研究

プロテリアルとFEV、アモルファス合金と高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石を活用したxEV駆動モーターの設計コンセプトを共同検証

高効率化に加え、高出力化・軽量化の可能性を確認

2026年10月5日
株式会社プロテリアル
FEV

 大手高機能材料メーカーである株式会社プロテリアル(以下、プロテリアル)とモビリティ、エネルギー、ソフトウェア分野における世界的な技術コンサルティングであるFEVは、アモルファス合金※1と高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石を活用したxEV※2駆動モーターの設計コンセプトを共同で検証しました。

 検証は、プロテリアルが有する先進材料に関する知見と、FEVが有する電動駆動システムの設計およびシステム評価に関する知見を組み合わせ、シミュレーションにより実施しました。その結果、市販BEV(バッテリー式電気自動車)の主要な出力帯に相当する最大出力230kW級の駆動モーターを想定したモデルと比較して、モーター効率の向上に加え、高出力化と軽量化を同時に実現できる可能性を確認しました。本検証結果は、モーターの高効率化や小型・軽量化に加え、重希土類※3に関する資源・調達リスクの低減にも貢献するものです。

 プロテリアルとFEVは今後も連携して、先進的な高機能材料技術を適用して駆動システム全体の新たな価値創出へつなげる取り組みを進めていきます。

 なお、本成果は、2026年10月5日から7日までドイツ・アーヘンで開催されるAachen Automotive Colloquiumにおいて、FEVとプロテリアルの連名で発表します。

1.背景

 脱炭素社会の実現やエネルギー効率向上への取り組みなどが進む中で、消費電力が少なく、高性能で、材料調達リスクも低減したモーターへのニーズが高まっています。xEVでは電費の向上や航続距離の延長、エアコンなどの空調機器では消費電力の低減、データセンターでは冷却設備やファン、ポンプなどの高効率化が求められています。他にもeVTOL※4に代表されるエアモビリティやロボティクスなどの用途でも高効率化が重要です。こうしたニーズに応える技術として、モーター損失を低減できるアモルファス合金とネオジム磁石が注目されています。

 アモルファス合金は、モーターコアに一般的に用いられるけい素鋼板と比較して鉄損※5が小さいという特長を有しています。また、xEV駆動モーターに使用されるネオジム磁石については、資源制約の大きい重希土類への依存度の低減や、調達リスクの軽減が強く求められています。

 プロテリアルは、こうした市場ニーズに応えるため、モーターコアの打ち抜き加工に適したアモルファス合金リボンの連続積層接着技術や、xEV駆動モーターに適用可能な高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石を開発し、お客さまへの提案を進めています。さらに、プロテリアルは2025年11月に営業本部にモーターソリューション部を設置し、個々の製品単体ではなく、モーターおよび駆動システム全体の視点からプロテリアルの製品の価値を検証し、お客さまに最適なソリューションを提案する取り組みを推進しています。

2.検討の概要と成果

 プロテリアルは、モーターソリューション部における取り組みの一つとして、Beyond Materials株式会社によるプロジェクト推進支援のもと、FEVと連携し、アモルファス合金および高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石のxEV駆動モーターへの適用を検討しています。

 FEVが市販BEVの主要な出力帯に相当する最大出力230kW級の駆動ユニットを想定し、モーターコアにけい素鋼板を用いたモデル(以下、参照モデル)を設定しました。その上で、アモルファス合金の適用効果をシミュレーションにより評価しました。具体的には、モーターコア材料を単にアモルファス合金に置き換えるのではなく、インバーターや減速機を含む駆動システムの最新動向を踏まえ、モーターの最大回転数を高めることで、アモルファス合金の低鉄損特性を最大限に活用するモーター設計を検討しました。また、減速機の減速比を変更することで、車両走行時の最大トルクおよび最高速度が参照モデルと同等になるよう設計しました(表)。また、本検討では、重希土類に依存することなく、高い残留磁束密度(Br)による優れた磁気特性と、高い保磁力(HcJ)による耐減磁性を両立するプロテリアルの高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石を適用しました。その結果、参照モデルと比較してモーター効率の向上に加え、300kWへの高出力化と約27%の軽量化を同時に実現できる可能性を確認しました(表)。

