プレス金型とは?
機能や種類、構成部品、プレス加工の方法など基礎知識を解説

2022年9月1日

プレス金型とは?

プレス加工において金型は欠かせません。そのため、金型についての基礎知識を得たいと考えている技術者も多いでしょう。この記事では、金型とは何か、プレス金型の機能や必要とされる理由、構成している部品などについて解説します。プレス金型の基本的な内容についてわかりやすく解説するので、プレス加工や金型について調べている方は、ぜひ参考にしてください。


1.プレス加工と金型の関係性

プレス加工とは、専用の加工機を使って、被加工材をプレスして製品を成形する加工方法です。
金型の初期費用がかかってしまうものの、大量に生産が可能な点と大量生産をした際にも品質のばらつきが少ないといったメリットがあります。プレス加工をするうえで、金型は欠かせない存在です。

2.金型とは

金型とは、被加工材に圧力をかけて形を維持する特徴や流動性を利用して成形するための金属の型のことです。金型には射出成形用やプレス用など、用途によって様々な種類があり、金属ではなく、プラスチックやゴム、ガラスなどの広い分野で使われています。金型の精度の高さは工業製品を作るうえで、生産工学の王といわれるほどに品質を左右する重要なものです。

3.プレス金型の機能

プレス金型の機能には、製品を作るために重要なものが多数あります。成形機能や位置決め機能により構成されており、それぞれの部品や機能によって成り立っています。いずれかの機能が欠けていても、プレス加工ができないほど繊細なものでもあります。

4.プレス金型が必要とされる理由

プレス金型は製造業における品質や納期を守ること、コストの適正化を図ることに必要とされています。日々の人々の生活には工業製品が必要とされており、大量の製品が必要です。しかし、品質が悪いものであれば、消費者は満足しないどころか、最悪の場合、製品の使用により怪我や事故へとつながることもあります。
そのため、QDCと言われる「品質・納期・コスト」を守ることが重要とされています。
そして、それらを守るために最適な方法が、工程の少ない「プレス金型」を使った生産方法であると言われています。

5.プレス金型の種類

プレス金型には、単発型、順送型、トランスファー型、ファインブランキング型などの種類があります。ここでは、それぞれの特徴を解説します。

単発型

単発型はひとつの金型に対して1加工の工程のみ行えるタイプです。ひとつの金型で曲げ加工や絞り加工などをひとつのみ行えます。他のプレス金型と比べても、シンプルな金型であり、その分比例して製作費も比較的安価である点が特徴です。大きな製品や、少数ロットの製造に向いています。

単発型は人の手を使って製造機を動かすため、連続した加工や自動での加工はできず、生産性は高くありません。しかし、単発型を並べて自動で加工を行う「タンデム加工」などの方法はあります。

順送型

順送型は、せん断・曲げ・絞りといった複数の加工をひとつの型を使って行うタイプのものです。別名では「プログレ型」と呼ばれています。被加工材をプレスすると、順に送り出されていき、製品を成形していきます。ロール状であるコイル材などを用いてプレスされていき、生産性が高く大量生産に向いていると言われています。

また、手作業ではなく、機械的に自動で行われるために一品ごとの品質が安定します。しかし、初期費用が比較的高価です。

トランスファー型

トランスファー型は、単発型が複数順番に並んだタイプをいいます。被加工材を順に通していくことで、自動に加工できます。材料はコイル材を用いて、順に加工した材料を次に移していきます。次の工程に移っていく作業はフィンガーという治具により行われ、連続して加工されていきます。

自動で加工が進むことから、大量生産に向いており、歩留まりの良さが特徴です。ただし、設計や製作にはコストがかかることが難点です。

ファインブランキング型

ファインブランキングには、「ファイン(精度の高い)」「ブランキング(打ち抜き)」の意味があります。ファインブランキング型は、主パンチとダイ、板押さえ(ストリッパ)、逆板押さえ(エジェクター、カウンターパンチ)が主要部品です。

板押さえ及び逆板押さえで材料を固定し加工を行います。被加工材を固定することで、平滑なせん断面が得られるため、2次加工が不要な高精度・高品質部品ができます。高精度部品を大量に作れる特徴があります。

6.プレス金型を構成する部品

プレス金型はどのような部品で構成されているのでしょうか。ここでは、プレス金型を構成する部品について解説します。

ダイ

パンチの受けとも呼ばれているダイは別名で雌型とも呼ばれています。パンチとダイの形によって、加工後の形状を決定する部品であり重要なものです。工業製品としてのクオリティを上げるためには、ダイとパンチの位置関係の精度が高い必要があり、慎重に製作することが大切です。

ダイセット

ダイセットは金型をプレス機に固定するための部品です。ガイドポストによって上下の大セットは連結されており、パンチやダイの部品も保持しています。品質の高い製品を生産するためには、ダイセットの精度も高い必要があります。

ガイドポスト

ガイドポストは上と下にあるダイセットの芯合わせに必要となるものです。ガイドポストがないと上下の型が正確にはめ合わなくなるために、重要な構成となります。他の部品の精度が高くとも、綺麗にはまらなければ品質の高いものができなくなったり、部品が故障しやすくなってしまったりするため、丁寧に選ぶ必要があります。

