磁区制御型Fe基アモルファス合金「MaDC-A™」の開発
2020年3月4日
日立金属株式会社
日立金属株式会社(以下 日立金属)は、Fe基アモルファス合金(以下、アモルファス)Metglas™に、磁区制御技術を適用した「MaDC-A™」(呼称:マードック・エー)を開発しました。
MaDC-A™は、従来製品に比べ高磁束密度および鉄損※1を約25%低減したもので、配電用変圧器※2のさらなる高効率化に寄与します。
1.背景
近年、地球温暖化対策としてCO2排出量削減が求められており、省エネルギー化が喫緊の課題となっています。配電用変圧器に関しては各国でエネルギー効率規格の厳格化が進展しており、その規格に適合するより低損失な鉄心材料の開発が求められています。
2.概要

MaDC-A™
アモルファスは、結晶構造を持たないためヒステリシス損失※3が小さく、また板厚が薄く電気抵抗率※4が高いため渦電流損失※5が小さいといった特性を有しています。このため、電磁鋼板※6に比べて鉄損が小さい特長を持っています。
磁区※7構造を制御することでのアモルファスの低鉄損化は20年以上前から認知されていましたが、量産化技術が確立していませんでした。日立金属は、長年の課題であった量産可能な磁区構造制御技術の開発に成功し、自社開発したMetglas™に対しその独自技術を適用することで、鉄損を大幅に低減した新製品「MaDC-A™」を開発しました。
MaDCとは磁区制御の英語表記「Magnetic Domain Controlled」の頭文字を組み合わせたもので、MaDC-A™は従来製品対比で約25%の低損失な特性を持っています。このため、配電用変圧器の小型・軽量化および高効率化に大きく寄与し、省エネルギー化・地球温暖化防止など環境負荷低減に向け、大いに期待されています。MaDC-A™のほか、2019年より上市したソフトフェライト材「MaDC-F™」も日立金属ではシリーズ化をしており、それぞれ従来材以上に高効率化のニーズに対応する製品です。
日立金属は、今後も継続して素材の性能向上を進め、電気電子機器のさらなる高性能化に貢献し、お客様の幅広いニーズにお応えしていきます。
3.生産状況
サンプル供給:2020年3月開始、量産:2020年度上期予定
4.製造拠点
メトグラス安来工場(島根県)
5.特許
基本特許取得済み
以上
【お客様からのお問い合わせ】
日立金属株式会社 機能部材事業本部 担当 長谷 TEL 03-6774-3422
【報道機関からのお問い合わせ】
日立金属株式会社 コミュニケーション部 担当 車谷 TEL 03-6774-3075
<補足説明>
■基本特性:
鉄心(コア)用材料 | 新製品 MaDC-A™ (2605MaDC) |
Metglas™ (2605HB1M) |
||
---|---|---|---|---|
公称板厚(µm) | 25 | 25 | ||
鉄損(W/kg) | 50 Hz | 1.4 T | 0.08 typ.*1 | 0.11 typ. |
1.3 T | 0.06 typ. | 0.08 typ. | ||
60 Hz | 1.4 T | 0.09 typ. | 0.13 typ. | |
1.3 T | 0.07 typ. | 0.10 typ. | ||
磁束密度(T) | 800 A/m*2 | 1.63 typ. | 1.63 typ. | |
80 A/m | 1.55min.*3 | 1.50 min. |
- *1表の値はアモルファス単板の代表値(typical)であり特性を保証するものではありません
- *2アンペア/メートル
- *3最小値(Minimum)
- ■用途:
- 配電用変圧器、モーターなど
- ■特長:
- (1)従来材Metglas™2605HB1M)対比約25%の低鉄損化
- (2)1.55 T(80 A/mの磁界印加時)を超える高磁束密度
<用語解説>
- ※1ヒステリシス損失と渦電流損失の総和
- ※2変電所から一般家庭等で使用する電圧に下げて配電する電気機器
- ※3鉄心に磁界を印加した時に生じる周波数に依存しないエネルギーの損失
- ※4電気の通し難さを示す値
- ※5鉄心に交流磁界を印加した時に発生する渦電流により生じるエネルギーの損失
- ※6鉄とケイ素からなる磁性材料
- ※7強磁性体の内部に存在する微小磁石の集まりで、その微小磁石が一方向に揃っている領域