SKD11とは
特徴や性質、熱処理方法による硬度の違いなど分かりやすく解説

2022年6月9日 2025年6月30日更新

SKD11とは

SKD11は、耐摩耗性に優れた合金工具鋼のひとつです。安全性が高く、強度がある素材として広い用途で使われています。
特に多用されるのは、プレス成型のための金型などの用途です。
この記事では、SKD11を活用したい開発部の担当者や経営者に向けて、特徴や熱処理などを紹介します。
SKD11とSLD®の違いなども解説します。ぜひ参考にしてください。


1.SKD11とは

SKD11とは、別名ダイス鋼とも呼ばれるもので、JIS規格で指定された合金工具鋼のひとつです。
長所はさまざまですが、とりわけ耐摩耗性に優れていることで知られています。SKD11は炭素を1.4~1.6%、クロムを11~13%含有しています。
含まれるクロムの量はマルテンサイト系ステンレス鋼とほぼ同等ですが、SKD11は炭素の含有量が多いためステンレス鋼には分類されません。

2.SKD11の主な用途

SKD11は、丈夫なので広い用途に用いられています。
特に冷間金型用の合金工具鋼として、中量から多量生産用の金型に加工されることが多いです。
プレスの金型は強い圧力がかかるため、SKD11のように優れた強度が求められます。
他には、回転工具、切断機の刃、ゲージ、耐摩耗治具など、強度が必要とされる用途に向いています。

3.SKD11の化学成分

SKD11の化学成分は以下のとおりです。

(mass%)
化学的性質

特徴としては、炭素(C)やクロム(Cr)が多いことが挙げられます。
SKD11は汎用性の高い冷間ダイス鋼で、高硬度と耐摩耗性が良好なことが特徴です。

4.SKD11の材料としての特徴(メリット・デメリット)

一般的に強度があるとされるSKD11ですが、強度があるとは具体的にどのようなことでしょうか。
SKD11の特徴について詳しく解説します。

メリット

SKD11のメリットとして特筆すべき点は、摩耗に対する強さです。
また、熱処理によるひずみが少なく、高い硬度を得られる点もメリットです。
つまり、精密さが求められる金型に使うことができ、摩耗性に強い素材であると言えます。
耐摩耗性や硬度の高さは、主な用途である金型だけでなく工具にも使われるため、SKD11の流通性の良さにもつながっています。

デメリット

SKD11にはデメリットもあります。それが被削性の悪さです。
SKD11は、硬度が高くなることとも、硬い炭化物が多く存在しているために切削加工が難しい特徴もあります。
加工が必要なときは、適した加工方法を用いなければなりません。

また、SKD11には炭素が比較的多く含まれています。このため、ステンレスと比較した耐食性の低さもデメリットと言えるでしょう。

5.SKD11の加工方法

ここでは、硬度が高く加工しにくいSKD11に対して有効な加工方法を2つ解説します。

切削加工

切削加工は、SKD11に対する熱処理前の成形方法となります。
熱処理による硬化前ならば、他の炭素鋼と比較して硬度が高いとはいえ切削加工が可能です。

ただし、熱処理後の切削加工は硬度が増してしまい困難になるため、精度が求められる形状への加工は研削加工を行います。

放電加工

放電加工は、SKD11の熱処理後の加工方法に用いられる方法のひとつです。
電気を鋼材に流し、熱を起こして、この熱で鋼材を溶かしながら成形します。
鋼材を溶かしながらの加工のため、硬さの高いSKD11でも加工が可能です。

また、SKD11は金型としてよく用いられますが、金型のなかには細かい表面形状を必要とするものも多く、
細かい加工のできる放電加工はなくてはならない方法です。

6.SKD11の熱処理と硬度

SKD11の硬度は熱処理の前後でどの程度変わるものでしょうか。具体的に解説します。

焼なましによる熱処理

焼なましとは、鋼を加工するために、一旦柔らかくする熱処理です。別名を焼鈍(しょうどん)とも言います。
焼なましの熱処理温度と硬度は下記のような関係となります。

焼なましの熱処理温度と硬度

SKD11の場合は、830℃~880℃の高温で焼なましを行います。
なお、冷却方法として用いられる「徐冷」は、鋼材を炉の中に入れたままゆっくり冷やす方法です。

焼入れ・焼戻しによる熱処理

焼入れとは、鉄鋼の硬度を上げるために行う加熱、急冷のことです。
焼戻しは、鉄鋼の粘り(靭性)を上げるために行う加熱、冷却の過程を言います。
焼入れと焼戻しをセットで行うことによって、硬く粘りのある鉄鋼ができあがるのです。
なお、このとき冷却方法として用いられる「空冷」は、熱処理後鋼材を炉の中から取り出して,風を掛けたり液体に漬けたりせずにそのまま冷やす方法です。

