鉄やチタン合金など融点の高い金属を接合できる摩擦攪拌接合用ツールを製品化
2013年4月2日
株式会社日立メタルプレシジョン
株式会社日立メタルプレシジョン(社長:大坪靖彦/以下HMP)は、日立製作所(社長:中西宏明/以下、日立製作所)および国立大学法人東北大学(総長:里見進/以下、東北大)と共同で、従来の金属製摩擦攪拌接合用ツールでは接合が難しかった金属の接合を可能にする金属製摩擦攪拌接合用ツール(以下、新FSW※1ツール)のロストワックス法※2による量産技術を確立いたしました。HMPでは今秋より販売を開始し、自動車、航空機分野をはじめ各分野に積極的に展開してまいります。
1.背景
摩擦攪拌接合は、回転するツールを接合する材料の間に挿入し、接合部に沿ってツールを回転移動させることで接合する方法です。接合する材料と回転するツールの間で発生する摩擦熱で接合材料を軟化させると同時に、ツールの回転により材料を混ぜ合わせることで接合します。この接合方法は、接合後の変形が小さく、接合欠陥も少ないため、製品の高品質化と低コスト化を実現でき、さらに粉塵を発生しないメリットもあります。1997年に日立製作所が、アルミニウム製鉄道車両の製造において、世界で初めて実用化しました。
しかし、従来の金属製摩擦攪拌接合用ツールは、融点が高く接合の難しい鉄やチタン合金、ジルコニウム合金に適用するためには、ツールが摩擦熱などの影響で損傷してしまうなどの課題がありました。
そこで、東北大と日立製作所は、2006年に東北大工学研究科金属フロンティア工学専攻石田研究室が発見した「高温でも高強度となる特性を有する金属間化合物※3(Co3(Al,W))を分散したCo基合金(合金名称:MAST(マスト)®)」を用いた新FSWツールの開発に取り組み、2010年に開発に成功しました。
2.内容
HMPは、ロストワックス法による精密鋳造品を、高度に制御された自動化ラインを用いて、金型製作から出荷まで、一貫した生産を行っています。特に苛酷な条件で使用される自動車用ターボチャージャー用タービンホイールで高い評価を得ており、欧州車を筆頭に世界の高性能車でタービンホイールが採用されております。そのロストワックス法を用いて、新FSWツールの量産技術を確立いたしました。
従来のツールでは、工業的に接合の難しかった融点の高い鉄やチタン合金、ジルコニウム合金などの接合も可能であることから、自動車、航空機をはじめ、電力プラントや化学プラントなどの需要が期待できます。HMPでは、新FSWツールを次の主要製品の一つとして各分野に積極的に展開し、2015年に10億円/年以上の販売を目指します。
3.新FSWツールについて
- 主要材質
- 金属間化合物(Co3(Al,W))を分散したCo基合金(合金名称:MAST(マスト)®)
- 用途
- 炭素鋼、高張力鋼、チタン合金(Ti-6Al-4Vなど)、純Ti、銅合金の接合
(自動車、航空機をはじめ、電力プラントや化学プラントなど)
- 設備
- 100トン/月 コア容量により異なる。
- 販売目標
- 2015年度 10億円/年以上


■ 照会先
株式会社日立メタルプレシジョン 営業本部 [担当:岡林、宇山]
〒105-8614 東京都港区芝浦一丁目2番1号
電話 03-5765-4490 (直通)
■ 報道関係お問い合わせ先
日立金属株式会社 コミュニケーション室 [担当:南]
〒105-8614 東京都港区芝浦1丁目2番1号
電話 03-5765-4079(直通)
以上
ご参考
【用語解説】
- ※1FSW
Friction Stir Weldingの略称 - ※2ロストワックス法
成型性の良いワックスで作製した模型に耐火物粉末等を吹き付けて乾燥させた後、ワックスを溶かして鋳型を作製する鋳造法であり、ターボチャージャやガスタービン翼の製造に用いられています。大量生産に適しており、複雑形状の部品をニアネットで成形できることが特徴です。摩擦撹拌接合ツールの先端は複雑な形状となりますが、HMPで製造される本プロセスでは、先端部の機械加工を大幅に低減可能です。 - ※3金属間化合物
2種類以上の金属によって構成される化合物。Co3(Al,W)は、コバルト、アルミニウム、タングステンの化合物。
【株式会社日立メタルプレシジョン会社概要】
(1)設立 | 2005年4月1日 |
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(2)本社 | 東京都港区芝浦一丁目2番1号(シーバンスN館) |
(3)代表者 | 代表取締役社長 大坪 靖彦 |
(4)資本金 | 3億10万円(日立金属100%出資) |
(5)従業員数 | 約500名 |
(6)拠点数 | 営業所3ヶ所、生産工場2ヶ所 |
(7)事業内容 | 自動車・航空機・原子力・建材・電子機器用等 精密鋳造品および金属粉末射出成型品の製造販売 精密機器部品および装置製品の製造販売 |