比例ソレノイドとは?
基本的な特性と産業機器や農機で採用が進む理由を解説

2023年1月11日

比例ソレノイドとは?基本的な特性と産業機器や農機で採用が進む理由を解説

産業用機器や農業機械の電子化や高性能化が進むにつれて、
機器の可動部を制御するために必要な「油圧」は、従来よりも細かな制御が求められるようになりました。
油圧の制御にはソレノイドバルブが使われます。従来、開・閉の2つの状態を取れる「ON/OFFソレノイドバルブ」が主流でしたが、
機器の高性能化にともない細かい調圧を実現できる「比例ソレノイドバルブ」が採用される機会が増えています。
この記事では、比例ソレノイドバルブの概要や用途、ON/OFFソレノイドバルブとの違い、選ぶポイントについて解説します。
産業用機器や農業機械などの性能向上を目的に比例ソレノイドバルブについて調べている方は、ぜひ一度ご確認ください。


1. 比例ソレノイドとは

比例ソレノイドとは、印加する電流の大小によって、より細かな油圧調節を実現したソレノイドです。
吸引力やバルブの開度を調整することで、油圧制御をおこないます。
産業機器や工作機械、自動車などに搭載される部品は、電動ポンプによって発生させた圧力をソレノイドバルブで調整することで機能します。
製品に求められる性能が向上するなか重要なのが、油圧を細かく調整できる比例ソレノイドです。
続いては、比例ソレノイドの構造や仕組み、ON/OFFソレノイドバルブとの違いについて解説します。

比例ソレノイドの原理・構造

比例ソレノイドは、おもに電流を流すコイルと電磁力によって移動する可動鉄心、反力を発生させるスプリング、
またそれらを覆うケースによって構成されています。コイルに任意の電流を流すことで、ソレノイドバルブの開度を任意に制御可能です。

ON/OFFソレノイドバルブと比例ソレノイドの違い

ON/OFFソレノイドは、構造的には比例ソレノイドと似ています。
比例ソレノイドはコイルに印加する電流の大きさによって吸引力およびソレノイドバルブの開度をコントロールできますが、
ON/OFFソレノイドはソレノイドバルブを全開にするか全閉にするかの指示しかできません。
比例ソレノイドは、全開・全閉だけでなく印加する電流量によってソレノイドバルブの開度を細かく調整できるため、
結果系の流量や圧力を細かく調整可能です。ON/OFFソレノイドバルブを使用した場合よりもきめ細やかな制御を実現できます。
一方、油の流れを遮断したり開通したりするだけの用途であれば、ON/OFFソレノイドの方が低コストで採用できます。
どちらにもメリットがあるため、用途によって使い分けることが重要です。

2. 比例ソレノイドバルブの基本的な特性

比例ソレノイドバルブの性能は、主に以下の4つで表現されます。

電流-圧力特性(I-P特性)

比例ソレノイドバルブは、電流と吸引力や圧力が比例関係となっています。
このときの電流と圧力の関係を表現するのが「I-P特性」です。
ソフトウェア内部にこの特性を組み込むことで狙いとする圧力が実現できるため、
どの程度の電流をソレノイドバルブに印加すればいいかの判断基準に使用可能です。
極めて高い精度で圧力を調整する必要がある製品では、
このI-P特性を個体ごとにソフトウェアに覚え込ませるような工夫を行っています。

電流印加時の圧力応答性

急激な動きに対応するために求められるのが、電流を比例ソレノイドに印加してから圧力が反応するまでの時間に対する高い応答性です。
応答性を確認する指標の一つとして、電流をステップ状に変化させた際に、
圧力がどの程度の時間遅れで目標に到達するかを計る方法があります。
油圧が反応し始めるまでのロス時間、反応し始めてから狙いに到達するまでの応答時間に分割可能です。
油圧が急激な勾配で反応してしまうと、目標の圧力に対してオーバーシュートしてしまいます。
用途にもよりますが、無駄時間をできるだけ短くし、目標の圧力に到達する必要最低限の勾配で実現できれば、
オーバーシュートを抑えることができるでしょう。

漏れ量

比例ソレノイドバルブは圧力を制御している際に、狙い以外で一定程度油が漏れてしまう現象が発生します。
この現象は漏れ量や消費流量、リーク量などとよばれます。
漏れ量が多いと狙いの圧力を実現するために加圧源が行う仕事量が大きくなり、無駄なエネルギー消費につながります。
漏れ量を小さくするために必要なのは、部品の加工精度を向上させたり、すきまを詰めたりすることですが、デメリットがあるのも事実です。
加工精度を向上させると加工コストが上がってしまったり、
すきまを詰めると通常は影響が出ない微細な異物の影響を受けやすくなったり、動作不良が発生しやすくなります。

オーバーライド特性

ある制御圧を保持している状態から比例ソレノイドバルブの下流を大気開放した場合の圧力変化量を、オーバーライド特性とよびます。
特に大きな流量が必要な場合には、オーバーライド特性が優れた部品の方が小さな圧力で大きな流量を発生させることが可能です。

3. 比例ソレノイドバルブの主な用途

比例ソレノイドバルブは、農業機械や建設機械、産業車両、自動車の動作部分やアタッチメントなどに用いられています。
基本的に比例ソレノイドバルブ単体で使用することはなく、油圧ポンプなどの圧力発生源とともに
複数の比例ソレノイドバルブを組み合わせ、圧力を発生・制御するアクチュエータとして製品に搭載されます。
比例ソレノイドバルブの主な役割は、アクチュエータ内部に油圧ポンプで発生させた元圧に対して、
比例ソレノイドバルブを通過した後の下流側に発生させる圧力を、狙い通りに細かく制御することです。
アタッチメントの固定や定量的な動作が必要な場合には、ON/OFFソレノイドバルブで対応できますが、
微小調圧により性能を実現する必要がある場合には、印加電流に比例した制御ができる比例ソレノイドバルブが採用されています。

