パワー半導体向けSiCウエハに、エピタキシャル成膜（以下エピ成膜）を行う部署で製造技術を担当しています。パワー半導体は電力をコントロールする半導体であり、身の回りの電化製品から鉄道、EVなどにも用いられ、カーボンニュートラルの実現になくてはならない電子部品です。なかでもSiCは、現在主流のシリコン(Si)を母材としたパワー半導体と比較し絶縁破壊電界強度が約10倍高いなど電気的特性が優れており、EV等の省エネ化や軽量化を担っていく新しい半導体として、大きな市場成長が見込まれています。

当社では、SiCウエハにエピ膜を付加した製品を量産しています。製品の特性上、製造以上に開発寄りの仕事も多く、他部署と連携しながら生産装置の安定稼働に取り組んでいます。並行して、より良い成膜条件を追求する実験と検証も行っています。成長を続ける市場のなかで質を追求し、競合差別化を図りながらより良いモノづくりにチャレンジしている最中です。

実習・配属直後は予期しないトラブルが数多く起こり、忙しい日々を過ごしました。右も左も分からないなかで駆け回り、結果的にはさまざまなトラブルを解決することができました。振り返ってみると、乗り越えることができたのは「プライド」があったからです。装置でトラブルが起こった際、原因が分からず戸惑いや焦りが先行しますが、だからこそ「絶対に自分が直す。自分ならできるはず」と強い気持ちで対処していました。そして別のトラブルが起これば、さらに強い気持ちで臨む。この繰り返しがあったからこそ、結果的に多くの事案を解決することができました。完遂させる強い決意とともに、自分の仕事に責任を持つ、プロフェッショナルとしてのプライドだったと思います。

もちろん気持ちだけで解決策を導くことはできません。色眼鏡をかけずに原理原則に従いデータを見て、現場に行き実際に装置を触り、現状を踏まえ論理的に考えるようにしています。机上ではなく現実に則した三現主義を習慣にできていたからこそ、現在の量産体制を構築することができたのだと思います。そして最近、トラブル発生時に「S.E.（自分）を呼んだら何とかなるだろう」と現場や上司から言われ、自分がやってきたことは間違っていなかったのだと確信を持つことができました。

楽して収益をあげられる
仕組みを追求したい

現在、生産性向上のためのIE活動にも携わっています。IE（Industrial Engineering）活動とは、論理的な分析によって生産現場の無駄やムラをなくし、業務改善を行う手法のことです。IE活動への参加を募る社内メールを受け取った時、ちょうど私自身さまざまなトラブルを乗り越え製品量産の安定化を図るなかで、もっと効率化を図れることはないかと模索していたタイミングでした。同僚のエンジニアと2人で日頃感じていたことを改善案としてまとめ、社内プレゼンを行いました。このプレゼンを皮切りに、いくつかの改善策に携わっていたところ、IE活動に加わって欲しいという正式な辞令をいただきました。

製造技術の業務に追われ、忙しい日々を送るなかで「大丈夫？」という声を周囲からもらうこともありましたが、大変な経験をしている今だからこそ、もっとできることを追求し、「将来、楽して収益をあげられる仕組みを実現する」という目標が生まれ、IE活動という新しい挑戦を選択することができました。入社1年目から携わり続けている量産化という仕事を、立ち上げた1人であるというプライドを持って、今後もより良い製品を追求していきたいです。