表:市販BEV主要出力帯駆動モーターとの比較
参照モデル※6 本検討
使用材料 モーターコア けい素鋼板 アモルファス合金
磁石 ネオジム磁石 ネオジム磁石
(重希土類フリー)
マグネットワイヤ 平角線 平角線
設計変数 極数・スロット数 8極72スロット 12極72スロット
ステーター外径 200mm 200mm
最大回転数 14,900rpm 20,000rpm
減速比 10.8 14.4
有効長(相対比) 100%(基準値) 77.1%(相対値)
モーター重量(相対値) 100%(基準値) 72.8%(相対値)
モーター性能 ピーク出力 230kW 300kW
効率 WLTP Class 3※7 95.5% 97.9%
ARTEMIS MW 150 drive cycle※8 95.3% 97.4%

3.今後の展望

 プロテリアルとFEVは、先進材料技術をモーターおよび駆動システム全体における具体的かつ定量的な効果につなげるため、今後も共同で検討を進めていきます。

 プロテリアルは、モーターソリューション部を中心に各事業部門と連携し、お客さまのアプリケーションの視点から材料の価値を検証するとともに、最適なソリューションを提案していきます。FEVは、電動駆動システムの設計、シミュレーション、ベンチマーキングおよびシステム統合に関する知見を生かし、新たな材料技術が次世代の電動駆動システムにどのような価値をもたらすかを評価していきます。

 両社は、高効率な電動モビリティの実現に加え、eVTOLやヒューマノイドロボットなどの新たなアプリケーション分野に向けたソリューションを提供することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

4.Aachen Automotive Colloquiumでの発表

 本成果は、2026年10月5日から7日までドイツ・アーヘンで開催されるAachen Automotive Colloquiumにおいて、プロテリアルとFEVの共同で発表します。また、会場内のFEVブース(ブースNo.9)において、本検討で検討・評価したモーター構造の模型を展示する予定です。

参考文献

【プロテリアルについて】

 プロテリアルは、日本・東京に本社を置く金属を中心とする高機能材料メーカーです。モーター分野においては、モーターソリューション部を中心に各事業部門が連携しながら、お客さまの開発パートナーとして、モーターおよび駆動システム全体の視点から材料価値を検証し、最適なソリューションを提案しています。今後も、モーター材料をトータルで提供できるメーカーとして、高効率モーターへの自社製品の適用を通じて、xEVの電費向上や空調機器・データセンター設備の省電力化に貢献するとともに、eVTOLやヒューマノイドロボットなどの新たなアプリケーション分野に向けたソリューションを提供することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

【FEVについて】

 FEVは、自動車業界における世界的なエンジニアリングプロバイダーであり、さまざまな分野で革新をリードするグローバル企業です。FEV Europe GmbHは、FEVの中核企業としてドイツ・アーヘンに本拠を置き、車両・システム開発から設計、シミュレーション、評価・検証までを一貫して提供しています。自動車メーカーおよびサプライヤー向けの開発支援において豊富な実績を有し、高度なエンジニアリング能力とシステム視点に基づくソリューションを提供しています。

【Beyond Materialsについて】

 Beyond Materialsは、三菱商事株式会社とFEV Consulting GmbHが設立した合弁会社です。両社の素材産業に関する事業知見、グローバルネットワーク、自動車・エネルギー・ロボティクス産業等のユーザーニーズや最終製品の設計・開発力を組み合わせ、素材産業およびそのバリューチェーン上の企業に対し、市場・技術調査、戦略立案、製品開発、実証試験などのコンサルティングおよびエンジニアリング関連ソリューションを提供しています。

以上

【報道機関からのお問い合わせ】
コミュニケーション部 井上 TEL 050-3664-9519

  • 注本資料に記載した解析値は、設定した条件に基づくシミュレーション結果であり、製品の保証値ではありません。
  1. ※1溶融した合金を急冷して得られる、結晶構造を持たない金属材料。
  2. ※2電気自動車(BEV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)などの総称。
  3. ※3希土類元素のうち、テルビウム(Tb)やジスプロシウム(Dy)など原子量が大きい元素。
  4. ※4電気を動力源として垂直に離着陸ができる次世代の航空機(電動垂直離着陸機)。
  5. ※5鉄心に交流磁界を印加した時に生じるエネルギーの損失。
  6. ※6参照モデルの値は公称値を含む。
  7. ※7一般的な乗用車に適用される国際標準の走行サイクルであり、市街地から高速道路までを含む実使用に近い走行条件を模擬した評価法。
  8. ※8欧州の ARTEMIS (Assessment and Reliability of Transport Emission Models and Inventory Systems) プロジェクトで策定された走行パターンの一つで、自動車の燃費・電費・排出ガス・モーター効率評価に広く用いられる。