研究

マテリアルズ・インフォマティクスのプラットフォーム「D2Materi™」を
電線被覆材開発に適用

2023年11月30日
株式会社プロテリアル

 株式会社プロテリアル(以下、プロテリアル)は、当社独自のマテリアルズ・インフォマティクス(以下MI)のプラットフォーム「D2Materi」(ディーツーマテリ 以下、D2Materi)を、電線被覆材の素材開発に適用することに成功しました。また、実際の鉄道車両用電線被覆材の開発においてD2Materiを使用し、被覆材の配合の開発速度を大きく改善できることを確認しました。

1.背景

 MIは、統計分析や機械学習といったインフォマティクス(情報科学)の手法を取り入れることにより、材料開発の高効率化をめざす技術です。MIを活用することで最適な材料の組み合わせが、高精度で予測可能になることが期待できます。プロテリアルが開発したマテリアルズ・インフォマティクスのプラットフォーム「D2Materi」は、これまでプロテリアルが蓄積してきた組織・組成制御技術、学術的知見をベースにして性能と組成・プロセスなどの相関関係や法則、特徴を抽出して設計を行うことができます。

 当社の主要製品の一つである電線は、被覆材の特性が性能を決める大きな要素になっています。高い絶縁性がありながらも薄く、しなやかで耐久性に優れるなどの特性は、様々なポリマー*1や充てん剤*2の組み合わせによって発現させます。しかし、従来は膨大な組み合わせを試行錯誤して、数多くの試験を経て開発を行っていました。そこで開発の効率化を図るために、有機物であるポリマーと無機物である充てん剤をいくつも組み合わせた複雑な条件をD2Materiで取り扱えるようにして、高い信頼性が要求される鉄道車両用電線被覆材の開発に適用することにしました。

2.概要

(1)電線被覆材へのD2Materiの適用

伸び特性の予測と実測値
伸び特性の予測と実測値
実際の物性との誤差率が10%程度であることを示している。界面強度に相当するパラメータを加えることで予測誤差率の平均値は10.1%から8.9%に改善することを確認できた。

 このたび、プロテリアルは、電線被覆材開発においてD2Materiを適用することで、目標とする特性を実現するためのポリマーや充てん剤の配合を高精度で予測することを可能としました。

電線被覆材へのD2Materiの適用にあたっては、各種ポリマーや充てん剤の重量を説明変数*3、要求される特性を目的変数*4とするとともに、ポリマーと充てん剤の界面強度*5に相当するパラメータ等、材料の特性に影響を与えることが予測されていたデータを加えることで独自の物性予測モデルを構築しました。このモデルを利用して予測した物性は、実際の物性との誤差率が10%程度となり、高精度の予測が可能であることが分かりました。

(2)D2Materiを使用した鉄道車両用電線被覆材の開発

 実際の鉄道車両用電線被覆材の開発において、各種のポリマー、充てん剤を網羅的に組み合わせた検討配合をD2Materiに投入し、各種物性の予測値を求めました。予測特性が優れていた配合を20種抽出した上で試作を行い、検証実験を実施したところ、良好な特性が得られることを確認しました。これにより、従来、最適な配合を得られるまでには1年程度を要していましたが、D2Materiを使用した開発では3か月弱で完了しており、配合の開発速度を大きく改善できました。

 今後、プロテリアルは、電線被覆材以外の先端材料にもD2Materiを適用することで開発を加速し、低燃費・省エネルギー化、脱炭素といった社会課題の解決に貢献してまいります。

なお、本内容は、2023年11月30日~12月1日に名古屋国際会議場で開催される、公益社団法人高分子学会主催の「第32回ポリマー材料フォーラム」で発表する予定です。

以上

【報道機関からのお問い合わせ】
コミュニケーション部 担当 工藤 TEL 080-5971-1116

D2Materiは、株式会社プロテリアルの商標です。

  1. ※1ポリマー:いくつもの単量体(モノマー)が結合してできた高分子化合物
  2. ※2充てん剤:物性を高めるなどの目的で樹脂に添加する材料
  3. ※3説明変数:求めたい数値に対して影響を与えるデータ
  4. ※4目的変数:予測したい対象となるデータ
  5. ※5界面強度:異種材料を複合化した際の材料間の界面の強度