金型のかじりとは?
金型にかじりが発生する原因と対策を徹底解説!

2022年9月8日

金型のかじりとは?

金型のかじりを防止することで、不良品の発生を減らすことが可能です。
売り上げ向上を目指すために、金型のかじりの原因と対策についての情報がほしいと考えている技術者の方もいるでしょう。
この記事では、金型のかじりとは何か、金型のかじりの原因と対策について解説をしています。
金型の取り扱い方法を理解し、不良品の発生防止と売上や生産性の向上に役立ててください。


1.金型のかじりとは

金型のかじりについて、かじりとは何か、かじりが発生する理由など、基本的なことについて解説をします。

かじりとは

かじりとは、接触した部分の圧力が高くなってしまい熱影響によって、異常摩擦が起こる現象です。
かじりの主な原因は摩擦熱といわれてますが、他の要因もあるために、対策方法も複数必要となります。
一般的には、滑りの方向に生じた表面についているだけの浅い傷は擦り傷と言い、擦り傷が著しいものを「かじり」ということが多いようです。

金型にかじりが発生する理由

金型にかじりが発生する理由は、繰り返し使うことによる摩擦が原因となることが多いです。
また、金型から製品を抜く際の勾配が小さい、摩擦抵抗が大きいなどが原因といわれています。
一概に一つの原因によって引き起こされるというわけではなく、発生理由は様々で、発生原因によって、かじりにも種類があります。
細かい原因とそれらによって分類されるかじりの種類については、以下にて解説をします。

2.5つに分類される金型のかじり

金型のかじりは、発生する原因によって違い、5つに分類されています。
5つの名称と概要について下記にて解説をします。

アブレシブ磨耗

アブレシブ摩擦は、ひっかき摩擦や切削摩擦、スクラッチングともいわれます。
アブレシブ磨耗には種類があり、硬い方が柔らかい方を削り取ってしまったりする現象を2元アブレシブ磨耗といいます。
もう一つは、摺動している二面間に挟まった硬い粒子などが表面を削ってしまうことで磨耗する現象で、これを3元アブレシブ摩耗といいます。
表面と衝突をして削れてしまうスラリー磨耗や流体そのものが表面に衝突して脱落させるエロージョンもアブレシブ磨耗の一つです。

凝着磨耗

すべり摩擦面に発生してしまう磨耗で、摩擦によりできた発熱によって、相手材が結合をすることがあり、この金属結合を癒着といいます。
凝着磨耗とは、癒着をしている部分が次の運動によって、それらを剥がしてしまい、脱落し損耗することです。
凝着磨耗は、個体同士の化学反応によって起こってしまいます。
よって、同種類の材料や結晶構造が同じなど、材料の組み合わせと条件によって、より凝着磨耗が起こりやすくなると考えられます。

疲労磨耗

疲労磨耗はその文字の通り、金型部品が動く、止まるを繰り返す中で、疲労が発生してしまい、結果起こる磨耗の形態です。
ピッチングやフレーキングなどともいわれます。
金属部品同士が接触を繰り返すことで、表面が硬くなってしまい、時間経過とともに、小さな割れが生じ、亀裂になり、表面剥離を起こします。
この部分を起点にして、うろこ状にはがれるフレーキング現象や、面上に剥離するピーリング現象などもあります。

フレッティング磨耗

フレッティング磨耗は微動磨耗や微しゅう動磨耗ともいわれることがあります。
接触する個体表面が極めて小さい振り幅の擦りによって、生じてしまいます。
接触面の温度が上昇すると、500度から瞬間的には1000度になることもあるでしょう。
接触面が酸化、腐蝕することで、局部的に損傷してしまいます。
フレッティングが発生した箇所は、疲れづらさが著しく低下をしてしまい、疲労破壊する場合もあります。

腐食磨耗

腐食磨耗とは、摺動している面に酸化膜など皮膜がない場合は、酸やアルカリなどの腐食性物質や摺動している部位に対して
潤滑油が劣化をしているために、酸を生成してしまう、潤滑油中の物質によって、金属の摺動面を腐蝕してしまうことです。
腐食によって生成した物質は表面への吸着は弱く、摺動によって表面から脱落をします。
そして、摺動によって凝縮とせん断を繰り返した結果、新しい表面が現れては腐食することが繰り返されます。

3.かじり発生の原因ごとの対策

かじり発生の原因ごとの対策について解説します。また、それぞれの防止対策も紹介します。

アブレシブ磨耗が発生する原因と対策

アブレシブ磨耗が発生する原因は二元磨耗と三元磨耗があります。
二元磨耗は、2つの硬度の異なるものが擦れあう際に、硬度が違うと、硬い方が柔らかい方へ食い込んでしまい、発生してしまいます。
三元磨耗は、二面に挟まった硬質な粒子によって引き起こされてしまいます。

