製品

EV駆動モーター用高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石を開発

2025年7月22日
株式会社プロテリアル

 株式会社プロテリアル(以下、プロテリアル)は、重希土類を全く使用せず、EV(電気自動車)の駆動用モーターにも使用可能な高残留磁束密度(Br※1と高保磁力(HcJ※2を両立した高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石を開発しました。本製品の高い磁気特性により、重希土類の資源枯渇リスクを回避するとともに、モーターの高トルク化や小型化、高効率化による省エネルギー、CO2排出量削減に貢献します。

ネオジム焼結磁石NEOMAX®(イメージ)

1.背景

 世界的なカーボンニュートラルの潮流により、自動車や航空機の電動化が急速に進められています。これらの用途で使用されるモーターは、100℃以上の高温にさらされるため、モーター部品として使用される磁石にも高耐熱性が求められます。モーターの高トルク化や小型化には高い磁気特性を持つネオジム焼結磁石が適しますが、耐熱性を向上させるために重希土類※3を添加する必要があります。しかし、重希土類は軽希土類に対して埋蔵量が少ないことから、需要の拡大が見込まれる中で、価格が大きく変動しやすいことや、資源枯渇リスクが高いことが課題となっています。そのため、重希土類使用量削減や不使用(フリー)化のニーズが年々高まっています。

2.概要

 プロテリアルは、これまでも重希土類を使用せずに耐熱性を高めた重希土類フリーネオジム焼結磁石の開発、量産を行ってきました。今回、高まるニーズに対応するため、当社独自の組織・組成制御技術により、残留磁束密度(Br)と保磁力(HcJ)を飛躍的に向上させたEV駆動モーターに使用可能な高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石NMX™-F1SH-HF材、NMX-G1NH-HF材の開発に成功しました。

 NMX-F1SH-HF材は、電動パワーステアリングやコンプレッサー等に加え、駆動用モーターにも使用可能なBr=1.40T、HcJ≧1671kA/mの磁気特性を有し、既に量産工場での試作サンプルの提供を始めています。

 また、NMX-G1NH-HF材は高トルク高耐熱が必要な駆動用モーターにも使える重希土類フリー材であり、100℃以上の環境において使用できるBr=1.42T、HcJ≧1830kA/mの磁気特性を研究所設備にて達成しました。今後、量産性を検証し、2026年4月には量産工場での試作サンプル対応が可能になる予定です。

3.プロテリアルの省重希土類技術、重希土類フリー技術

 プロテリアルは、ネオジム焼結磁石分野のトップ企業として、長年にわたる研究開発の結果、世界中で600を超えるネオジム焼結磁石の特許、日本で200を超える特許のポートフォリオを構築し、ネオジム焼結磁石NEOMAX®として製造・販売を行っています。近年は特に重希土類フリーの最強のネオジム焼結磁石を世に出したいという強い思いから、省重希土類技術の開発と並行して、重希土類フリー技術の開発および特許出願に注力し、特許のポートフォリオを強化しています。

 図は、プロテリアルの高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石の磁気特性マップです。第1世代のNMX-S49F材に対して、当社独自の製法による不純物コントロールと組成・プロセスの最適化により、HcJとBrを飛躍的に向上させた新開発の高性能重希土類フリー磁石が、今回、開発に成功したNMX-F1SH-HF材とNMX-G1NH-HF材です。

 NMX-F1SH-HF材は、電動パワーステアリングやコンプレッサー等に加え、駆動用モーターにも使用可能なBr=1.40T、HcJ≧1671kA/mの磁気特性を有しています。さらに、NMX-G1NH-HF材は高トルク高耐熱が必要な駆動用モーターにも使える重希土類フリー材を開発してほしいという強いニーズにお応えしたBr=1.42T、HcJ≧1830kA/mの磁気特性を研究所設備にて達成しました。

図. 高性能重希土類フリーネオジム焼結磁石の磁気特性マップ

4.モーター材料の総合メーカーとして

 プロテリアルは、ネオジム磁石だけでなく、資源リスクが比較的小さくコストパフォーマンスに優れたフェライト磁石NMF®の製造・販売も行っています。また、モーターの高性能・高効率化につながる材料として、コア(鉄芯)用アモルファス金属、エナメル線、磁性楔などを取りそろえるモーター材料の総合メーカーです。モーターに関するお客さまの課題解決のため、さまざまなモーター材料を供給し続けていきます。

以上

  • 注:本資料に記載の特性値は代表的な値であり保証値とは異なります。
  1. ※1残留磁束密度(Br):磁石の持つ磁力の強さの指標で、高いほどモーターを高トルク化、小型化できる。
  2. ※2保磁力(HcJ):磁石の減磁しにくさの指標で、高いほど高温環境まで使用できる。
  3. ※3重希土類:希土類元素のうち、テルビウム(Tb)やジスプロシウム(Dy)を含む原子量が大きいもの。

(ご参考)

表.プロテリアルの省重希土類技術、重希土類フリー技術
技術系統 適用する
省重希土類技術、
重希土類フリー技術
材質名 重希土類
使用量
イメージ
(対比)
磁気特性
残留磁束密度(Br
保磁力(HcJ
備考
磁石基本組成の一部を重希土類に置換 なし NMX-S41EH 10 Br=1.28T
HcJ≧1989kA/m
省重希土類技術、重希土類フリー技術を適用しない比較対象品の代表例として記載
省重希土類
技術
従来拡散技術 NMX-U48SH 1 Br=1.40T
HcJ≧1830kA/m
従来拡散技術を適用した代表例として記載
M拡散™ NMX-G1NH 約1/5 Br=1.42T
HcJ≧1830kA/m
従来の拡散技術に対して、さらに省重希土類な当社独自の拡散技術
2019年から量産中
M拡散を改良 NMX-H1EH 約1/5 Br=1.45T
HcJ≧1989kA/m
試作サンプル提供可能
重希土類
フリー技術
独自の製法による不純物コントロールと組成・プロセスの最適化 NMX-S49F 0 Br=1.39T
HcJ≧1273kA/m
第1世代
NMX-S49FH 0 Br=1.39T
HcJ≧1512kA/m
第2世代
NMX-F1SH-HF 0 Br=1.40T
HcJ≧1671kA/m
第3世代
今回開発、発表
試作サンプル提供可能
NMX-G1NH-HF 0 Br=1.42T
HcJ≧1830kA/m
第4世代
今回開発、発表。研究所設備にて達成
2026年4月より試作サンプル提供予定
  1. Tb換算値

【報道機関からのお問い合わせ】
コミュニケーション部 担当 南 TEL 050-3664-9519

NEOMAX、NMF、NMX、M拡散は、株式会社プロテリアルの登録商標または商標です。