4.産業機器・農業機械で比例ソレノイドが必要とされる理由

近年、電子化が進んでいる産業機器や農業機械は、
インターネットに機器を接続し他の機器と連携して動かすことや自動運転の実現に向けた開発が進められています。
これらを実現する機器は、従来よりもきめ細やかな動作が求められています。
従来、ON/OFFソレノイドが搭載された産業用機器をコントロールする際は、
経験を積んだ操作者がさまざまな情報と自身の経験や勘・コツに頼っていました。
しかし、労働力不足や作業者の負荷低減を目的に機器の自動化が進む中、操作者の経験や勘・コツに頼ることができなくなりました。
また、産業機械や農業機械と協調しながら作業を行う場合に加え、本来は難しかった複雑な作業に対するニーズも高まっています。
複雑な作業を実現するためには、ON/OFFソレノイドでは実現できなかった細かな調圧が必要です。
そこで効果的なのが、細かな油圧制御が可能な比例ソレノイドバルブの採用です。
比例ソレノイドバルブを採用すれば、自動化による制御性低下を避け、従来よりも複雑で細かい作業を実現できます。

5.比例ソレノイドバルブを選ぶ際のポイント

比例ソレノイドバルブは、さまざまなメーカーから発売されています。
自社の用途・目的に合った仕様の比例ソレノイドバルブを選ぶために、以下のような点を考慮する必要があります。

信頼性(耐久性・防水性)

比例ソレノイドバルブには、高い信頼性が求められます。過酷な使用環境でも故障なく使用できる耐久性や防水性の高さに加えて、
用途に合わせた特性を満たしているかどうかが重要です。例えば、建設機械や農業機械は、屋外の過酷な環境下で使用されます。
風雨にさらされる環境や砂埃の舞う環境で稼働する必要があります。
また、山間部の開発など、交通アクセスが悪い環境で使用されることもあります。
建設機器が故障しても、簡単に交換できるような状況ではありません。
修理に時間がかかり、工期が遅れれば大きな損失につながってしまいます。
耐久性や防水性は、耐環境試験の結果を比較することでわかることも多いですが、
自社が採用したい製品と同様の製品に対して、納入実績の多い企業が開発した製品が安心です。
過去の実績にもとづき、機器の使用方法や使用環境に対する理解度が高く、目的に合わせた開発がされていると考えられるでしょう。

体格・コスト

比例ソレノイドバルブの体格が大きくなると、これらを組み込む油圧ポンプなどの完成品の体格も大きくなってしまいます。
限られた搭載スペースの中に、さまざまな部品を搭載する必要があるため、
搭載の自由度を確保するためには、できるだけ体格が小さい製品が望ましいです。
必要な出力、性能を確保しつつ、できる限り体格を小さく抑えた製品を選ぶといいでしょう。
また、比例ソレノイドバルブはON/OFFソレノイドバルブに比べてコストが高くなります。
ユーザーが導入しやすくするためには、できるだけ採用する部品のコストを抑える必要があるため、ON/OFFソレノイドとの
部品共通化などにより、コストを抑える工夫がされているか、工夫した構造が取られているかは、重要なポイントの一つです。

高圧に対応できるか

建設機械や農業機械は大型のものが多いため、油圧で制御する対象も大型になるのが一般的です。
そのため油圧を制御する比例ソレノイドバルブには、高い圧力が求められます。
油圧によって発生させる力と扱う対象の重さなどから、必要な圧力を算出します。
このとき多少余裕をもった設定にしておくと、安心して採用可能です。
また、高圧力の場合にはソレノイドバルブを開ける側に大きな力が働きます。
このとき油圧保持力が不十分な場合には、油が微小に漏れ、圧力が徐々に低下してしまう場合があります。
特にある程度長い時間圧力を保持し続けなければいけない場合には、漏れ性能にも着目することが重要です。

油圧の制御性

従来採用されていたON/OFFソレノイドバルブから、比例ソレノイドバルブに変更する主な理由の一つに、高い油圧制御性の実現があります。
採用するソレノイドバルブが、目的とする調圧精度を実現できるかどうかは比較すべき重要なポイントです。
制御性を確認する際の観点としては、目標とする圧力に対してどの程度の追従性と精度で実現できるかを確認するといいでしょう。
例えば、比例ソレノイドバルブの追従性や位置決め精度に影響を与える要素として、以下が挙げられます。

  • 通電電流と吸引力の関係
  • 電流を印加してから吸引力を発生させソレノイドバルブが開閉する際の応答性
  • 開弁時と閉弁時の電流と吸引力のヒステリシス

6. 比例ソレノイドのまとめ

この記事では、比例ソレノイドについて、構造やON/OFFソレノイドとの違い、
比例ソレノイドが求められている理由や選ぶ際に考慮すべきポイントについて解説しました。
(株)プロテリアルは、建設機械や農業機械、産業機器、産業車両等に搭載される油圧弁の制御用など
幅広い用途に採用される電磁ソレノイドを用意しています。
特に、高吸引力・高耐圧力・高い防水性を特徴とした比例ソレノイドバルブを扱っているため、
厳しい環境下で高い信頼性と従来のON/OFFソレノイドでは実現できなかった高い制御性をもった製品開発が可能です。

電磁ソレノイドが必要で、従来のソレノイドに課題を感じている方や(株)プロテリアルの電磁ソレノイドに興味を持って頂けた方は、
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