製品

高耐熱磁気シールドシート「MS-FH」を開発
~高温環境下で電子機器の小型・軽量化に貢献~

2024年2月26日
株式会社プロテリアル

株式会社プロテリアル(以下 プロテリアル)は、ナノ結晶軟磁性材料ファインメット(以下、ファインメット)を使用した磁気シールドシート「MS-F」の耐熱性を向上させた新しい高耐熱磁気シールドシート「MS-FH」を開発しました。「MS-FH」は、従来品に比べ50℃高い130℃まで耐熱性を高めたことに加え、シート厚みを従来比約40%に薄型化しており、電子機器の小型、軽量化に貢献します。

1.背景

 ファインメットを使用した磁気シールドシート「MS-F」は、高い透磁率※1、飽和磁束密度※2といった優れた磁気特性や、薄型、軽量、フレキシブルな取扱い性、また切断、打ち抜き等が容易な加工性を兼ね備えており、携帯電話、パソコン、カメラ等の電子機器やX線診断装置等の医療機器、地磁気等の外部磁界を低減するシールドルームなど幅広い分野のノイズ対策で使用されてきました。近年ではxEV※3の車載電子機器のノイズ対策用途でも使用される機会が増えていますが、「MS-F」は使用可能温度が80℃以下であり、車載における高温環境下では保護フィルムや接着剤が劣化して磁気特性にも影響を与えるという課題があり、高耐熱化が求められていました。

2.概要

 プロテリアルは「MS-F」の保護フィルム、接着剤材料、および製造条件の再検討を行うことにより、新たに耐熱性130℃の磁気シールドシート「MS-FH」を開発しました。
 磁気シールドシートは、ファインメットと保護フィルムをラミネート成形で一体化した構造をしています(図参照)。従来の「MS-F」における耐熱性の問題は、主に高温下で接着剤が再溶融することによる保護フィルムの剥がれや、耐熱性の低さによる保護フィルムの収縮が原因でファインメットに割れ、脱落等が発生し、磁気特性が劣化することに起因していました。「MS-FH」では、保護フィルム、接着剤材料、および製造条件の再検討を行うことにより、これらの課題を改善して耐熱性を向上させました。

 保護フィルムの改善に当たっては、高温時の保護フィルムの劣化の有無のみではなく保護フィルムの物性値も考慮し、ファインメットの磁気特性に悪影響を与えない材料を選定しました。また、製造条件の再検討では、ファインメットの特性に影響を与える可能性がある製造工程、特に加熱により熱膨張、熱収縮が発生するラミネート工程条件を見直すことにより、磁気シールドシートの高耐熱化を達成しました。
 「MS-FH」は130℃での1000時間の高温放置試験でも保護フィルム、接着剤の劣化は見られず、磁気特性にも大きな変化が起きない優れた耐熱性を有しており、従来の磁気シールドシート「MS-F」では使用できない高温下でのノイズ対策用途にも使用可能となりました。また、保護フィルムの樹脂材料、接着剤には難燃性の高いUL94 VTM-0※4認定樹脂を使用しています。
 さらに、「MS-FH」は、従来品と比較して保護フィルム、接着剤を薄型化することで、厚み0.05mmとし、従来品の0.13mmと比較して約40%に薄型化、軽量化を実現しました。この際、保護フィルム、接着剤の薄型化により発生する製造上の諸問題を工程条件の見直しにより改善し、保護機能の低下についても信頼性試験により検証し、問題が無いことを確認しました。

 今回開発した「MS-FH」は、従来品に比べ50℃高い130℃まで耐熱性を高めたことに加え、シート厚みを40%に薄型化したことにより、車載用途など高温環境での使用が可能になると共に、従来では難しかった狭スペースや今後多様化が見込まれるニーズでの使用も可能となり、電子機器等の小型化、軽量化に貢献します。

写真.高耐熱磁気シールドシートMS-FH
図.高耐熱磁気シールドシートMS-FHの断面構造模式図
新製品と従来製品の特性比較
Type MS-FH(新製品) MS-F(従来品)
飽和磁束密度 B800
(DC H=800A/m)
≧1.1T
最大透磁率 μmax
(DC)
≧70,000
厚み 0.05mm 0.13mm
使用温度範囲 -40~+130℃ -40~+80℃

3.生産状況

 サンプル供給:2023年12月開始済、量産2024年12月開始予定

4.特許

 特許出願中

  1. ※1透磁率:磁気の通りやすさを表す値
  2. ※2飽和磁束密度:単位面積あたりの磁気の流れを磁束といい、磁石の強さを表す。磁性体に外部の磁場を加えると磁束密度が増加するが、これ以上は増加しない限界となる磁束密度があり、値が高いほど強い磁石となる
  3. ※3xEV、電動車(Electric Vehicle)の総称。BEV(Battery Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、PHEV/PHV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle/Plug-in Hybrid Vehicle)、FCEV/FCV(Fuel Cell Electric Vehicle/Fuel Cell Vehicle)等を含む。
  4. ※4UL94 VTM-0:Underwriters Laboratories Inc.(UL)が策定する材料の難燃性を認定する規格UL94で最も厳しい基準

ファインメットは株式会社プロテリアルの登録商標です。

以上