金型に使われる材質とは?
材質による違いや選び方も解説
2022年7月28日 2025年6月30日更新

金型に使用される材質にはさまざまな種類があるため、自社で金型を製造する際にどのような材質を選べばいいのか、
わからない人もいるでしょう。この記事では、金型の材質を何にするのか検討している人に向けて、
金型によく使われる材質の種類や特徴、それぞれの違いなどを解説します。
また、金型に適した材質を選ぶ方法もあわせて解説しているため、ぜひ参考にしてください。
1.鋼、鉄、鋳鉄それぞれの違いとは
金型に用いられる材質は、主に鋼、鉄、鋳鉄が挙げられます。材質の種類を大きく分ける違いは、炭素含有量にあります。
炭素含有量は、鉄が0.0218%以下で、鋼が2%以下、鋳鉄は2%以上です。
炭素含有量が多いほど強度が増し、少ないほど粘り強さや柔らかさが増します。
鋼は2%以下の炭素含有量であることから、強度と粘り強さの両面を兼ね備えている材質といえます。
2.金型に使われる材質
金型を製造する際に用いられる材質には、どのような性質が求められるのか、以下で詳しく解説します。
金型に求められる性質
金型に使用する材質には、さまざまな性質が求められます。
たとえば、高温に熱せられた樹脂を流し込む際は強い圧力をかけるため、成形時の圧力に耐えられる強度が必要です。
また、金型は強い圧力が繰り返しかかることから、耐久性に優れた材質でなければなりません。
さらに、より短時間で樹脂などを冷やし固めるためには、熱が伝わりやすい性質かどうかも材質選びの際の重要なポイントになります。
他にも、さまざまな形状の金型を作るためには、加工がしやすい材質かどうかも考慮する必要があります。
金型には鋼がよく使われる
前述のとおり、金型の材質の中でも適度な強度があり、粘り強さも兼ね備えている鋼は金型の材質に適しています。
例えば、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)及びバナジウム(V)などの金属元素を添加して作られた合金工具鋼や高速度工具鋼が金型の材質としてよく使用されています。
他にはステンレス鋼も金型に使用されています。それぞれの特徴を以下で詳しく解説します。
合金工具鋼
合金工具鋼は特殊鋼工具鋼(SKS)やダイス鋼(SKD)などがあります。
ダイス鋼はさらに冷間ダイス鋼(SKD11が代表)や熱間ダイス鋼(SKD61が代表)に分けることがあります。
必要特性に応じてクロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)などを添加量を変えて靭性や強度などさまざまな特徴を持った鋼種があります。
特殊工具鋼や冷間ダイス鋼は冷間プレスや冷間鍛造の金型などに、熱間ダイス鋼は熱間鍛造やダイカストの金型などに使われています。
高速度工具鋼
高速度工具鋼は一般に合金工具鋼よりもタングステン、モリブデン、バナジウムの添加が多めで、合金工具鋼よりも高硬度で耐熱性に優れた特徴を持ちます。
もともとは切削工具としての用途でしたが、現在では金型にも使われます。
ステンレス鋼
ステンレス鋼は一般的にはクロム(Cr)が10.5%以上でニッケル(Ni)を多く含むこともあります。
錆びにくく腐食しにくいのが特徴で、金型には樹脂成型用に使われることがあります。
3.樹脂成型用金型の材質による違いと選び方
金型に使用する材質を選ぶ際に考慮すべきことは、耐久性や腐食性、摩耗性、金型コストです。
どのような材質を選ぶのかによって、金型に適した性質であるか、金型を作る際のコストは予算内に収まるかなどが変わってきます。
また、樹脂成形材料の種類によって、金型の材質の種類を使い分ける必要があります。
金型の材質を選ぶ際は、樹脂成形材料の種類はもちろん、成形方法や成形する形状なども考慮したうえで検討しましょう。
以下では、樹脂成形材料の種類や組み合わせを解説します。
樹脂の材料との組み合わせ
樹脂成形に用いられる材料にはさまざまな種類があり、どのような形状に成形するのかで金型の材質を変える必要があります。
成形する樹脂の種類によって金型の材質を変えなければならない理由は、流動性や冷え固まったときの強度が異なるためです。
ABS・PPに適した材質
ABS・PPは、洗濯機や掃除機などの家電製品や、電機製品の外装の成形に用いられることが多い樹脂です。
樹脂の種類の中でも、比較的柔軟性が高い性質を持ちます。金型に求められる性質は、加工のしやすさです。
