フェライト磁石とは?
一般的な特徴や用途、プロテリアルの製品について解説

2023年10月2日

フェライト磁石とは?一般的な特徴や用途、プロテリアルの製品について解説

フェライト磁石は酸化鉄を主な原料とした永久磁石です。化学的に安定しているため錆を気にする必要がなく、コストパフォーマンスに優れています。フェライト磁石の用途は幅広く、日用品から産業製品までさまざまです。

近年は、ネオジム磁石の代わりとしてフェライト磁石の活用が期待されています。一方で、フェライト磁石の磁気特性はネオジム磁石よりも劣るため、フェライト磁石の用途を拡大していくために、高性能化をめざした研究開発がおこなわれています。

この記事では、フェライト磁石の概要や特徴、主な用途や希土類磁石と置き換える際の課題や、フェライト磁石の高性能化に向けた取り組みを紹介します。


1. フェライト磁石とは?

化学的に安定でありコストパフォーマンスに優れたフェライト磁石は、さまざまな用途に採用されています。例えば、フェライト磁石は私たちの生活に身近なものとして、家庭雑貨や文具などの日用品に使用されています。

当初、自転車用ランプの発電機やオーディオスピーカーなどの家庭用製品向けに普及しましたが、その後、自動車のスターターやオルタネーター、ワイパーなどの電装部品に広く採用されています。自動車向けの用途以外にも、家電用途として洗濯機や空調機のモーターなどに使われています。

歴史

フェライト磁石の原点は、1930年代に磁鉄鉱と亜鉄酸コバルト(コバルトフェライト)を原料として開発された「OP磁石」です。OP磁石は「KS鋼」や「MK鋼」、「新KS鋼」と同様、日本で発明・実用化されました。磁気特性が優れていることから、実用で優秀な永久磁石です。その後、1950年から60年代にかけて、バリウム(Ba)フェライト磁石やストロンチウム(Sr)フェライト磁石が開発されました。

さらに1990年代後半以降、ランタン(La)-コバルト(Co)置換Srフェライト磁石(Sr-La-Coフェライト磁石)が開発され、それまでのSrフェライト磁石よりも磁気特性を飛躍的に向上させることに成功しています。
2000年代以降は、Srを主体としない新組成フェライト磁石(Ca-La-Coフェライト磁石(Caはカルシウム))が開発され、さらに組成、プロセス改良を進めることで、高性能化を実現しています。

2. フェライト磁石の特徴

ここで、フェライト磁石の特徴を紹介します。

コストパフォーマンスが高い

フェライト磁石の原料の主体は入手しやすい酸化鉄のため、化学的に安定しており、また、大量生産が容易な粉末冶金プロセスで製造できることからコストパフォーマンスに優れています。

また、磁気特性のバランスがよいことに加えて、磁気ヒステリシス曲線の角形性も優れていることから、磁気回路設計の自由度が高い点も、フェライト磁石のメリットの一つです。

化学的安定性に優れている

フェライト磁石は酸化物の磁石であり、化学的安定性に優れているため、幅広い用途で使用できます。

磁石の中には、酸化による錆発生の防止を目的として磁石への表面処理が必要なものがあります。フェライト磁石は材料そのものが酸化物であることから錆を気にする必要がないため、錆防止を目的とした表面処理が不要です。

低温で保磁力が低下する

磁石を用いる製品の中には、極端な高温や低温、また温度変化が大きい環境で使用される場合があります。そこで、磁石には製品を使用するすべての温度帯で、安定した磁気特性を発揮する必要があります。

フェライト磁石は、磁石としての安定性(強い磁石を維持しつづける能力)を示す指標である「保磁力(HcJ)」が低温側で低下する特徴を持っているため、低温で使用する場合には、注意が必要です。

フェライト磁石は酸化物の磁石であり、化学的安定性に優れているため、幅広い用途で使用できます。

3.資源リスク分散に向けたフェライト磁石の活用

     

