研究

高滑性シリコーンシースとその応用製品が
令和5年度 関東地方発明表彰「文部科学大臣賞」を受賞

2023年11月15日
株式会社プロテリアル

 株式会社プロテリアル(以下 プロテリアル)の「高滑性シリコーンシースとその応用製品」(発明者 樫村 誠一、岸 雅通、渡部 考信、工藤 紀美香、荒井 才志)が、公益社団法人 発明協会主催の関東地方発明表彰において、「文部科学大臣賞」を受賞しました。表彰式は、11月29日(水)にホテルアソシア静岡にて行われる予定です。

1.名称

 高滑性シリコーンシースとその応用製品(特許第6699782号)

2.受賞

 「文部科学大臣賞」

株式会社プロテリアル
電線事業部 電線研究所 材料プロセス研究部
樫村 誠一
電線事業部 電線研究所 材料プロセス研究部
岸 雅通
電線事業部 電線第一技術部
渡部 考信
電線事業部 電線第一技術部
工藤 紀美香
研究開発本部 知的財産部
荒井 才志

3.概要

(1)背景

高滑性シリコーンシースの応用製品(医療用シリコーンケーブル「SilMED®」)
高滑性シリコーンシースの応用製品
(医療用シリコーンケーブル「SilMED®」)

 昨今、医療現場において、医療機器やそのケーブルは、院内感染対策のために使用ごとに頻繁な消毒が求められています。このため、使用されるケーブルの保護外層(シース)材料に、耐薬品性や耐滅菌性、生体適合性に優れたシリコーンを使用した医療用ケーブルの採用が広がる見込みです。しかしながら、シリコーン材質のシースは、表面の粘着性によりほこりが付着して汚れやすい、取り扱い性が悪い、患者の肌に触れた時に不快感があるという課題がありました。そこで、このシースに縮合反応型材料※1を用いて表面に凹凸を有する被膜を形成することで、シリコーン特有の粘着性を解消する取り組みを実践しました。しかし、この方法では被膜材料の硬化によって被膜が形成される際にガスが発生し、このガスにより被膜中に空隙が生じて、被膜とシースの密着強度や表面を繰り返し拭き取った際の滑り性(拭き取り耐性)が低下するという新たな課題が発生しました。

(2)発明内容

 本発明では、付加反応型材料※2のガスの発生しにくさに着眼し、被膜材料が硬化する際に発生するガスを抑制する独自の表面処理により、空隙のないシリコーンゴム被膜を形成しました(図1参照)。これにより、課題であった密着強度や拭き取り耐性の低下を防ぎ、高い滑り性に加えて耐薬品性を兼ね備えた高滑性シリコーンシースを実現しました(表参照)。この高滑性シリコーンシースは、消毒薬を含浸させた不織布による1万回の拭き取り試験を行った後でも滑り性を維持(図2参照)し、かつ、病院で使用されるさまざまな医療機器用消毒薬に対しても、ほぼ変色がないことを確認しております。

 現在国内外の医療機関において、超音波診断装置、内視鏡、カテーテルなど、頻繫に消毒・滅菌が必要な医療機器への採用が進んでおり、今後も広範な展開が期待されています。

図1 従来の被膜と本発明の被膜
図1 従来の被膜と本発明の被膜
図2 拭き取り回数と静止摩擦係数
図2 拭き取り回数と静止摩擦係数

表.特性

滑り性 静止摩擦係数:0.20以下※6
拭き取り耐性※3(消毒薬含浸不織布※4 静止摩擦係数:0.22以下(1万回拭き取り後)※3
耐薬品性※5 ほぼ変色無し(色差⊿E*ab<2.5※6
生体適合性 細胞毒性なし※6(ISO10993-5)

(3)特許

 国内4件ほか、アメリカ、欧州、中国、韓国の海外で計14件を取得。

以上

【報道機関からのお問い合わせ】
コミュニケーション部 担当 車谷 TEL 080-2108-0159

SilMEDは株式会社プロテリアルの登録商標です。

  1. ※1複数の化合物が結合して、主生成物と、化合物の一部が分離してできた副生成物を形成する材料。シリコーンの場合、硬化時に副生成物として少量のガスを発生する。また、硬化により体積収縮が起こる。
  2. ※2複数の化合物が結合して、主生成物のみを形成する材料。シリコーンの場合、硬化時に副生成物の発生が無く、体積収縮もほとんど生じない。
  3. ※3拭き取り不織布や医療機器用消毒薬の種類、拭き取り方法によっては、滑り性が低下することがある。
  4. ※4消毒用エタノール含浸不織布、Sani-Cloth® HB、ソフライトなど
    (Sani-ClothはPDI, Inc、ソフライトは旭化成アドバンス株式会社の登録商標または商標です)
  5. ※5消毒用エタノール、その他多数の医療機器用消毒薬。
  6. ※6保証値ではなく、試験値となる。