金型の構造は?
基礎知識から主な機構、メリット、作業ステップまで解説
2022年7月7日

金型にはいくつかの種類があり、なかには複雑な構造を持ったものもあります。また、製品によって金型も異なるため「金型についてよく理解していない」方も多いでしょう。
この記事では「金型とは何か」といった基本的な知識から、金型の種類やメリット、作業ステップなど幅広く解説します。金型の代表であるプレス加工だけでなく、最近需要が増えているプラスチック加工用の金型も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
1.金型の基礎知識
金型は、日常生活で見かけることはほとんどありませんが、製造業では欠かせない道具のひとつです。ここでは、ものづくりにおいて重要パーツとなる、金型の基礎知識を解説します。
製品を加工するための型枠
金型は、一言で言えば「製品を加工するための型枠」です。型枠に金属を挟み込み、一定の形状を作り上げて、製品の形を整える際に使います。また、プラスチックのような樹脂を流し込んで成形する際にも金型は欠かせません。金型を何も知らない人からすると「金属の加工に使う」というイメージも強いですが、数多くの素材に対応できます。
同じ製品を大量生産するために使われる
金型の一番の特徴は、同じ製品を大量生産できることです。最初に金型を作ってしまえば、後は金型に素材を流し込むだけで、同じ製品を次々に生産できます。製品開発のスピードアップによる生産性の効率化を実現できるうえに、製品の均一化や高精度化にもつながるでしょう。
無駄のない生産工程により、コスト削減にも役立ちます。
凹凸のある上下一対構造をしている
金型は、凹凸のある2つの枠を合わせて製品を作ります。凹側のものはキャビ型(雌型)、凸側のものはコア型(雄型)と呼ばれています。この2つについては、後の項目で詳しく解説します。たとえば、鯛焼き用やホットサンドメーカー用の金型も凹凸の構造です。金型があることで、同じ模様や均一の大きさに仕上がります。
2.金型の種類と構造
金型は、製造に使われる素材や用途によって分類されています。ここでは、4つの金型をピックアップし、その他の項目とあわせて解説します。
プレス用金型
プレス用金型は、鋼板のような素材を加工する際に用いるもので、おもに自動車のパーツなどの製造に使われています。金型のなかでは最も一般的な存在です。プレス用金型で加工する際は、凹側と凸側の間に置いた金属製の板をプレスして成形します。上下の金型で挟むことによって、一定の形を作り出すことが可能です。
プラスチック用金型
プラスチック用金型は、その名前の通りプラスチックを素材にするもので、近年需要が増えている金型のひとつです。射出成形や圧縮成形、移送成形、真空成形など多くの分類があります。加熱溶解させたプラスチックを金型に流し込み、成形するのが一般的な方法です。テレビや家電製品などの製造に使われています。
鋳造用金型
鋳造用金型は、アルミなどの合金を成形するための金型です。鋳型を作る材料によって、砂型鋳造・ダイカスト・ロストワックスの3つに分類されます。プラスチック用金型と同じように、加熱溶解した素材を流し込み、冷却によって固まらせる方法が基本です。ちなみに鋳造では、金型を鋳型、製品を鋳物と呼ぶので覚えておきましょう。
鍛造用金型
鍛造用金型は、非鉄金属や棒鋼材などの素材を加工するために使います。鍛造とは、刀を作る工程のように、叩くことで高い強度を実現する方法です。素材を鍛造用金型の間に置いて、叩いて変形させるのが一般的です。オートバイ関連の部品やジェット機のファンなど、滑らかなカーブを描くような部品の製造に使われます。
その他の金型
その他の金型としては、ゴム用金型やガラス用金型などがあります。ゴム用金型は、靴や自動車のタイヤなど、工業用部品や自動車部品製造に使われるのが一般的です。ガラス用金型は、ガラスを材料にするもので、ボトルやビンのようなガラス製品を作るのに使われています。大きく分けて押型と吹型の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
3.金型の基本的な構造
先ほども少し触れたように、金型の基本的な構造は「凹凸のある上下や左右の枠型」です。そして、付属の部品により複雑な製造が可能になります。ここでは、金型の基本構造を解説します。
キャビ型
金型の本体であり、製品の外側を形作る主要部分が凹側の「キャビ型」です。また、雌型と呼ばれたり、金型の開閉の際に固定されているため固定側型板と呼ばれたりすることもあります。素材が置かれたり流し込まれたりする部位で、成形品がキャビ型にくっつく「キャビとられ」と呼ばれる現象が発生する場合があります。
コア型
コア型もキャビ型と同じく金型の本体かつ主要部分です。製品の内側を凸部分で形作るのがおもな役割です。金型を開閉する際に稼働し、成形品を金型から外すための部品が取り付けられています。キャビ型とコア型を合わせてキャビコアと呼ばれるほか、雄型や可動側型版、コアプレートと呼ばれることもあります。
4.金型構造の主な機構
樹脂や溶融金属を金型内に流して固める成形方法に用いられる金型では、その構造の主な機構として、スプルー・ランナー・ゲートの3種類があります。ここでは、それぞれの特徴を解説します。
スプルー
