製品

高硬度高耐食刃物用鋼を開発

2024年4月15日
株式会社プロテリアル

 株式会社プロテリアル(以下、プロテリアル)は、高い硬度と耐食性を兼備する高硬度高耐食刃物用鋼 YBSTM1、YBSTM2を開発しました。切れ味と錆びにくさが同時に要求される医療用メス、カミソリ用替刃、調理用刃物、アウトドアナイフなど幅広い用途が期待できます。

1.背景

 切れ味に優れ、度重なる使用でも切れ味が落ちず、かつ錆びにくいといったメンテナンス性に優れる刃物へのニーズは時代を問わず不変のものです。刃物の切れ味は、主に硬さ、刃角度、表面粗さなどで決まるとされており、錆びにくさ、すなわち耐食性は主にクロムなどの合金元素量に依存します。一般的な刃物用鋼は、SK材や青紙®2号に代表される高炭素鋼と、SUS420J2やGIN®3に代表される合金元素を多く含むマルテンサイト系ステンレス鋼に大別され、用途に応じて適切な硬さと耐久性を得るための鋼材が選ばれてきました。
 しかし、高炭素鋼は、焼入・焼戻しにより、800HV※1を超える高い硬さを示すものの、耐食性は著しく低いという課題がありました。一方、マルテンサイト系ステンレス鋼は、高炭素鋼に比べて高い耐食性を示すものの、硬さが低いという課題がありました。このため、従来の刃物用鋼では硬さと耐食性を高い次元で両立することは困難でした。
 そこで、プロテリアルは、これらの特性を兼備する高硬度高耐食刃物用鋼を開発することにいたしました。

2.概要

 プロテリアルは、強みである金属を中心とした組織・組成制御技術を駆使することで、硬さと耐食性を兼備する高硬度高耐食刃物用鋼 YBS1、YBS2※2を開発することに成功しました。
 YBS1、YBS2ともに適切な焼き入れを行うことで、プロ用高級包丁の材料として使用される高炭素鋼の青紙2号に匹敵する非常に高い硬さが得られました※3。また、塩水噴霧試験において、YBS1はマルテンサイト系ステンレス鋼SUS420J2に相当する高い耐食性を示し、YBS2は耐食性が若干落ちるものの切れ味を重視した包丁に向くマルテンサイト系ステンレス鋼GIN3同等の耐食性を示しました※3
 これらの結果により高い硬度と耐食性を兼備するYBS1、YBS2は、切れ味と錆びにくさが同時に要求される医療用メスやカミソリ用替刃、調理用刃物、アウトドアナイフ等への幅広い用途が期待できます。

以上

写真:高硬度高耐食刃物用鋼の用途例
  1. ※1HV:ビッカース硬さ。硬さを示す尺度として一般的に使用される。
  2. ※2YBS1、YBS2:両鋼種の違いは、耐食性(錆びにくさ)と硬さ(切れ味)が異なることです。YBS1は耐食性を重視したスペック、YBS2は硬さを重視したスペックとなります。
  3. ※3試験結果詳細については、プロテリアル技報 Vol.39 (2024) P.55をご参照ください。

【報道機関からのお問い合わせ】
コミュニケーション部 担当 南 TEL 090-1043-4934

  • 青紙,GIN,YBSは、株式会社プロテリアルの登録商標または商標です。