変形)加工

成形(変形)加工とは、固体外状態や固体状態の材料を型に流し込み、所定の形状に変形させる鋼材の加工方法です。
成形(変形)加工では、鋳造や鍛造、塑性加工、焼結加工などの方法が用いられます。

除去加工

除去加工とは不要なものを除去し、所定の形状にする鋼材の加工方法です。
除去加工のなかでも、機械的除去加工は切削や研削が用いられます。

また熱的除去加工は溶断や熔解、電気熔解、レーザーで使用される加工法です。化学的除去加工の方法には腐食(化学反応)があげられます。

付加加工

付加加工とは必要な部分に新しく材料を足し、所定の形状にする鋼材の加工方法です。
付加加工を用いれば、複数の金属で目的とする形状を作れます。
3D金属プリンタ積層造形や3D樹脂プリンタ積層造形など、複雑な構造をもつ部品で使用される加工法です。

接合加工

接合加工とは部品同士を接合し、所定の形状にする鋼材の加工方法です。溶接やはんだ付け、焼きばめ、圧入として用いられます。
接合加工は接合後に分離できない接合と、ねじ固定のように分離できる接合の2種類があります。

6.まとめ

鋼材とは鋼板を板や棒、菅などに加工する際に用いられる金属材料です。機械や建築物など日常生活のさまざまなものに使われています。
鋼材はさらに「炭素工具鋼」と「合金工具鋼」への大別が可能です。

当社は、厳選した原料による清浄度の高い鋼材料の開発力や、伝統的な製鉄技術を用いた製品やサービスを提供しています。お客さまとともに社会課題を解決し、持続可能な社会を支える高機能材料会社を目指します。

当社の製品に関するご相談やご質問は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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