SKD61とは
用途、成分、硬度、処理・加工方法、SKD11との違いなど特徴を解説
2022年6月2日 2025年6月30日更新

SKD61とは、熱間金型用の合金鋼のことで「ダイス鋼」とも呼ばれているものです。
本記事ではSKD61の利用を検討している開発部の担当者や経営者の方に向けて、SKD61の特徴を解説します。
SKD61の用途、成分、メリットデメリット、硬度、処理・加工方法、SKD11との違いなど、
SKD61の種類や使い方をわかりやすくまとめています。
ぜひ参考にしてください。
1.SKD61とは
SKD61とは、JIS規格( G
4404:合金工具鋼鋼材)に規定されている、熱間金型用の合金鋼です。
「SKD」とは、S:Steel(鋼)、K:Kougu(工具)、D:Dies(金型)のことを示しています。61は分類記号です。
SKD61は、別名を「ダイス鋼」とも呼ばれており、炭素工具鋼にタングステン、モリブデン、クロム、バナジウムなどを添加して作られます。
材料の特徴としては、耐熱性や耐摩耗性などに優れていることが挙げられます。
その一方で、加工がしにくい点はデメリットです。
メーカーによっては、他の名称で扱っていたり、特性の異なる改良鋼種を制作している場合もあります。
2.SKD61の主な用途
SKD61は、主にダイカスト型、熱間・温間鍛造、ホットスタンピング金型、押出工具・プレス型・シャーブレード、
ゲージ、線引ダイス、各種抜き型などの用途で使われています。
いずれもSKD61の特徴を活かした使い方です。
3.SKD61の化学成分
SKD61の化学成分については、以下のようになっています。

SKD61の化学成分の特徴としては、モリブデン(Mo)やバナジウム(V)が多いことが挙げられます。
SKD61は汎用性の高いダイス鋼で、強度と硬度を合わせ持ち壊れにくいというだけでなく、変形のしにくさも大きな利点です。
SKD61の使い勝手の良さはこれらの成分によって支えられていると言えるでしょう。
4.SKD61の材料としての特徴(メリット・デメリット)
SKD61は、金型をはじめさまざまなシチュエーションで使われる材料です。材料としてのSKD61の特徴を紹介します。
メリット
SKD61は、モリブデンの配合量が多いことから、高温下での引張強さに優れていることがメリットです。
配合されたバナジウムにより靭性を備え、耐熱性が良好で亀裂が発生しにくい特性ももっています。
また、硬度が高く耐摩耗性に優れているため、広い用途で活用できる汎用性の高さもメリットです。
ダイス鋼としては手に入りやすい材料である点も見逃せません。
デメリット
SKD61は、加工しにくいことがデメリットです。また、熱処理の際に歪みや寸法変化が発生する傾向もあります。
5.SKD61の加工方法
SKD61は焼入焼戻し前の焼なましの軟らかい状態で切削加工を行うのが一般的です。焼入焼戻し後は硬いために切削加工はできるだけ少なく行うか、他の加工として研削加工や放電加工が用いられます。
焼なましの温度と硬度
まずSKD61の焼なまし温度および硬度についてです。焼なまし温度は820~870℃で、焼なまし硬さ(HBW)は229以下となります。
焼入れ焼戻し熱処理温度と硬度
焼入れ焼戻しの際の熱処理温度は、焼入れ時が1020℃、焼戻し時の温度が550℃です。いずれも空冷で冷まします。
熱処理後の硬度はHRC53~56程度ですが、製品の大きさに左右されます。また、硬度を確保するためには高温戻しが必須です。
SKD61は焼入れ焼戻しをすることによって硬度が上がる金属ですが、一方で熱処理を行うと寸法変化や歪みが出やすくなる傾向もあります。
細やかな成型が必要な場合は、加工業者と綿密な打ち合わせが必要です。
(参考)熱処理に関する用語の解説
熱処置とは、炭素を含んだ鉄鋼材料に対して加熱と冷却を行い、金属の性質を目的に合ったかたちに変化させることを言います。
鋼材に用いられる熱処理は、主に「焼なまし」「焼入れ」「焼戻し」「焼ならし」の4種類あり、
それぞれ具体的な処理内容は以下のとおりです。

焼入れと焼戻しはセットで行われます。焼入れによって鋼は硬くなる一方でもろく割れやすいので、焼戻しで靱性を持たせ丈夫にするのです。
用途によって150~200℃の低温焼戻し、550~650℃の高温焼戻し、いずれかを行います。
6.SKD61の熱処理と硬度
SKD61の硬度を熱処理と合わせて解説します。
焼なましの温度と硬度
焼なましとは、鋼を加工するために、一旦柔らかくする熱処理です。別名を焼鈍(しょうどん)とも言います。
SKD61の焼なまし温度は820~870℃で、焼なまし硬さ(HBW)は229以下となります。
焼入焼戻し温度と硬度
焼入れとは、鉄鋼の硬度を上げるために行う加熱、急冷のことです。
焼戻しは、鉄鋼の粘り(靭性)を上げるために行う加熱、冷却の過程を言います。
焼入れと焼戻しをセットで行うことによって、硬く粘りのある鉄鋼ができあがるのです。
なお、このとき冷却方法として用いられる「空冷」は、鉄鋼を炉の停止後に取り出し、常温で冷ます方法です。
SKD61は焼入れ1020℃、焼戻し550℃で行った場合、硬度はHRC53~56程度ですが、製品の大きさに左右されます。
SKD61は用途に応じて狙い硬さを設定し、それに合わせて焼入焼戻し温度を設定します。多くは焼入れの加熱は1000℃~1050℃、焼戻しは500~650℃の高温焼戻しを行い、40~53HRCの硬さ範囲で使用されます。
SKD61は焼入焼戻しをすることによって硬度が上がる鋼ですが、一方で熱処理を行うと寸法変化や歪みが出やすくなる傾向もあります。
細やかな成型が必要な場合は、加工業者と綿密な打ち合わせが必要です。
(参考)熱処理に関する用語の解説
熱処理とは、炭素を含んだ鉄鋼材料に対して加熱と冷却を行い、金属の性質を目的に合った内部組織や硬さに変化させることを言います。
鋼材に用いられる熱処理は、主に「焼なまし」「焼入れ」「焼戻し」「焼ならし」の4種類あり、
それぞれ具体的な処理内容は以下のとおりです。

