鉄鋼材料の種類と特徴
強度や加工方法、素材の選び方をわかりやすく解説

2022年6月16日

鉄鋼材料の種類と特徴

鉄鋼材料には炭素鋼や合金鋼などの分類があり、特徴ごとに種類が分けられています。
では製造業で鉄鋼材料を扱うにあたり、どの材料が製品や建造物に適しているのでしょうか。

この記事では金型をはじめとした金属製品の製造に携わる人に向けて、鉄鋼材料の種類と特徴、選び方などを解説します。
加工方法や鉄鋼材料のメリット・デメリットも解説しますので、ぜひ役立ててください。


1.鉄鋼とは

鉄鋼とは、100%鉄そのものではありません。鉄を主成分に2%以下の炭素を合わせた合金が一般的に「鉄」、
あるいは「鋼」と呼ばれており、これらを広くまとめて総称したものが「鉄鋼」です。

鉄鋼には鋼やステンレスといった分類があります。
さらに鋼、ステンレスも、素材の割合や加工方法、性質によって、それぞれがいくつもの種類に分けられます。
鉄鋼は総じて錆びやすいものの、加工しやすく安価であることから幅広い製品に利用されているのです。

2.JISによる鉄鋼材料の分類

JISによって、鉄鋼材料は以下のように分類されています。

JISによる鉄鋼材料の分類

3.よく使われる炭素鋼の種類と特徴

炭素鋼は、炭素の含有量や性質によって分類されています。
ここでは、よく使われる炭素鋼の種類および特徴について解説します。

SS材

SS材のSSとは「Steel Structure(構造)」の略で、「一般構造用圧延鋼材」と訳されます。炭素を0.1~0.3%含んでいる鉄鋼です。
低価格と加工のしやすさをあわせ持つ、使い勝手の良い鉄鋼で、もっとも幅広く使われている鉄鋼材料であると言えます。
ただし、炭素の含有量は比較的少ないため強度や硬度が頑丈でなく、建築物の大梁など主要な部分には用いられません。

S●●C材

SCとは「Steel Carbon(炭素)」の略です。●●には数字が入りますが、この数字は炭素の含有量を示しています。
たとえば、S45C、S50Cなどが代表的で、訳するときは「機械構造用炭素鋼鋼材」と呼ばれるものです。

S●●C材は、機械部品などに多く用いられます。
熱処理によってさまざまな特性を発揮する一方、溶接性が良くない、冷却でひび割れを起こしやすいといったデメリットもあります。

SM材

SMとは「Steel Marine(船)」の略です。
Marineとあるとおり、SM材は船舶関連、あるいはそれに類似した高い溶接性を必要とする社会インフラ関連の用途に多く使われています。
素材として溶接に適しているのが特徴ですが、これはSS材に比べてリンや硫黄が少ないことによって高い溶接性を実現しているものです。
分類としては「溶接構造用圧延鋼材」に該当します。

SN材

SN材は、「Steel New(新しい)」の略で、「建築構造用圧延鋼材」に分類されます。
建築物の耐震性を補強するため、SS材に代わる新しい素材としてつくられた鋼材です。
SS材が建物の主要部分に使われないのに対して、SN材は大梁に使います。
また、溶接性で劣るSS材に比較し、SN材は溶接性にも優れています。梁同士を溶接し、強い耐震性を確保することが求められます。

4.よく使われる合金鋼の種類と特徴

合金鋼のなかにも、よく使われるものがあります。使用頻度の高い合金鋼について、種類と特徴を解説します。

SUS材

SUS材は、ステンレス鋼のことを指します。
SUSとは「Steel Use Stainless(ステンレス鋼)」の略で、鉄にクロム、ニッケルを添加した鉄鋼材料です。

錆びにくいのが特徴ですが、これはクロムを添加することによって錆びにくさを実現しています。
さらに加工もしやすく強度もあるため、利便性が高く、さまざまな場所に用いられている素材と言えます。

SKH材

SKH材はハイス鋼のことを指します。SKHとは「Steel Kougu High-speed」の略です。
SKH材には、クロム、タングステン、バナジウム、モリブデンといった金属が高配合で混ぜられており、
耐磨耗性と硬さに優れているのが特徴です。