ダイプレート

ダイプレートはプレス加工をする際にダイが破損をしないように防いでくれるプレートのことをいいます。ダイと一体化しているものから、入れ子式になっているものなど種類は複数あります。種類によって、作りやすさやメンテナンスのしやすさに違いがあるため、それぞれの特徴を知ることが大切です。

パンチ

パンチはダイとともに重要な工具のひとつです。別名でポンチや雄型とも言われています。せん断・曲げ・絞りなどの工程に使用され、被加工材を成形できます。パンチだけでは使用しても意味がなく、ダイと対になっており、両方あって初めて成形が可能です。タレパンやプレスブレーキなどにセットして使用します。

パンチプレート

パンチプレートはパンチの位置関係を保持するための部品です。パンチで被加工材を成形する際に、垂直を保てなければ製品の品質が安定しません。そのため、パンチプレートでパンチの位置を保持し、垂直を作り出します。パンチプレートは安定した製品を生産するのに重要な部品です。

ストリッパプレート

ストリッパプレートとは、材料を打ち抜く際に活用されるプレートです。ストリッパプレートは被加工材の押さえつけやパンチの先端のガイドとして機能しています。加工する際に、被加工材がずれてしまっては、品質にムラが出てしまうため、ずれないように固定するストリッパが必要となります。

バッキングプレート

バッキングプレートは別名「バックアッププレート」や「バックプレート」ともいいます。プレス加工をする際にパンチがめり込むのを防ぐための部品です。プレスに耐える耐久度が必要なため、熱処理が施され、強度が高くなっています。

7.プレス金型における金型素材の選定

素材として、主に構造用綱(SSなど)・冷間ダイス鋼(SKSなど)・ハイス鋼(SKH)・超硬などがあります。機械加工分野では、一般構造用圧延鋼(SS400)は多く使われているポピュラーな材料です。機械部品には、機械構造用鋼であるS45CやS50Cなどを使います。

他にも炭素工具鋼(SKS)にクロム、タングステン、バナジウム、ニッケル、モリブデンなどを添加させ性能を上げた合金の合金工具鋼があります。ハイス鋼(SKH)は切削工具や金型等などに用いられることが多い素材です。

8.プレス金型の素材比較表

プレス金型の素材について、素材の特徴や金型コスト、主な材料の種類、金型耐久性、加工性を表にまとめました。プレス金型の素材を選定する際の参考にしてください。

プレス金型の素材比較表

9.プレス金型を使った加工方法

プレス金型を使った加工方法は、せん断加工、曲げ加工、絞り加工、ファインブランキング加工に分けられます。ここでは、それぞれの特徴と加工方法を解説します。

せん断加工

穴あけ、打ち抜き、切り欠きなど、金属を切断・分離する加工方法です。上下がセットになった金型を用いて、素材の金属板に圧力をかけて切断します。切断面の仕上がりにより、普通せん断加工と精密せん断加工に分けられます。

曲げ加工

素材をプレスして曲げる加工方法です。加工方法の中では、最も基本的な方法です。使用する金型や機会により、突き曲げ(V曲げ)押さえ曲げ(L曲げ)逆押さえ曲げ(U曲げ)カール曲げ、ヘミング曲げ、ロール曲げなど様々な加工が可能です。

絞り加工

1枚の金属の薄板を円筒や円すいなど、容器形状に変形させる加工法です。パンチ(雄型)とダイ(雌型)の形が沿うように金属をしぼるように圧力をかけることで、立体的に加工します。製作物には継ぎ目がなく、丸みを帯びた形状も作成可能です。加工方法のなかではもっとも難しいとされます。

ファインブランキング加工

パンチとダイの隙間を無くし、上下から加圧してうち抜く加工方法です。ほかのプレス加工方法では難しいとされるミクロン単位の精密なプレス加工が可能です。特殊鋼をはじめ、ステンレス鋼、超合金などさまざまな金属の加工に対応しています。

10.株式会社プロテリアルの金型製作技術

プレス金型の素材について、素材の特徴や金型コスト、主な材料の種類、金型耐久性、加工性を表にまとめました。プレス金型の素材を選定する際の参考にしてください。

開発から試作、製品化、量産化まで一貫した製造体制の技術により、高機能な金型の提供が可能です。用途に合わせて、原料の組み合わせや比率を変え、独自の溶解精錬技術と熱間加工技術を駆使して製造しています。

11.まとめ

現代では流行りの製品が変わる可能性もあり、生産ラインを整える場合でも、時間がかかり高価なものであれば、リスクが生じてしまいます。できる限り「品質・納期・コスト」の水準をクリアするとなると、プレス金型が必要となり、自社にあった製品選び、材料選びが必要となるでしょう。

当社は厳選した原料による清浄度の高い鋼材料の開発力や、伝統的な製鉄技術を用いた製品やサービスを提供しています。当社の金型材料(YSSヤスキハガネ)は、用途に応じて原料の組み合わせや比率を変え、独自の溶解精錬技術と熱間加工技術を駆使して製造しております。また、お客様のご要望や製品用途に合わせた最適な材料を提案しております。プレス金型材料について詳しく知りたい方は、ぜひお問い合わせください。

当社の製品に関するご相談やご質問は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

  • YSS、ヤスキハガネは株式会社プロテリアルの登録商標です。

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