脱炭素社会の実現に向けて電気自動車（以下、EV）の需要が高まっており、EVに不可欠な重要部材であるLIBの市場も注目を集めています。しかし、その製造過程における環境負荷は大きく、EV製造全体のCO₂排出量の50％以上を占めています。特にLIBの製造過程の中でも正極材とその出発原料^※1に由来するCO₂排出量比率が高く（図1）、大きな課題となっていました。また、正極材の製造過程で硫酸系廃棄物（Na₂SO₄）が排出され、その処理のために多くの水が必要となる課題もありました。

　プロテリアルでは、電池業界の直面するこれらの環境課題を解決する正極材製造技術としてCALISMAT^®を開発し、2023年5月に発表しました（図2, 3）。プロテリアルは、この技術を脱炭素ソリューションとして電池業界に提供することで、LIBの環境価値向上に貢献することをめざしています。この取り組みをさらに推進するために、この度、自動車業界における世界的なエンジニアリングプロバイダーであるFEVの協力を得て、CALISMAT^®の環境価値を定量的に評価しました。

　プロテリアルは、粉末冶金技術による固相反応法^※3を用いることで、前駆体を製造しないLIB用正極材製造技術CALISMAT^®を開発しました（図3）。CALISMAT^®適用により金属ニッケル（Ni）や酸化ニッケル（NiO）など、硫酸ニッケル（NiSO₄）以外の出発原料を選択できること、硫酸ナトリウム（Na₂SO₄）などの廃棄物処理が不要となるなどのメリットがあります。

　FEVが、これまで欧米を中心とする自動車および電池メーカーにエンジニアリングサービスを提供する中で蓄積してきた知見に基づき、一般的な製法である共沈法とCALISMAT^®について環境価値やコスト削減効果を試算しました。その結果、以下の試算結果が得られ、環境負荷低減効果を検証できました。

　今回の検証結果は、2025年3月31日から4月4日までドイツで開催されるHannover Messe（ハノーバーメッセ） 2025（会場：Messegelände Hannover (ハノーバー国際見本市会場)）にて展示します。