SKD11の焼入れ・焼戻しでの加熱温度と硬さの例をまとめると下記にようになります。

焼入れ・焼戻しの熱処理温度と硬度

実用上は用途によって焼入れの加熱は1000℃~1050℃、焼戻しは150~200℃の低温焼戻しまたは500℃前後の高温焼戻しを行います。多くは58~62HRCの硬さ範囲で使われます。

7.SKD11の表面処理

SKD11には、いくつかの表面処理方法があります。それぞれの処理方法について解説します。

めっき

めっきは、SKD11の防サビ対策として行うことの多い方法です。
SKD11の耐食性はSS400やS45Cより高いものの、炭素の含有率の問題でステンレスよりは低いため、何らかの方法で耐食性を持たせる必要があります。
めっき処理によって表面に腐食しにくい金属の被膜を作ると、SKD11が腐食しにくくなり、長持ちすることが期待できます。

窒化処理

窒化処理とは、被加工材の表面から窒素原子を内部に拡散浸透させることで表面を改質する方法です。
窒化条件にもよりますがSKD11では表面は1000HV以上の硬度が得られます。

物理蒸着(PVD)

物理蒸着は、真空中で加熱した成膜物質を蒸着させる方法です。
いわゆる「乾式めっき」の一種で、表面に膜を作るため耐摩耗性を得られます。
真空炉のなかで、高温で蒸発させた金属の粒子を、SKD11の表面に付着させることで完成します。

化学蒸着(CVD)

化学蒸着は、化学反応を利用して金属の表面に膜を作る方法です。
真空または大気中で成膜物質を加熱したものを原料ガスとして、熱やプラズマ、光の力を借りてSKD11の表面に蒸着させます。
耐摩耗性や耐食性が向上する硬化を期待できます。

8.SKD11とSLDとの違い

SKD11はJIS規格に定められた鋼材ですが、SLDはプロテリアルの独自ブランド鋼材です。
SLDはJIS規格でSKD11に相当するものであり、SKD11と成分はほとんど変わらないものの、配合の規格がしっかりとしており品質も安定しています。

成分はSKD11の炭素量が1.4~1.6%、クロム量は11~13%ですが、SLDはその中でさらに狭めた範囲で製造しています。
焼入性や耐摩耗性が優れていて、金型や工具などSLDは多くの用途に使われています。

9.【プロテリアル】SLD以外の冷間工具鋼

プロテリアルではSLD以外にも冷間工具鋼を扱っています。主な冷間工具鋼について紹介します。

SLD-fは60HRC以上の硬さが安定して得られ、また良好な靭性を有し、
耐チッピング性の向上に期待できる新しい冷間工具鋼です。
高温焼戻しでも高い硬さが得られ、PVD処理時の変寸低減にも有効です。

また被削性は焼なまし材、焼入焼戻し材ともに従来の冷間工具鋼に比べてとても
良好です。金型製作での加工時間の大幅短縮や、熱処理済の鋼材からの切削加工で
型製作工程の省略などが期待されます。

SLD-MAGICは、非常に高性能の冷間工具鋼です。
熱処理はSKD11と同様の処理を行うことができますが、500°C前後の焼戻しで高硬度と低変寸を両立させています。

SKD11とほぼ同等の経年変寸で、年数が経過しても変形が少ないのがメリットです。
低温焼戻しやサブゼロ・安定化処理により経年変寸がより小さくなるよう作られています。
金型以外にも、自動車部品などの用途があります。

HMD®5(火炎焼入鋼)

HMD5は被削性や靭性に優れた材料です。「火炎焼入鋼」とは鋼材の表面をバーナーで加熱することで表面のみ硬化させて使用する鋼材です。
フレームハード鋼とも呼びます。HMD5は火炎焼入れで表面が硬化しやすいため、ブランク型、トリム型、抜き型などに使われています。

10.まとめ

SKD11はJIS規格のもとで一定の品質を定められた金属鋼材です。
錆びやすい面もありますが使い勝手が良いため、現在では広く使われています。

当社はSKD11と同様の耐摩耗性をもった、より強靱な金属、あるいは加工しやすい金属もご用意しています。
金属鋼材は、用途や使う場所に適したものを選択することがとても大切です。
いずれも高品質で多彩な鋼材のなかから目的に合った鋼材が見つかります。
まずはお問い合わせフォームから、お気軽にお問い合わせください。

  • SLD、SLD-MAGIC、HMDは株式会社プロテリアルの登録商標です。

当社の製品に関するご相談やご質問は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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