長寿命トロリ線 京王線に導入
2025年5月15日
株式会社プロテリアル
株式会社プロテリアル(以下、プロテリアル)の長寿命トロリ線(鉄道車両に電力を供給する電線)が、この度、私鉄としては初めて、京王電鉄株式会社の京王線に導入されました。本製品は、純銅のトロリ線と比べ、長寿命化を図るとともに管理・メンテナンス性が向上しています。今後、導入エリアが拡大されることで、京王線の人件費、整備費のコストダウンおよびメンテナンスの効率化への貢献が期待されています。
1.背景
トロリ線は、線路上に架設されており、鉄道車両に搭載されたパンタグラフを経由して電気を供給する重要な役割を持ちます。現在、京王線をはじめ私鉄各線のトロリ線は、導電率を高めることを優先し純銅のトロリ線が主に採用されています。しかし、近年、銅価格の上昇に加え、メンテナンスコストの上昇が課題となっており、その対応が求められていました。
2.概要

トロリ線は、引張強度を高めることで張替基準直径を小さくすることができ、耐摩耗性を高めることで張替基準直径に至る時間を長くすることができるため、長寿命化が可能になります。プロテリアルは、高純度銅をベースに錫とインジウムを添加することで、純銅トロリ線に比べて引張荷重を20%以上向上し、かつ、耐摩耗性を高めた高強度合金のトロリ線(SNNトロリ線、第71回大河内記念技術賞受賞)を開発しました。また開発したトロリ線には、保守管理の効率化を図るため、トロリ線側面の摩耗限度位置に摩耗溝※を入れました。これにより摩耗の進行度合いを簡単に視認することが可能となり、保守管理の効率化が期待できます。
プロテリアルは、SNNトロリ線に摩耗溝を入れたトロリ線(GT-SNNSK110)を、長寿命化および張替周期の延伸が期待できるだけではなく、保守管理の効率化も図れるトロリ線として、鉄道各社への提案を行ってきました。
その結果、この度、トロリ線(GT-SNNSK110)が、私鉄としては初めて京王線に導入されることになりました。今後、導入エリアが拡大されることで、京王線の人件費、整備費のコストダウンおよびメンテナンスの効率化に貢献します。
- ※摩耗はトロリ線の下部から進行し、溝までの残存距離で摩耗進捗度を把握できる仕組み。カーブ区間などでは、斜めに摩耗が進行するため、左右いずれの摩耗が進行しているかを視認できるよう、摩耗溝は両端に設けている。
公称断面積 (mm2) |
記号 | 引張荷重 (kN) |
伸び (%) |
導電率 (%) |
|
---|---|---|---|---|---|
新型トロリ線 | 110 | GT-SNNSK | 47.3以上 | 2.8以上 | 80.0以上 |
純銅トロリ線 | 110 | GT | 38.25以上 | 3.0以上 | 97.5以上 |
3.導入路線
2024年8月21~29日に、以下の路線の一部区間に導入しました。
線区: | 京王線 |
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区間: | 調布~西調布 |
千歳烏山~仙川 |

4.京王電鉄における効果
- 1コストダウン
既存の純銅トロリ線に比べ張替周期の延伸を実現し、特に摩耗が激しく張替周期が短い箇所で人件費・整備費におけるコストダウンが期待できます。 - 2メンテナンス効率化
摩耗溝を活用し、トロリ線の摩耗を容易に把握できるようにすることで、メンテナンスを効率化します。
5.京王電鉄コメント
京王電鉄としましては、現在、技術系職場において、生産年齢人口減少・少子高齢化による採用難、転職市場の活況などによる離職の増加といった人財難に加え、鉄道特有の夜間での作業を敬遠する志向が高まっています。
このような背景から、保守業務の負担軽減とメンテナンスコストの低減を目的に、私鉄では初めて、高強度合金トロリ線GT-SNNSK110を導入することといたしました。
今後も、人財課題を積極的に解決していくため、これに資する最新技術の導入に取り組んで参ります。
以上
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