日刀保たたら村下の木原 明 氏のご逝去にあたり
2024年6月28日
株式会社プロテリアル
公益財団法人日本美術刀剣保存協会 日刀保たたらで村下(むらげ、たたら操業の長)を務めた木原 明(きはら あきら)氏(満88歳)(元 株式会社プロテリアル 安来工場)が、6月22日にご逝去されました。心より哀悼の意を表します。
「たたら」とは、砂鉄と木炭を材料とした日本古来の製鉄法です。「たたら」操業による生産品を「玉鋼(たまはがね)」と呼び、日本刀の材料として欠くことのできないものです。また「たたら」は、ヤスキハガネ®を生産するプロテリアル安来工場の源流でもあります。
木原 明 氏は、戦後途絶えていた「たたら」を1977年に日刀保たたらとして復活するために大きく貢献されました。その後継続して日刀保たたらで操業に携わり、1986年に選定保存技術保持者に認定されました。1988年から現在までは、たたら操業の長である村下(むらげ)としてご活躍されるとともに、村下養成員の教育にも邁進され、後世に残す礎を築かれました。また、たたら体験操業などの教育活動による日本の鉄づくりの文化の継承にも積極的に取り組まれました。
たたら操業に携わる以前は、1954年に株式会社日立製作所安来工場(現 株式会社プロテリアル 安来工場)に入社され、たたら製鉄を応用して連続操業を可能にした角炉において、砂鉄からヤスキハガネを効率的に生産する研究などに取り組まれました。
入社から70年にわたり砂鉄からの鋼づくりに取り組まれた木原 明氏は、弊社や鉄鋼業界だけに留まらず、モノづくりの発展に大きく貢献されました。
木原 明氏は、弊社安来工場の工場訓「誠実生美鋼(誠実は美鋼を生む)」を体現し、その精神を若い社員にも伝承され、常に私たちを導く存在でした。生前の偉大なる功績に対し深く敬意と感謝を申し上げるとともに、心よりご冥福をお祈りいたします。


主な役職
- 選定保存技術保持者 玉鋼製造(たたら吹き)
- 公益財団法人日本美術刀剣保存協会 日刀保たたら 村下職
- 国立大学法人愛媛大学 東アジア古代鉄文化研究センター 客員教授
- 国立大学法人島根大学 嘱託講師
- 奥出雲町文化財専門委員
- 奥出雲たたらと刀剣館 名誉館長
- 和鋼博物館 名誉顧問
- 株式会社プロテリアル 鳥上木炭銑工場 顧問
略歴
1935年(昭和10年10月) | 山口県生まれ |
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1954年(昭和29年 4月) | 株式会社日立製作所 安来工場 入社 |
1956年(昭和31年10月) | 砂鉄精錬研究、砂鉄採取と角型溶鉱炉木炭銑製造 |
1977年(昭和52年11月) | 日刀保たたら復活 |
1986年(昭和61年 4月) | 文部大臣より 選定保存技術保持者に認定 |
1988年(昭和63年) | 財団法人日本美術刀剣保存協会日刀保たたら村下に就任 |
1992年(平成4年5月) | 通商産業大臣より砂鉄採取保安技術の向上により受賞 |
1994年(平成6年10月) | 財団法人ポーラ伝統文化振興財団より大賞を受賞 |
2004年(平成16年11月) | 厚生労働大臣より卓越技能者(現代の名工)表彰を受賞 |
2006年(平成18年11月) | 叙勲「旭日双光章」を受章 |
2010年(平成22年5月) | 奥出雲町名誉町民の称号授与 |
2023年(令和5年11月) | 読売あをによし賞 「保存・修復」 部門を受賞 |
以上
- ※日刀保たたらは公益財団法人日本美術刀剣保存協会の主管事業です。
- ※ヤスキハガネは、株式会社プロテリアルの登録商標です。