ハイス鋼とは?高速度工具鋼の成分や製造方法など基礎知識を解説
2022年4月28日 2025年6月30日更新
金属製造の設計や商品の生産準備で、ハイス鋼の使用を検討している方も多いでしょう。
この記事では、金型製造に携わる設計者の方に向けて、ハイス鋼の成分や製造方法などを詳しく解説します。
ハイス鋼の基礎知識や超硬合金の違いなど、幅広い知識を得られる内容になっていますので、
ぜひ金属製造の設計や商品の生産に役立ててください。
ハイス鋼はハイスピード鋼の略であり、高速度工具鋼と呼ばれるものです。
切削工具や金型に用いられることが多く、非常に硬い鉄鋼材料として知られています。
高温下での硬さなどを保つため、鋼にクロムやタングステンなどの金属成分が添加されています。
一般には焼入れ、焼戻しの熱処理を行って使用されます。
ハイス鋼の日本での製造は、現在のプロテリアル安来工場で初めて成功しており、現在では広く浸透しています。
ハイス鋼は、おもに3種類あり、それぞれの特徴を整理しておくのが重要です。
次の項目では、タングステンハイス、モリブデンハイス、コバルトハイスの3種類を解説します。
2.ハイス鋼はおもに3種類
先ほども少し触れたように、ハイス鋼は主に3種類に分けられます。ここでは、それぞれのハイス鋼について解説します。
タングステンハイス
タングステンハイスは、モリブデンを含有しないハイス鋼を指します。
その名前の通りタングステンが添加されており、その含有割合は18%前後が目安です。
その他にもクロム(4%前後)、バナジウム(1%前後)を含んでいます。
タングステンハイスは、摩耗への耐性の高さが大きな特徴です。そのため、一般的な切削工具に使われることが多いハイス鋼です。
また、バイトのような旋削加工用の工具にも使われます。種類としては、高速度SKH2やSKH3、SKH4、SKH10などがあります。
モリブデンハイス
モリブデンハリスは、タングステン系の廉価版として知られています。
モリブデン(5%前後)を多く含んでおり、タングステンも6%ほど添加されています。
タングステン系の廉価版ではあるものの「硬度」や「じん性」に優れています。
モリブデンハイスの主な用途は、タングステン系と同じく一般的な切削工具です。また「じん性」の高さから、プレス金型にも適しています。
フライスやドリルのような工具にも使われるなど、用途が広く便利なハイス鋼です。種類としては、SKH51〜SKH58の9種類があります。
コバルトハイス
コバルトハイスは、モリブデンハイスにコバルトを加えた材質のハイス鋼です。
モリブデンハイスは硬度の高さが特徴でしたが、コバルトを加えたことにより、さらに高い硬度を実現しています。
耐摩耗性にも優れているため、モリブデンハイスよりも使用用途が広がります。
コバルトハイスの中にもグレードがあり、
すべてが「高い硬度」「高い耐摩耗性」というわけではないものの、一定のパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。
3.ハイス鋼が含有する成分
ハイス鋼が含有する成分としては、W(タングステン)、V(バナジウム)、Co(コバルト)、Cr(クロム)などの合金元素が多くなっています。
また、タングステンハイスやモリブデンハイスの項目を見てもわかるように、ハイス鋼の種類によって、含有成分の割合が若干異なります。
4.ハイス鋼と超硬合金との違い
ここまでハイス鋼について解説してきましたが「ハイス鋼と超硬合金ってどう違うの?」と疑問に思っている方も多いでしょう。
超硬合金は、ハイス鋼よりさらに高硬度で高い耐摩耗性が特徴です。ただし、ハイス鋼よりも欠けやすい性質をもっています。
超硬合金は、切削工具や金型部品、その他の耐摩耗が求められる部品の素材として使われており、
作業の用途別に以下の4種類に分類されます。ここでは、それぞれの特徴を解説します。
