EV車載非接触充電システム用磁気シートおよび磁気シートパネルMS-HiQシリーズを開発
2024年8月29日
株式会社プロテリアル
株式会社プロテリアル(以下、プロテリアル)は、EV車載非接触充電システム用にナノ結晶軟磁性材料ファインメットⓇを素材とする磁気シートおよび磁気シートパネルMS-HiQシリーズ※1を開発しました。今後、電気自動車(以下、EV)向けに普及が期待される車載非接触充電システムの高効率化、小型軽量化に貢献します。

1.背景
非接触充電は電源コード不要で充電できる利点を生かし、ペースメーカーなどの医療機器で使用が始まり、スマートフォンに採用されてからは急激に普及しています。最近では、EVに給電を行う技術として注目が集まっており、2020年には駐車中の利用を想定した車載非接触充電システムの規格SAE J2954が発行されるなど、実用化に向けた検討が本格化しています。しかしながら、非接触充電システムは、有線の充電システムに比べて効率が低いことが課題の一つとなっています。

非接触充電システムの効率を向上させるためには、損失係数の逆数となる品質係数Q(Qが高いほど損失が小さく高効率となる)が高いコイル構成にする必要があります。これにはシールド※2およびバックヨーク※3としての機能を持つ磁気シートをコイル背面(非接触充電部の裏側)に配置すること(図1参照)が有効です。携帯電話では薄くても高Qを示す磁気シートが求められており、優れた特性を持つ当社のファインメットⓇが大きなシェアを保有しています。一方、携帯電話向けの非接触充電システムの電力容量が20W以内であるのに対し、EV向けは3~11kWと非常に大きくなるため、磁気シートとしてフェライト(磁性セラミックス)を使用することでサイズを大きくし、厚みも増やす開発が主流となっています。
そこで、プロテリアルは、車載用途においてもファインメットⓇの特長を生かせると考え、EV車載非接触充電システム用磁気シートの開発に着手しました。
2.概要

プロテリアルは、非接触充電システムの高Q化に関して、今回、下記の2つの独自技術を開発しました。
- 1磁気シートを構成する材料であるファインメットリボン※4の熱処理時に、リボン長手方向に張力をかけながら異方性を持たせる透磁率制御を行います。そのリボンを使用して形成した磁気シートを適用することで非接触充電システムのQ値を改善できます。
- 2上記(1)の技術により形成した磁気シートMS-HiQを切断し、リボンの長手方向と磁力線の流れる方向が一致するように放射状に配置した磁気シートパネルを形成する(図2参照)ことで、これを適用した非接触充電システムを高Q化できます。
非接触充電システムのコイル背面にフェライトを配置する場合と比較して、MS-HiQを放射状に4つ配置した磁気シートパネル(図2(a)参照)で約1/2の厚さ、8つを配置した磁気シートパネル(図2(b)参照)では約1/3の厚さでほぼ同等のQを得られ、大幅な薄肉軽量化が実現できることを確認※5しました。
今回開発した磁気シートおよび磁気シートパネルMS-HiQシリーズが、EV車載非接触充電システムに採用されることで高効率・小型軽量化に貢献し、非接触充電システムやEVそのもののさらなる普及が期待されます。
以上
- ※1シリーズ:さまざまな用途に適用できるようにリボン層数、外形寸法、両面テープなどの仕様が選択可能。
- ※2シールド:電磁ノイズが入ってくることを防ぐことで、磁界、磁束への悪影響を防ぐ機能。
- ※3バックヨーク:磁界、磁束の発散を防止する機能。
- ※4リボン:箔。1枚からなる厚さが薄く幅が広いものを意味する。
- ※5当社試験値。試験条件:FMシート60x60mm、コイル (Ls=3.5μH, Rs=28mΩ@85kHz/10mA, Φ50mm)
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ファインメット、FINEMETは、株式会社プロテリアルの登録商標です。