焼入と焼戻しはセットで行われます。焼入れによって鋼は硬くなる一方でもろく割れやすいので、焼戻しで靱性を持たせ丈夫にするのです。
7.SKD61の表面処理
SKD61には、いくつかの表面処理方法があります。それぞれの処理方法について解説します。
めっき処理
めっき処理は、あらかじめ表面を覆うための金属を溶解させた液中に鋼材を入れて電解処理を行い、
溶解させておいた金属を鋼材の表面に付着させる処理方法です。
錆びやすい特性を持つSKD61には、めっき処理を行うことで錆びを防ぐ方法がおすすめと言えます。
用途を考えると、硬度のある工業用硬質クロムめっき、無電解ニッケルめっきなどを施すのが良いでしょう。
ただし、SKD61は炭素含有量が多く、鋼材表面に酸化被膜が生じやすいため、前処理をしっかりと行う必要があります。
窒化処理
窒化処理とは、加熱した窒素またはアンモニアによって行う表面硬化を言います。
温熱間鍛造金型やダイカスト金型で広く使われています。
用途や目的によって窒化深さを変えたり表面の硬い層(化合物層)が生成しないような処理を行ったりします。
物理蒸着(PVD)
物理蒸着は、真空中で加熱した成膜物質を蒸着させる方法です。
いわゆる「乾式めっき」の一種で、表面に膜を作るため耐摩耗性を得られます。
真空炉のなかで、高温で蒸発させた金属の粒子を、SKD61の表面に付着させることで完成します。
8.SKD61とSKD11の違い
SKD61とよく似ていると判断されやすい鋼材に、SKD11があります。SKD11は、冷間金型用のダイス鋼です。
用途としては、金属刃物・プレス型ゲージ・ねじ転造ダイスなどで使用されます。SKD61とSKD11との大きな違いは、硬度と強度にあります。
硬度については、SKD11のほうが優れています。これは、SKD11が炭素とクロムをより多く含んでいるためです。
熱処理後の硬度は、SKD61がHRC53~56であるのに対して、SKD11ではHRC58~62となります。
一方、靭性、熱間引張強度ではモリブデン、バナジウムを多く含むSKD61が勝ります。
300℃程度の高温下でも、強度を保つのはSKD61です。SKD11は高温になるに従い、急激に強度が下がってしまいます。
似た鋼材に見えますが、用途や使用環境によって選択しましょう。
9.当社で扱っているSKD61及び改良型、快削型のご紹介
当社では用途に応じて、SKD61とその改良型、快削型をそれぞれ扱っております。当社ホームページからそれぞれの特徴を抜粋し、紹介します。
DACはJIS規格におけるSKD61相当です。高温強度・靭性のバランスがよく、焼入性に優れます。幅広い用途に適用される汎用熱間工具鋼です。
DAC-iは成分調整とプロセル革新により靭性と高温強度を高めた次世代のスタンダード鋼です。
DAC-Xは成分改良とプロエル革新により従来の高性能材よりも高いレベルでの高温強度を有し、靭性も兼ね備えた高性能ダイカスト金型用鋼です。
SKD61の改良品にあたります。高温強度、靭性を高次元でバランスさせた高性能ダイカスト金型用鋼です。
耐ヒートクラック性、耐応力腐食割れ性に優れています。
DAC10は、耐ヒートクラック性、熱間耐摩耗性に優れています。精密ダイカスト型、熱間プレス型などに適用される鋼材です。
DACより靭性に優れた熱間工具鋼で、ニッケルが含まれており、高硬度の押出ダイスや熱間プレス型の割れ対策等に適用されます。
硫黄を加えて加工性を高めたHRC38~42の快削熱間工具鋼(プリハードン)です。小ロット金型、被削性が重視される金型・周辺部材などに適用されます。
10.まとめ
硬度が高く、強度もあるSKD61は、ダイカスト型や温熱間鍛造型、押出ダイスなど、さまざまな用途に使用されます。
SKD11と似ていますが、特徴には明確な違いが存在するため、目的や使用環境に適して素材を選ぶことが重要です。
当社では、耐熱材・耐食材など清浄度の高い鋼材を提供しております。
SKD61の改良品も複数用意があり、より最適な加工素材を提案することができます。
原料を厳選し、清浄度の高い鋼をつくり上げる材料開発力と、伝統の製鋼技術をもつ当社にお任せください。
- ※DAC、DAC-i、DAC-X、DAC-MAGIC、FDACは株式会社プロテリアルの登録商標です。
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