高速での切削にも耐えられる硬度を利用し、切削用器具、切断用器具、ドリル等、機械加工用の工具によく用いられています。

SKD材

SKD材とは、ダイス鋼のことを指します。SKDは「Steel Kougu Dice(Kouguは工具、Diceは金型)」の略です。

名前のとおり、SKD材は中量から大量生産に使われる金型などに用いられます。
このことから、別名を「金型用鋼」と呼ばれることもあります。
強い圧力をかけられても変形しない強度、何度も使っても摩耗しない耐摩耗性に優れている金属です。

5.鉄鋼材料の加工方法

鉄鋼材料には、素材の使い道によっていくつかの加工方法があります。鉄鋼材料の加工方法について解説します。

成形(変形)加工

成形(変形)加工は、型を使って金属の形を変えていくタイプの加工方法です。
型は形も使い方もさまざまで、金属を溶かして型に流し込むものもあれば、
平たく延べた金属を型に合わせてプレスし、成型するものもあります。

除去加工

除去加工は、金属の不要な部分を切削や研磨、熔解などで取り除き、求められる形に整えていく加工方法です。
機械部品などを製造したり、金属部品に穴をあけたりするときに除去加工が使われます。細かい作業には不可欠です。

付加加工

金属に別の金属部材を付けることによって、目的の形状を作りあげる加工方法です。
鉄鋼材料の場合は、溶接や接着によって接合するのが一般的ですが、メッキ加工やペンキ塗装なども、付加加工のひとつに数えられます。

接合加工

接合加工は付加加工の一種で、溶接と接着に二分されます。溶接は、金属自体と接合用材料とを一緒に溶かしながら接合させるものです。
接着の場合は金属接着剤を使い、金属と金属とを接着する方法で、はんだ付け、ろう付けなどが接着にあたります。

6.鉄鋼材料のメリット・デメリット

鉄鋼材料はその場に合った使い方をすることが必須です。ここでは、鉄鋼材料のメリットとデメリットを解説します。

メリット

鉄鋼材料は、樹脂やプラスチック素材に比べて熱や衝撃への耐性が高いことが大きなメリットです。
高温や低温になる環境下でも熱による変形が少ないため、寸法がずれにくく、安定した素材が欲しいときには特に適していると言えます。
また、鉄鋼材料は摩耗にも強いため、繰り返し強い力がかかるような場所でも利用できるのもメリットのひとつです。

デメリット

鉄鋼材料は錆びやすく重たいため、素材の性質をよく検討して扱う必要があります。
水分の多い場所、重量がかかることが望ましくない場所では使用できません。
また、変形の自由度や非電気伝導性が樹脂やプラスチック素材より低いのも確かです。
ただし、耐熱・耐食に優れた鉄鋼材料もあります。使用目的に応じて適した素材を検討することが重要です。

7.鉄鋼材料を選ぶときのポイント

鉄鋼材料を選ぶときは、高温の場所で使うのか、屋外で使うのかなど、まず製品を利用する環境について把握することが大切です。
さらに、環境や利用目的にあわせて、強度が必要なのか、軽さや環境への耐性を求めるのかなどを検討します。
そのうえで炭素鋼を探したり、合金鋼を探したりすると良いでしょう。
素材の特性だけではなく、コストも材料選びのポイントとなります。
コストによって耐食性や重量に差が出るため、素材の性能とコストとを天秤にかけながら最適なものを選びましょう。

8.まとめ

鉄鋼は建築や船、機械部品などの材料となる合金の一種ですが、ひとくちに鉄鋼と言ってもさまざまです。
鉄鋼材料を選ぶためには、実際に使用するときの環境や状況、コストにあわせて、適切なものを選択することが必要です。

ただし、鉄鋼にはさまざまな種類があります。
品質や種類によって価格も大きく異なるものです。使用環境に対しての最適な素材の提案は、ぜひ当社にご相談ください。
当社では伝統技術を活かし、耐熱性・耐食性にすぐれた高品質の工具鋼をご提供します。まずはお気軽にお問い合わせください。

当社の製品に関するご相談やご質問は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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