フェライト磁石よりも高性能なネオジム磁石が発明、実用化されたことで、フェライト磁石の用途の一部はネオジム磁石をはじめとする希土類磁石に置き換えられました。しかし、2010年以降になって、ネオジム磁石の需要拡大などにともなう原料の調達リスクが懸念されるようになり、再びフェライト磁石を活用しようという動きが出てきています。

 

ここで、ネオジム磁石の供給課題と、それに伴う高性能なフェライト磁石への置き換えについて、詳しく紹介します。

     

ネオジム磁石の供給課題

ネオジム磁石は、量的にも地域的にも制約のある希土類を原料としているため、供給課題が発生する場合があります。そこで、家電やxEV(電動車)用モーター向けを中心に、フェライト磁石に置き換える研究が開始されました。

ネオジム磁石の原料価格は、2010年前後の暴騰以降いったん落ち着きました。しかし、脱炭素化に向けた自動車の電動化加速(磁石を使用するモーターの増加)などを背景に、今後はネオジム磁石の需要拡大が予想されています。

ネオジム磁石の需要拡大によるものなのか、2020年頃からネオジム磁石用の原材料が高騰しています。

高性能なフェライト磁石への置き換え

ネオジム磁石の一部でも高性能なフェライト磁石に置き換えられれば、ネオジム磁石の原料調達に関するリスクを軽減できます。

フェライト磁石の磁力はネオジム磁石よりも弱い(残留磁束密度(Br)が低い)ため、同じ製品性能を実現するためには、ネオジム磁石よりも大きな磁石が必要です。その結果、製品の体格は大きくなってしまいます。

採用するフェライト磁石を高性能なものにできれば、フェライト磁石への置き換えによる体格の増大などの課題を軽減できるでしょう。

高い性能のフェライト磁石を開発するアプローチの一つとしては、結晶中の元素配置を狙い通りにコントロールすることが考えられます。実際に、1990年代後半以降に開発された高性能フェライト磁石は、同様の考え方の具現化がポイントとなり実現されています。

4.まとめ

フェライト磁石は原料の入手性やコストパフォーマンスに優れているため、日用品から産業用製品までさまざまな用途に採用されています。

高性能なフェライト磁石が開発されることで、需要の高まりによって供給リスクがあるネオジム磁石などに置き換えて使用することが期待されています。置き換えの際に課題となる出力や体格の課題も、フェライト磁石の磁気特性の改善で、影響を抑制可能です。

5.プロテリアルのフェライト磁石:NMF®シリーズ※1

プロテリアルは、高性能なフェライト磁石であるNMF®シリーズを提供しています。

シリーズの特徴

NMF®-15シリーズは、プロテリアルが世界に先駆けて開発した材料で、2023年7月時点で、世界最高レベルの磁気特性を有します(当社調べ)。高い磁気特性により製品の高出力化や小型化を実現できます。

フェライト磁石は低温での保磁力低下が課題ですが、NMF®-15シリーズは保磁力の温度依存性が小さい点が特徴の一つです。

また、プロテリアルは、「極異方性」という特徴的な配向分布(磁束密度の分布)を有するリング磁石を量産しており、お客様の組み立て工数低減などに貢献しています。これまでNMF®シリーズやネオジム磁石の開発で培ってきた、プロテリアルの材料設計技術や量産技術が活かされています。

NMF®シリーズの活用イメージ

プロテリアルでは、高性能なフェライト磁石とネオジム磁石を製造・販売しているため、用途や目的に合わせて適材適所での活用が可能です。フェライト磁石の活用で、希土類など特定の元素に対する依存を緩和でき、持続可能な社会にも貢献できます。
また、磁気特性を向上させたNMF®-15シリーズの活用で、ネオジム磁石からフェライト磁石への置き換えで懸念される製品の体格アップや出力低下などの影響を、最低限に抑えられます。

ネオジム磁石を含む希土類磁石の置き換えや高性能なフェライト磁石の採用を検討している場合には、ぜひ一度お問い合わせください。

当社の製品に関するご相談やご質問は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

※1.NMF®シリーズはプロテリアルのフェライト磁石全体の呼称で、幅広い性能の材質を含む。

※NMFは株式会社プロテリアルの登録商標です。

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