柔軟性が高い樹脂の場合、強度の高さよりも切削加工がしやすいことが重要になるため、金型には30~40HRCくらいの硬さのプリハードン鋼が用いられます。
プリハードン鋼はあらかじめに熱処理が施された鋼材で、そのまま切削加工などで型製作を行って使用することができます。
POMに適した材質
POMは、樹脂製の歯車やベアリングなどの摺動(しゅうどう)部品の成形に、用いられることが多い樹脂です。
金属を摩耗させやすい性質があるため、金型の材質を選ぶ際は注意が必要です。
POMの性質上、金型の材質には切削加工しやすいプリハードン鋼よりも、熱間ダイス鋼や冷間ダイス鋼、ステンレス鋼を熱処理して使われることがあります。
PCに適した材質
PCは、樹脂製のレンズやDVDディスクなどに使用される樹脂です。
レンズやDVDディスクの用途上、表面を鏡のように磨き上げる必要があります。
鏡のように磨くためには、磨きやすさや表面の滑らかさが求められます。
PCに適している金型の材質は、磨きやすく滑らかな表面を得やすい性質を持つステンレス鋼を熱処理して使います。
4.ダイカスト金型に流し込む材質とは
ダイカスト金型を使用する場合は、金型に流し込むことができる材質が限られています。以下では、ダイカスト金型に適した材質を解説します。
ダイカスト金型とは
ダイカスト金型は、ダイカスト法と呼ばれる加工法に用いるための金型です。
ダイカスト法とは、アルミ合金や亜鉛合金といった金属を高温で加熱し、液状化したものを金型に流し入れて成形する方法を指します。
成形時は金型に数百トンもの膨大な圧力がかかるため、金型には強度や高い耐久性、耐熱性が求められます。
ダイカスト金型は、大量生産される自動車や精密機械、電機製品などの部品、家電製品などの製造に用いられています。
流し込むのは比較的融点の低い金属
ダイカスト金型に流し込める金属は、アルミ合金や亜鉛合金などの融点の低いものに限られます。
融点が低い金属に限定される理由は、成形方法の工程にあります。
ダイカスト法では高温の金属を溶かして金型に流し込むため、鉄などのように融点が高い金属を用いると、
金型自体を溶かしてしまうおそれがあります。
流し入れた金属とダイカスト金型の一体化を避けるためには、融点が数百程度と低い金属に限定しなければなりません。
アルミや亜鉛などの合金の他には、マグネシウムや真鍮などを使用できます。
5.目的・条件が合う場合はモールドベースを活用
金型の形状・大きさは、成形する樹脂の種類や成形方法によって変える必要があります。
ただし、成形する目的や条件が合致する場合は、モールドベースを活用するのも1つの方法です。
モールドベースとは、金型の形状や大きさが一定の規格で作られているものを指します。
モールドは金型を指しており、ベースは基礎を意味します。
規格化された市販のモールドベースを活用すれば、金型を作る期間はもちろん、製作コストを下げることも可能です。
一般的に、モールドベースは入れ子と呼ばれる部品以外の場所に使用されています。
6.金型の材質は独自ブランドで製造・販売される
金型に用いられる材質は、さまざまなメーカーで独自開発されたものが販売されています。
独自ブランドを持ち、自社で製造・販売しているメーカーも少なくありません。
金型に用いられる材質の種類は同じものでも、加工方法や製造技術などによって材質の特性や熱処理方法などが異なります。
また、同じ材質でも独自ブランドで製造・販売されているものは、メーカーによって名称が異なる場合も多いです。
金型の材質は、それぞれのメーカーで取り扱っている材質の特性や、
熱処理方法などを確認したうえで金型の用途などにあったものを選びましょう。
7.まとめ
金型に使用される材質にはさまざまな種類があります。材質を選ぶ際は、金型に流し込む樹脂・金属などの性質や成形方法などによって、
適したものを選ぶことが重要です。たとえば、ダイカスト金型は融点の低い金属を選ばなければならないなど、
流し込む材料の種類によっては使用できない種類もあるため注意が必要です。
株式会社プロテリアルの工具鋼は、耐熱材や耐食材などの厳選した原料を用いた清浄度の高い金型の材質です。
弊社の金型材料(YSSヤスキハガネ®)は、用途に応じて原料の組み合わせや比率を変え、
独自の溶解精錬技術と熱間加工技術を駆使して製造しております。
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