K種
K種は、炭化タングステン(WC)と結合相にコバルト(Co)を混ぜた超硬合金です。
鋳鉄などの非鉄金属の切削で使われる材質となっており、元素記号を取ってWC-Co系と呼ばれます。
4種類に分類される超硬合金の中でも、とくに機械特性が優れており、超硬合金の代表的な存在です。
一般的に、超硬合金といえばWC-Co系を指します。
P種
P種は、WC-Co系であるK種に炭化チタンや炭化タンタルを加えた合金を指します。
耐熱性や耐溶着性に優れており、クレーターや熱亀裂のような熱的損傷に強いのが特徴です。
適応被削材としては、鋼や合金鋼、ステンレスなどがあります。
高速加工に向いているため、一般的な鋳鉄の切削などの用途に使用されることが多い超硬合金です。
M種
M種は、K種とP種の中間的な性質を持った超硬合金です。
P種の合金成分を適度に含んでいるため、熱的損傷に強い特徴がある一方で、K種のように機械的損傷への強さも兼ね備えています。
適応被削材としては、ステンレスや鋳鉄、タグタイル鋳鉄などがあります。幅広い切削に使用できるため、利便性の高い超硬合金です。
超微粒子超硬合金
超微粒子超硬合金は、その名前の通り超硬合金の粒子をさらに細くした材質です。
とても小さな粒子を焼き固めており「硬度」や「じん性」に優れ、多様な用途で使用できます。
たとえば「じん性」を活かして欠けやすいエンドミルに使ったり、バイトのチップに使用したりすることもあり、
きれいな仕上がりの切削面が実現できます。
5.ハイス鋼の製造方法
ハイス鋼には溶製ハイスと粉末ハイスの2種類があり、それぞれで製法が異なります。
ここでは、溶製ハイスと粉末ハイスの特徴と製造方法を解説します。
溶製ハイス
溶製ハイスは、鉄や合金元素などの原料を溶解して凝固したもの(「鋼塊」と言います)を鍛造や圧延にて素材の形状を成形して製造する高速度工具鋼です。合金鋼や工具鋼、通常の鉄鋼材料を製造するのと同じ製法で作られます。
代表的なJIS規格はSKH51です。
溶解、凝固したものは次に紹介する粉末ハイスに比べて金属組織が比較的粗く、不揃いとなりますので一般的には粉末ハイスに比べて「耐摩耗性」や「靭性」は低くなります。
とはいえ、現在はこちらの溶製ハイスが、オーソドックスなハイス鋼となっており、コストも抑えられます。
粉末ハイス
粉末ハイスは、一度溶かしたものを粉末にし、熱と圧力をかけながら固めて鋼塊を作ります。その鋼塊を溶製ハイスと同様に鍛造や圧延にて成形して作ります。
粉末ハイスに該当するJIS規格はSKH40です。
微細な粉末を元に製造するために金属組織が緻密になる特徴があります。粉末ハイスは、溶製ハイスに比べて強靭であり、耐摩耗性にも優れています。加えて、粘り強さや寿命も粉末ハイスのほうが優秀です。
性能の高い切削工具の製造が可能になり、長期的に高いパフォーマンスを期待できます。粉末を元に製造する素材に焼結材があります。焼結材は粉末に熱を加えて固めて製造しますが,粉末ハイスはさらに鍛造や圧延などで成形(塑性加工)を行うのが特徴です。
6.ハイス鋼の熱処理
ハイス鋼は1200℃前後で焼入れを行い、540~600℃程度で高温焼戻しを行うのが一般的です。
ハイス鋼は高温焼戻しにより二次硬化と呼ばれる現象が生じて高い硬度が得られます。
ハイス鋼はSKDなどの合金工具鋼より合金元素が多く含まれてるため、焼入れの冷却は速くすることが望ましいです。
焼戻しは2回行うのが標準ですが、コバルトの添加量が多いものは3回以上の焼戻しが推奨されています。
7.まとめ
ハイス鋼と一口に言っても、タングステンハイスやモリブデンハイス、コバルトハイスなど多くの種類があります。
それぞれの特徴や、超硬合金との違いなどを整理しておくことで、ハイス鋼についてより深く理解できるでしょう。
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