研究

絶縁信頼性の高い窒化ケイ素基板・回路基板が
令和5年度中国地方発明表彰「鳥取県知事賞」を受賞

2023年10月3日
株式会社プロテリアル

 株式会社プロテリアル(以下、プロテリアル)と株式会社プロテリアルフェライト電子(以下、プロテリアルフェライト電子)の「絶縁信頼性の高い窒化ケイ素基板・回路基板」(発明者 今村 寿之、藤田 卓、加賀 洋一郎、手島 博幸、濱吉 繁幸)が、公益社団法人 発明協会主催の中国地方発明表彰において「鳥取県知事賞」を受賞いたしました。表彰式は、10月17日(火)にホテルグランヴィア岡山にて行われる予定です。

1.名称

 回路基板および窒化ケイ素焼結基板の製造方法(特許第6399252号)

2.受賞

 「鳥取県知事賞」

株式会社プロテリアル
今村 寿之
株式会社プロテリアルフェライト電子
藤田 卓
株式会社プロテリアルフェライト電子
加賀 洋一郎
株式会社プロテリアルフェライト電子
手島 博幸
株式会社プロテリアル
濱吉 繁幸

3.発明概要

 モーターの制御部材として電力の変換と制御を高効率で行うパワーモジュールなど大電力を扱う制御回路の用途が拡大していることに伴い、それらの実装*1に用いる絶縁基板には、絶縁性に加えて半導体で発生した熱を効率よく放熱する高い熱伝導性や、温度サイクルにより発生する応力に耐えられる強度が要求されます。従来、一般に使用されていたアルミナ*2や窒化アルミニウムに代わって、近年は、強度、靭性が高い窒化ケイ素基板の採用が進んでいます(図1)。特に、最近では、自動車の電動化により、窒化ケイ素基板の需要が急激に増加しています。

 窒化ケイ素基板の急激な需要の増加に対応するために、生産性の向上が求められます。そのため、製造工程*3において、窒化ケイ素基板の原料シートを積層し、また基板を大型化することにより、一度に焼結できる量を増やす必要がありました。しかし、原料シートが収縮する一方で剥離用の窒化ホウ素粉末層は収縮しないこと(図2)により、焼結時に基板の中央部と端部とで物性(密度とボイド(空孔)率)の均一さが低下する問題や、絶縁信頼性を低下させるボイドが発生しやすくなる問題がありました。

 そこで、上記問題を解決するために本発明では、窒化ホウ素粉末層の厚さの制御および原料シートからの炭素の除去が重要であることに着目しました。その結果、大型(1辺120mm以上)の基板において、物性の均一さを向上*4するとともに、ボイドの発生を抑制*5することを可能にしました。本発明により、生産性が高く、絶縁信頼性が高い窒化ケイ素基板を実現しました。

 プロテリアルとプロテリアルフェライト電子は、今回の発明内容を適用した窒化ケイ素基板について、2023年後半にかけて増産投資を行うとともに、2021年度比で生産能力を約2倍に拡大する計画です*6。当社では、信頼性の高い窒化ケイ素基板の提供を通じてお客様の課題解決に貢献してまいります。

図1 窒化ケイ素基板の用途例
図1 窒化ケイ素基板の用途例
図2 積層された原料シートと窒化ホウ素粉末層の焼結時の挙動
図2 積層された原料シートと窒化ホウ素粉末層の焼結時の挙動

以上

  1. *1実装:絶縁基板の上に導電性のある素材で回路を形成し、半導体等の電子部品を接続して装置にすること
  2. *2アルミナ:酸化アルミニウム
  3. *3製造工程:窒化ケイ素基板は原料をシート状に成型したものを剥離用の窒化ホウ素粉と交互に積層して焼結し、焼結後の基板を1枚ずつ剥離し、使用するサイズに分割する。
  4. *4中央部の密度dcと端部の密度deの比dc/deが0.98以上、中央部のボイド率vcと端部のボイド率veとの比ve/vcが0.50以上
  5. *5中央部のボイド率vcが1.80%以下、端部のボイド率veが1.00%以下
  6. *62023年2月13日プレスリリース「xEVパワー半導体用窒化ケイ素基板を増産」

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コミュニケーション部 担当 工藤 TEL 080-5971-1116