溶解した素材を入れて固めるのが金型で、溶解した樹脂などを金型に入れるための部品がスプルーです。具体的には、成形ノズルから樹脂が流れ込んでいく最初の通路を指します。一般的にスプルーの断面は円形になっており、側面は傾斜しています。成形ノズルと、後に紹介するランナーを繋ぐ重要なパーツです。
ランナー
ランナーは、スプルーから流れ込んできた樹脂などを金型に送るための部品です。成形ノズルからスプルー、ランナーと渡り、後に紹介するゲートへと繋がります。ランナーには、ホットランナーとコールドランナーの2種類があり、特徴や取り扱いが異なるので気をつけましょう。なお、1つの金型で複数の製品を作る場合はそれぞれランナーが必要です。
ゲート
ゲートは、成形ノズルからスプルー、ランナーと渡ってきた樹脂が最後に通過する部品です。
文字通り金型へのゲート的な役割を果たし、素材が流れ込む速度のコントロールをします。
プラスチックが流れ込む速度は非常に重要です。
流入速度が早すぎる場合、勢いよく流れた模様が製品の表面に現れる一方で、遅すぎるとフローマークと呼ばれる縞模様ができてしまいます。
5.金型のメリット
金型を使用すれば、同じ品質の製品を大量に生産できます。例えば、精密機器の部品のように、ミリ単位の誤差も許されないものでも、生産が可能です。また、金型を使うと、手作業よりも生産スピードが早くなります。これにより、納期や開発期間を短縮できたり、製造コストを抑えられるようになります。
6.金型を設計する際の注意点
試作品と量産品では、同じ製品であっても、製作の過程が異なるため、注意が必要です。例えば、試作品では問題なかったことが、量産になるとできなくなるケースもあります。また、金型を設計する際には、不具合が発生して無駄なコストを発生させないために、以下の点に注意することも大切です。
- 成形品の収縮率
- 交差
- 肉厚
- アンダーカット
- 抜き勾配
- 角R
7.金型で製品が作られる作業ステップ
ここでは、代表的な金型としてプレス加工とプラスチック加工の作業ステップを解説します。
プレス加工の作業ステップ
(1) プレス用金型に材料を置く
まずはプレス用金型に材料を置く工程です。固定側型板、つまりキャビ型の上に金属板を設置します。手作業で行われることもありますが、最近では機械の活用も増えています。
(2) 金型の可動側型板を使いプレスする
次に金型の可動側型板、つまりコア型を使って実際にプレスします。凹凸の型で金属板を挟んで徐々に圧力をかけていき、材料を曲げたり金属板に穴を開けたりします。
(3) 仕上げ・検査を行う
プレスが終わったら、仕上げ及び検査を行います。形作られた製品を研磨したり、塗装したりすることで仕上げをします。不具合や不良品がないかのチェックも欠かせません。
プラスチック加工の作業ステップ
(1) 溶解した樹脂を金型に充填する
まずは溶解して液体となった樹脂を金型に充填します。高温の樹脂が成形ノズルからスプルー・ランナー・ゲートへと流れていきます。ゲートから金型に流れ込む速度調整が重要ポイントです。
(2) 金型の中でプラスチックに成形する
金型にプラスチックを流し終えたら、次は製品の形を作っていきます。プラスチックは高温ですが、金型の中で冷却されることによって徐々に固まっていきます。
(3) 仕上げ・検査を行う
プレス加工の過程と同じように、形ができたら仕上げと検査が必要です。加工時にできる突起を取る「バリ取り」をしたり、不具合・不良品がないかどうかの検査を行ったりします。
8.プラスチック加工でよく使われる2種類の金型の構造と動作
プレス加工に使われる金型とは異なり、プラスチック加工に使われる金型は特殊な構造になっていることが多いです。ここでは、プラスチック加工でよく使われる2プレートと3プレートについて、それぞれの特徴を解説します。
2プレート金型の構造
2プレート金型は、固定側型板と可動側型板の2つのプレートで構成されています。
固定側型板に成形品が残っていると故障の原因にもなるため、
製品・ランナー・スプルーを可動側型板へ残し、固定側型板から離す必要があります。
2プレート金型のゲートは、ダイレクトゲート、サイドゲート、サブマリンゲートの3種類です。
これによりランナーを外しやすくなっています。
主要な部品は以下のとおりです。
- ランナーストリッパープレート
- サポートピン
- ストップボルト、ブラーボルト
- ランナーロックピン
- パーティングロック
3プレート金型の構造
3プレート金型は、2プレート金型にランナーを取り出すためのランナーストリッパープレートが加わり、3つのプレートで構成されるものです。ここでは、3プレート金型の構造と動作を解説します。
製品・ランナー・スプルーを可動側型板へ残し、固定側型板から離す必要があるのは、2プレート金型と同じです。3プレート金型では、ランナーストリッパープレートが追加されていることで、スプルーやランナーを自動的に切り離せます。また、ピンポイントゲートが使われており、複数個のゲートを設置できるため、1つの金型で複数の製品が作れます。
2プレート金型にない部品は以下のとおりです。
- ランナーストリッパープレート
- ピンポイントゲート
9.まとめ
金型は、製造業をはじめとするモノ作りにおいて重要な道具のひとつです。金型を深く理解するためには、それぞれの種類を整理しておく必要があります。プレス用金型やプラスチック用金型を中心に、それぞれの特徴や目的を理解しておきましょう。
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