研究

日立金属とフラウンホーファーIISBが
オンボードチャージャーの高電力密度化技術を開発

2019年4月16日
日立金属株式会社
Fraunhofer Institute for Integrated Systems and Device Technology IISB

日立金属株式会社(以下、日立金属)のグローバル技術革新センター(以下、GRIT※1)とFraunhofer Institute for Integrated Systems and Device Technology IISB(集積システム・デバイス技術研究所:以下、フラウンホーファーIISB)は、電気自動車(EV※2)やプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV※3)に搭載されるオンボードチャージャー(以下、OBC※4)の高電力密度化技術の開発に成功しました。試作したOBCは 電力密度3.8 kW/Lと世界最高レベル※5の高出力密度で動作することを確認しました。

1.背景

OBCは、交流電圧を直流電圧に変換し、EVやPHEVのバッテリーに充電するためのAC/DCコンバータです。OBCは、EVやPHEVのバッテリーに短時間で充電するために高出力であることが求められるとともに、車内を広く保つために小型であることも求められます。一方、OBCの高出力化と小型化はトレードオフの関係にあり、その両立が課題となっています。
こうした中、日立金属とフラウンホーファーIISBは、高出力化と小型化を両立したOBCを試作し、高電力密度化技術の開発に成功しました。

2.概要

写真:試作したOBC
写真:試作したOBC
単相3.6 kW(左)、三相11 kW(右)

このたび試作したOBCは、日立金属の軟磁性部材とフラウンホーファーIISBの回路技術を用いることで、高出力化と小型化を両立させたものです。具体的には、入出力のノイズフィルタ部にはナノ結晶合金ファインメット®「FT-3K50T」を用いたコモンモードチョークコイルを、整流・力率改善回路部にはアモルファスパウダーコア「HLM50」を用いたチョークコイルを、DC/DCコンバータ部には低損失ソフトフェライトコア「ML29D」を用いた共振インダクタ一体型絶縁トランスを採用しています。出力密度3.8 kW/Lと世界最高レベルの高電力密度を確認したことに加え、3台並列接続による3相入力11 kWでの正常動作も確認しています。さらに、複数台並列動作させることで単相および3相AC入力に対応でき、最大6台並列により22 kWの出力まで可能な設計となっています。
このようなフレキシビリティーを持たせることでOBCの設計時間とコストの大幅な削減も期待できます。

今回の共同研究開発の成果を受け、GRITの井上 謙一センター長は、「長年、課題とされていたOBCの高出力化と小型化の両立に光明が得られたことは非常に喜ばしい。また、日立金属が持つ特長ある軟磁性部材の優位性を示すものでもある。xEV※6の進化に向け、日立金属の軟磁性部材の新たな適用方法を提案していきたい。」と述べています。

また、フラウンホーファーIISBオートモーティブ・エレクトロニクス部門部長のベルント・エッカードは、「GRITの最新型の軟磁性部材を用いることで、モジュール化された超小型・高効率のOBCを実現することができた。今回開発された高集積メカトロニクス設計により、出力を簡単に3.6 kW から最大22 kWにまで上げることができる。」と述べています。

今後、本共同研究で得られたデータをお客様と共有し、実機への適用をめざします。
なお、4 月17 日(水)から19 日(金)まで幕張メッセで開催される「TECHNO-FRONTIER 2019」(日立金属ブース№:4E-19)と、5月7日(火)から9日(木)までExhibition Centre Nuremburgで開催される「PCIM Europe」(日立金属ブース№:7.306./フラウンホーファーIISBブース№:6.438.)にて、試作したOBCをご覧いただけます。

以上

【報道機関からのお問い合わせ】
日立金属株式会社 コミュニケーション部 担当 吉原 TEL 03-6774-3073

<補足説明>

■試作したOBCの仕様
寸法 200×100×40mm /台
スイッチング周波数 AC/DC部 110-130 kHz
DC/DC部 250-300 kHz
電圧 入力側:230 V(交流)
出力側:350-450 V(直流)
最大出力 3.6 kW (1台運転、単相入力時)
22 kW (6台並列接続運転、単相/3相入力時)

<注釈>

  1. ※1グローバル技術革新センター(Global Research & Innovative Technology center)の略称です。
  2. ※2Electric Vehicleの略です。
  3. ※3Plug-in Hybrid Electric Vehicleの略です。
  4. ※4On Board Chargerの略です。
  5. ※5車載充電器の電力密度としては世界最高。2019年4月16日時点。日立金属調べ。
  6. ※6電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車を指しています。
フラウンホーファーについて
フラウンホーファー研究機構はヨーロッパ最大の応用研究機関であり、ドイツ国内に点在する72の研究所および研究ユニットでは「社会に役立つ実用化のための研究」をテーマに、あらゆる科学技術分野において応用研究を行っています。フラウンホーファー日本代表部はフラウンホーファー研究機構の日本における窓口として、日系企業の皆様のニーズに応えるべく多彩なサービスを提供しています。
日立金属株式会社について
日立金属グループは、材料開発・材料技術をベースとした多角的事業構造を有する高機能材料メーカーです。最終製品における省エネルギー・環境性能向上が求められる中、基盤となる「素材」が担う役割は大きく、立脚する産業分野は多岐にわたります。自動車や産業インフラ、エレクトロニクス関連に加え、航空機・エネルギーや医療機器関連分野への事業展開も進めています。幅広い社会のニーズに対応できるこの事業構造は、日立金属グループの成長の原動力であり、その舞台はグローバル市場へと拡がっています。
私たちは「変革」と「挑戦」をキーワードに、社会のニーズやお客様の最終製品まで見たアイデア・発想、プロセスを革新させ、製品力を磨いてまいります。