【防止対策】
二元磨耗対策は、部材の硬度が高いものや炭化物をたくさん含んだ鋼種を使うことなどが考えられます。
三元磨耗に対しては、機械の摺動を密封し、土砂や硬度の高い粒子が混入しないようにする必要があります。
また、混入してしまった場合に、すぐに除去が出来るように、潤滑系統にはフィルタなどを設置するなどの対策もあります。

凝着磨耗が発生する原因と対策

凝着磨耗は、接触面が擦れあっているうちに接着部位の凝着が発生し、凝着部位がはがれることで起きてしまいます。
また、はがれた金属が、接触面に存在することでさらなる摩耗が進行してしまいます。
個体同士の化学的な反応によって結合して起こってしまうために、同じ種類の材料であれば、より起きやすくなります。

【防止対策】
潤滑材を使い、材料同士が接触することを防ぐことが可能です。
また、メッキなどの表面処理をすることで、凝着しづらい皮膜を形成させられます。
他にも、材料自体を凝着しづらいものにするなどの方法があります。鉄材に対して凝着しづらい元素は、銀、鉛、ビスマスなどです。

疲労磨耗が発生する原因と対策

疲労磨耗の原因は金属の疲労によるものです。
金属同士が接触する面に繰り返し力が加わることで、表面が硬くなり、時間の経過とともに割れてしまいます。
小さな割れが亀裂になり、表面剥離を起こすのです。アブレシブ磨耗・凝着磨耗への対策を行っていても疲労摩耗は起きてしまいます。

【防止対策】
疲労磨耗の対策として、まず覚えておかなければならないことが、金型の劣化が原因なので、防止は難しいという点です。
不良品などの生産が起きる前に、基準を作り、早いうちに新しい金型との交換を行うことが大切です。
出来る限りの防止対策としては、金属疲労を遅らせるために、高強度材への変更や表面強化処理などがあります。

フレッティング磨耗が発生する原因と対策

フレッティング磨耗が発生する原因は、結合部分で繰り返し外力が加わることです。
軸受と軸、軸受とハウジングの接触部分に変動荷重を受けている時や、違う経を持っている球と球が接触をした時、法線方向に変動荷重を
受けている時、平面版と平面版が接触しているポイントに変動荷重を受けている時などにより起こりやすいといわれています。

【防止対策】
フレッティング磨耗の防止対策は、潤滑剤の使用や締め代を大きくすることや、軸の固定などです。
軸受は、外部から受ける加工負荷や動力からくる負荷、重量などを受けています。
他にも、動バランスによる振動や熱膨張、収縮なども受けているため、それらを考慮しつつ、フレッティング防止対策をする必要があります。

腐食磨耗が発生する原因と対策

摩耗した金属面で腐食反応が起こることで、さらなる摩耗が生じてしまいます。
摩耗面は高温であることが多く、腐食反応が進みやすいという点も原因の一つです。
腐食によって作られた物質は表面への吸着力が弱いため、摺動によって、脱落をしてしまいます。
新しい表面が現れ脱落を繰り返すことで、磨耗量が増えていきます。

【防止対策】
防止対策としては、腐食しにくい材質の選定をすることなどが挙げられます。
クロム・チタン・亜鉛・アルミニウム・ニッケル・ステンレス・タングステンなどによる金属メッキなどが、
一般的に腐食しづらい材質といわれています。他にも、非金属被覆などを施すことも対策の一つです。

4.金型でかじりを防止するためにできること

金型でかじりが生じてしまうと、大変なダメージを受けてしまいます。
かじりを防止するために日々できることにはどういったことがあるのでしょうか。

金型、製品の状態は常に観察する

金型、製品の状態を常に観察するようにしましょう。磨耗が少し起こり始めた段階で対策を行えるように、定期的な観察が必要です。
かじりが発生してしまうと、致命的なダメージにつながり、作動不良や破損することに直結するために、
かじり発生前に対策を行うことが大切です。業者に依頼をするなど、メンテナンスの頻度を高くして、こまめに行うように心がけましょう。

摩耗を減らすための対策を行う

かじりは様々な摩耗により引き起こされるため、原因となる摩耗を起こさない対策を行っておくことが大切です。
何かが起きてからの対処ではなくて、想定できる磨耗に対して、最初から対策をしておくことで、
のちに起きる磨耗現象を抑えることができます。利用の際には、前もってプロの意見を聞くようにすると良いでしょう。

5.まとめ

金型のかじりの中には、気をつけていても起きてしまうものもあります。
想定できる磨耗に対して最初から対策をしておくことで、のちの面倒を取り除くことができるでしょう。
材料選びのうちから、磨耗が起きづらいものにするなど、設計時点でプロの意見を参考にしてみるとよいかもしれません。

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